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奥野元也『句集 鮎汲』(いてふ発行所)より

    昭和60。 「雪解」「懸巣」「いてふ」同人。 第2句集。 吹きわれて大萩叢のうつろあり 磨崖仏見守る峡田一人植う 滴りのふくらむ束の間を光り 朝靄のしりぞく田の面草を刈る 頭上つと止みてかなかなかみな遠音 鴨たちて池に山影よみがへる うらうらと移る天日初蹴鞠 花の雨傘のいづれも二人づつ 子らの荷のさきがけ着きて避暑の宿 春時雨耳成の消え香具の消え 仏見よ月見よと開け招提寺 摘みし手にしかと地の冷え蕗の薹 妻端居柱くらきに背をもたせ 月は望...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.04.16 Tue 21:40

金久美智子『句集 氷室』(ウエッブ)より

    2003年。 「氷室」主宰。第5句集。 理不尽に疎まれし日の蜆汁 睫おもく霧の丹波をあゆむかな 聖夜劇神父の靴の巨いなる 進学の荷を造り子をうしなひぬ 花翳に影重ねてもひとりかな 宥さんや梅の紅の実淡ければ 忘れむと洗ひし髪の重さかな ー寺町ー 古書店のあるじあるとき涼しげに 黄落の明るさ不安いづこより 波郷忌や叱られてゐし膝がしら しばらくは柚子湯に佇ちし女身かな 梳る髪を冬日の逃げやすし 崖に遊ぶ冬日見る間も父焼かる 掌もて拭く机に春の塵す...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.04.10 Wed 22:24

今村米夫『寒夕焼(現代俳句選書?35)』(東京美術)より

    1984年。 「夏草」「夏炉」同人。 蚊を打つて愚かに夜を過しをり 母の日の子犬の息のあたたかし 風の萩病後の力計りをり 無駄金を使つてしまひ懐手 キヤバレーの階拭く寒夕焼に這ひ 花冷の肩ホステスの長電話 夕闇の白菊あをきまでしろし キヤバレーの灯が消えて雪明り 啄木の貌して凍る釧路川 逆光の蓑虫垂るる光堂 サラリーマン一方向に落葉踏む 梅雨の吾が靴跡いつも油紋生む まぎれ来し蝶に一瞥機械工 残業の灯がゆらぎをりプールの面 時雨るるや仁王もバ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.04.07 Sun 12:09

第28回彩の国ベガ俳句大会のご案内

7月29日(日)、 埼玉県川口市で第28回彩の国ベガ俳句大会 (埼玉県芸術文化祭2017協賛事業)が開催されます。 会場は駅徒歩1分の好立地です!   当日の講演は、俳句結社「天為」同人で、 俳人協会新人賞や同評論賞等、受賞歴も多数、 現在NHK俳句の選者も務めておられる岸本尚毅氏です。 多くの方のご参加をお待ちしています。     日時   2018年7月29日(土)      11時受付開始、開会1時   会場   川口総合文化センターリリア 11階大会議室    ...

俳句スパイス | 2019.03.31 Sun 14:29

中井冨佐女『玉藻俳句叢書? 湖畔抄』(東京美術)より

    昭和59。「ホトトギス」同人。 琵琶湖畔の堅田に生れ住み続けている作者の湖に関する句ばかり。 鳰や鴨、魞、芦がこれでもかというほど頻出するが、これだけの数を詠めるのはすごいこと。 定期船遊覧船と波止の春 暮れ切らぬ湖に出てゐる春の月 夕焼に身をそらしつゝ舟を漕ぐ 内湖を渡りおほせし梅雨の蝶 みづうみの水に育ちし菊なりと 月の浜ただ歩きたく語りたく 句碑を見し歩を新涼の桟橋へ 朝戸開くたのしみ浦の浮寝鴨 波の間に光るは残り鴨らしき 鴨絶えず動...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.03.28 Thu 21:31

俳句スパイスインターネット句会

俳句スパイスインターネット句会 2月 結果   兼題「 椅子 」   数字は得点 *はそのうちの特選の数     1 信号の黄色は注意いたちぐさ 蘭丸 2 もういない隣の椅子や春の月 Rin 2 3 ふうはりと椅子のかたちに春ショール すみれ 5* 4 樹形図の差別と区別春の雪 マヨマヨネーズ 1 5 もう聴けぬカセットテープ春浅し 人見 2*   6 筆進む椅子は何処に沈丁花 はるくん 7 待つよりも手立てのなきや雛飾る すみれ 8 リハ...

俳句スパイス | 2019.03.27 Wed 11:17

角田捨翠『句集 喫泉』(いてふ発行所)より

    昭和63。 「いてふ」主宰。第3句集。 教員、校長を経て寺を継ぐ。 よって寺関係の句が多い。 影の濃きところをたまひ花筵 まなじりに生きの涙を土用仏 朝寒の髪をすなほに梳かるる子 抱かるるをいとふ子となりあたたかし いま散りし花の筏につながらず 十畳をひとりにたまひ紅葉宿 買うて来し貰うて来しと柿提げて もどされし駅になじみぬ絵双六 箸正し持つ子となりて冷奴 老いてなほ兄は長上簟 冬もみぢ楓と楓ならざると 午笛鳴る一村茶摘休めよと ナイターの...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.03.25 Mon 22:30

細見綾子『奈良百句』(用美社)より

    1984年。「風」同人。 実際にほとんどの句の場所に行っているので、わかるところはある。 尼寺をしのび歩くや白つつじ (中宮寺) み仏に美しきかな冬の塵 (唐招提寺) どんぐりの青空さやぎ落ちにけり 春立てり月光仏の明り窓 (二月堂) 幾度もつまづく木の根万燈籠 (春日大社) たまゆらの一燈つきし万燈会 (〃) けもの等のひそめし息や万燈会 (〃) 十二神将汗のまなこに打ち仰ぐ (新薬師寺) 古寺のしぐれや音をなさずして (元興寺) 藤はさかり或る遠...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.03.20 Wed 23:14

岩崎照子『句集 二つのドイツ』(牧羊社)

    昭和55。 「かつらぎ」同人。第1句集。 前回紹介した第2句集『一卓一花』に続き。 タイトルはまだ東西の壁のあったドイツにちなんで。 最後にドイツの句をまとめて収めています。個人的にはよくわかる句。 第2句集のほうがやはり質が高い気はしますが、処女句集も好きな句が多い。 とくに一軒家の句は投入堂が連想されたのでしょうか。やられた感あり。 吊革にひたひ押しつけ花疲 新涼の壁に珈琲分布地図 牧目ざすわれらを霧の包みけり スキー穿く祈りのごとく膝折りて ときめけ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.03.17 Sun 22:16

岩崎照子『句集 一卓一花』(本阿弥書店)より

  1987年。 「かつらぎ」無鑑査推薦作家。第2句集。 かなり共感をもって読ませていただきました。 ヨーロッパに住みたいという思いがあったようで、第1句集はなんと『2つのドイツ』というタイトル。感性が近いのでしょう。次はこの第1句集を読みたいと思います。 もう90歳を優に超えているのでご存命かどうか。 天主像ミモザの丘を統べたまふ 銅像はフロックコート鳥雲に 主峰には雲よせつけず山開き 灼けてゐる河原は仮の駐車場 雪嶺に目を離し得ず珈琲のむ ゴッホの黄ユトリロの白冬籠 いづ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.03.14 Thu 21:41

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