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JUGEMテーマ:戯言 小さな椅子を組み立てて腰を下ろす。地面に近い位置から空を見つめる。少しグレーがかった雲が連なって空を行進している。ブルーの色彩はその隙間に見え隠れしていたり、していなかったり。風は北。ひんやりとしているけれど、寒いというほどではない。秋は確実に深まっていると感じて、何故か焦りを感じたり。 持ってきた傘を開き、椅子の傍らに斜めに横たわらせる。風が傘を転がそうとするから、椅子より風上に置き、その転がりを椅子に受けとめさせる。間接的に、私も受けとめることにな...
pale asymmetry | 2022.10.10 Mon 21:06
JUGEMテーマ:戯言 姉が魔女になって旅から帰ってきた。六百年ほど旅をしていたのだという。長い旅からの帰還だ。けれど姉が突然失踪したのは僕が十四歳の時だから、ちょうど十年前のことだ。この矛盾をどう理解すれば良いのだろうか。こういうのを上手く説明出来る理論とかあっただろうか。相対性理論とかなら可能だろうか。物理学には詳しくないので、僕にはよく解らない。だから姉に訊いてみた。 「姉さんがいなくなったのは十年前だけど、旅の期間は六百年なの?」 姉は僕の言葉に何度も頷き、そして肩...
pale asymmetry | 2022.10.09 Sun 21:19
JUGEMテーマ:戯言 右腕の痛みは、私が嘘を食べて満足していることの表れだろう。左指の痛みは、私が吐いた嘘がイメージを研ぎ澄まして羽ばたいたことによるエフェクトだろう。どちらの痛みも嘘に繋がっていて、そうである以上この痛みから逃れることは出来ない。嘘を食べ、嘘を吐く。それ以外の暮らしを私は知らない。 失うことによって痛みが増すとしても、その喪失を否定することが出来ない。それは避けがたい現象であって、それを誤魔化したとしても何も得るものがないのだ。誤魔化せば誤魔化すほど喪失し...
pale asymmetry | 2022.10.06 Thu 21:33
JUGEMテーマ:戯言 彼女はレモンを探しているのだという。それは過剰に装飾されたレモンなのだという。もちろん僕にはその意味が解らない。彼女に詳細な説明を求めるべきなのかもしれないけれど、何となくそれは出来なかった。それを尋ねれば彼女が消えてしまいそうに思えたのだ。あるいは僕の方が消えてしまいそうに思えたのだ。どちらが消えても世界は決して消えない。そのことが理不尽にも思えたのだった。 「装飾されるということは、洗練されるということなの」 彼女はそう言って空を指差した。空は青...
pale asymmetry | 2022.10.05 Wed 20:40
JUGEMテーマ:戯言 矢のように疾走する黒い馬。稲妻を呼び寄せそうなその四肢の駆動。青年はその疾走と真っ直ぐに対峙する。長い刀を平正眼に構え、すなわち黒馬の勢いが上方から被さってくるのだと覚悟を決めて、しかし静かに落ち着いた呼吸を繰り返す。北からの風が強く、黒い馬が巻き上げる土が空気を染める。それが光を弾いて、ありふれた場所が異境に変わる。青年は長く息を吸い込む。彼の両脚の踵が僅かに浮上げる。両膝から腰にかけてが僅かに沈む。 「おう」 青年は叫んだ。成層圏の向こうまで届く...
pale asymmetry | 2022.10.03 Mon 20:59
JUGEMテーマ:戯言 血のことをそしられると、どうしようもなく怒り狂ってしまう。いや、ただ狂ってしまう。それは私が私の血を愛しているからではない。その逆で、私が私の血をどうしようもなく嫌悪しているからだ。強い雨が土を泥にしてしまうのと同じくらい嫌いなのだ。その上を歩けば、纏わり付くそれが私を重くして沈めてしまう。 沈んで溺死してしまえるのなら良いけれど、ただ沈むだけだから嫌らしい。 つまり私は自身の血をそしることを我慢しているのだろう。常に我慢しているのだろう。だから誰...
pale asymmetry | 2022.10.02 Sun 21:14
JUGEMテーマ:戯言 窓のない部屋で、波を探す。とても微弱な波。その波紋を掬う。けれどそれは掬った途端に消えてしまう。崩れて消えてしまう。最初から存在しなかったかのように。私とはかけ離れた事象であったかのように。こことは別の次元で、別の私と戯れるために、この私を見限ってしまったかのように。 窓のない部屋で、渦の行方を想像する。それと相関する私の心持ちを、その色を空想する。それがどんなに現実的な質感を有していても、それは空想なのだから私はその色彩を舐めることが出来ない。少し悲...
pale asymmetry | 2022.09.27 Tue 22:01
JUGEMテーマ:戯言 私はあなたを噛む。甘く噛む。あなたも私を噛む。同じように甘く噛む。私たちは甘く噛み合って、私たちという別の生き物になる。それは別の世界の宇宙の生き物で、私とあなたのことなんか知らない。でも私とあなたは私たちを来世の存在として、懐かしく思うのだ。 そんな話をあなたに囁いたら、あなたは少し考え込んでから「それは別の宇宙の世界である方が良い」と言った。「その方が、僕はその僕たちという生き物を愛でることが出来る」と付け加えた。 「別の宇宙の世界なんてつまらな...
pale asymmetry | 2022.09.23 Fri 21:46
JUGEMテーマ:戯言 立ち止まっている。空を見つめている。雲は流れていない。時間は凍り付いてはいない。雨は降ってはいない。風は吹いてはいない。僕は何もしてはいない。誰かが先を走っているかもしれない。でもその姿は見えない。見えない誰かを追いかけたりはしない。見えない誰かに追いつかれることを恐れたりもしない。どちらのためにも加速したりはしない。 立ち止まっていると、このまま永遠に速度を失ってしまうのではないか、などと考えてしまう。あるいは、歩き出す歩幅が半分くらいまで縮んでしま...
pale asymmetry | 2022.09.20 Tue 21:45
JUGEMテーマ:戯言 待つことには慣れている。ただ待つことにフォーカスする。だから扉を前にして、それを開くことはしない。扉は常に私の目の前にあり、いつだって開かれる瞬間のために待機しているのだから、それが例えば凝固して開かなくなるということはない。だから今夜は閉じたままでも構わないのだ。 それでも、少し寂しくなる。それは開いた扉の向こう側、その風景が変化してしまうからだ。たった今開いた扉の向こう側、その風景はたった今しか存在しない。明日開けば、明日の風景にしか私は出会えない...
pale asymmetry | 2022.09.16 Fri 20:24
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