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豊田都峰『遺句集 林の唄』(東京四季出版)より

    平成28年。 「京鹿子」主宰。第10句集? いくすぢも水を流して夏の苑 筆記具は濃い目好みや水澄める 海鳴りのたたみかけくる冬構 海に向く黒板塀も冬構 河豚食べて川すぢの灯にもどりけり 薄氷をすべるは昨夜のなごり風 忘れ角見しより山に晴れつづく 天牛のひげのそよりと森の午後 石仏のひだ朝涼のひとながれ 花蓼や片手をがみに辻地蔵 雪やんで星は神話を組みはじむ 白日を絡めとりたる枯欅 水替へて金魚を空にもどしけり 炎負ふ仏の視野は大みどり ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.12.02 Wed 23:49

浅井民子『句集 四重奏』(本阿弥書店)より

    2017年。 「帆」主宰。第2句集。 黒々と島立ち上がる初日の出 立春の岬が分かつ海の色 踏青やパレットに溶く風の色 踏切の向かうは海よ鰆東風 七変化三のあたりの縹色 海を見に行く白シャツの帆となつて 糠床の機嫌よろしき芒種かな 麻服の皺美しき水平線 夜の長しイサムノグチの紙ランプ 標高や触るるばかりに天の川 なびくもの伏すもの風の大花野 みやしろの美しき落葉は踏むまじく 年惜しむオペラグラスに指揮者の手 先生のあだ名五月の黒板に 白むくげ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.11.25 Wed 21:10

豊田貴子『句集 紫野』(文學の森)より

    平成25。 「鳰の子」同人。第1句集。 名月の昇るに間ある湯あみかな 新聞の投げ込まれしを聞き朝寝 水打ちし一瞬土のほめきたる 毛糸編む母との話つきもせず 病室の暗きに光り寒卵 菫踏むミニスカートの脚すらり 風薫る白一色の喫茶店 母の歩に合はせ炎暑の道遠し 日の温み掌に直送のトマト切る 用済みの案山子束ねる夕日の田 親燕子燕長屋王旧址 近づけぬ瀑布を共に見て他人 そのビルのみ激震に耐へ寒の月 滴りの光る一瞬待ちて撮る 患者の輪白衣も混じ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.11.23 Mon 22:03

第354回坐忘会 令和2年霜月句会

JUGEMテーマ:俳句   第354回 坐 忘 会    開催日:令和2年11月15日(日)  場 所:本部道場南寮  参加者:11名  投句者:5名  句 数:106句    急な寒さ到来で、コロナもまた勢いを増してきましたが、多くの参加者があり、賑やかで楽しい会でした。    会員で病気療養中であった岡本崇さんが逝去されました。心からご冥福をお祈りします。    今回の最高得点者は光舟さん。14点の獲得でした。    今回の兼題は「十三夜」...

座禅修行だより | 2020.11.22 Sun 08:10

『季語別 茨木和生句集』(ふらんす堂)より

    2003年。 幹太き松を抜け来て春の海 雪卸せざりし蔵の雪雫 その上に水の乗り来し薄氷 睦事はこのごろとんと桜餅 春障子鯉が跳ねしと開けにけり 自句自解させられてをる春炬燵 麦踏の手をどうするか見てゐたる 意を曲げぬらし耕牛の水を飲む 田の神を呼ぶかりそめに田を打てり 籾浸すさま一学級見学す 水音は耳に障らず春眠す 歩けば軋む木造校舎新任す 万愚節岩がするりと波脱いで いかに嘆く涅槃に貝の来てをれば 恋などはまつぴらと猫太りけり 田蛙の声...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.11.16 Mon 22:50

稲畑汀子『汀子句集』(ウエップ)より

    2003年復刊。 「ホトトギス」名誉主宰。第1句集。 今日何も彼もなにもかも春らしく 牧場はすなはち雨のクローバー この辺の景色となつてゆく芒 景変りつゝ菜の花のつづきけり 湖に出て見るだけの避暑二日 かくれ部屋あり春昼の顔なほす バターよく伸び煖房の食堂車 スリッパのまま芍薬の芽まで来し この辺の家のたつきの酢茎桶 庭芝の枯れ行く色の定まりて 母を見て又子の昼寝つゞきけり どこよりもここより見ゆる紅葉山 ふとよぎる春愁のかげ見逃さず 雨降...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.29 Thu 23:17

山崎千枝子『句集 素顔』(ウエップ)より

    2003年。 「燎」主宰。第1句集。 うかと出て春宵の街まだ寒き 車窓より飛び散る紙片夏来たる 夕端居語り部のごと語りをり ひとことに思ひめぐらし鉄線花 万緑や父の一徹衰へず 白地着て父飄々と入院す 食いまだ叶はぬ父へ団扇風 酒瓶を枕代りに祭果つ 泣き虫の又泣き出しぬ天瓜粉 熱き茶を膝に旅立つ冬の駅 病窓は梢の高さ小鳥来る 黙々と明日の米磨ぐ湯ざめかな 田を植うる朱き鳥居の間際まで 町内に在はすちちはは星月夜 組み替へて夜寒の膝となりにけり ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.25 Sun 23:45

山本一歩『句集 神楽面』(文學の森)より

    平成23。 「谺」主宰。第4句集。 蚊の声の辺りを二つ三つ叩く 扇風機止つてをりし羽根が透け さりげなく揺れて蓑虫日和かな 焼藷の屋台と歩調合うてをり 降る雪の中なる雪を掻きにけり ラムネ抜いて何か忘れてしまひけり 天の川仰ぎ見るときみな若し マネキンの首をそのまま鳥威 剥かれある林檎に年の改まる 孤立してゐる手袋の中の指 燗熱うせよ先生の命日ぞ 蝌蚪に脚出て鯨にはもうなれぬ 蟻を見てをれば大きな靴通る 浴衣着て手足の頼りなかりけり 眠...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.21 Wed 21:08

大杉洋子『句集 蜃気楼』(あわ書房)より

    2008年。 「青海波」同人。第1句集。 大漁旗祭太鼓の破れぬか 水平に年移り行く去年今年 うぐひすの音の度ごとに杖を置く これからは小市民なり卒業す 秒針の音の広がる小正月 屋久杉の木目細かき大西日 御宸筆たちまち汗の引きにけり よく笑ふ分校の子等鳳仙花 シスターの背筋真ぐ十二月 雨蛙豊葦原を席巻す 青嶺踏みきし山門の大わらぢ 黒潮へ海亀の子の百二百 彼岸花咲くころ帰る母の家 千年の森千年の苔清水 坑道に頭打ちつつ岩清水 海中の城(ぐす...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.19 Mon 21:44

田島和生『句集 天つ白山』(角川学芸出版)より

    2015年。 「雉」主宰。第3句集。 雪撥ぬる笹や先生癒え給へ 山羊繋ぎ一番草を取りゐたる 読始湯川博士の天才論 寄り添つて地に影ひとつ寒雀 バイオリン大ひまはりへ弾く子かな あふ向きに死にゆく蝉へ蝉時雨 新藁の匂ふ夜明を逝かれしか あたたかな息が近づく雪女 一ところ雪の窪みて雀の死 初蝶の白に徹してまぎれざる みどり子の目が開き泰山木の花 ある僧の水割呷る晩夏かな 冬深む古書舗の奥へ蟹歩き くるぶしを蟻強く咬む爆心地 白日傘平和公園出て開...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.15 Thu 23:21

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