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JUGEMテーマ:戯言 その少年は、戸惑うような眼差しで私を見つめていた。分厚いアクリル板を介して、私と少年は向かい合う。私が手を振ると、少年は首を振った。そして抱えていたトランクを下ろし、蓋を開け中からパラボラアンテナを取り出す。それを立てると、少年は私を見つめ、そのアンテナの中心を指差さした。 それが何を意味しているのか、私には解らない。そこから少年の想いが発信されるということだろうか。しかしいくら待ってもそこからは何も発信されなかった。私が、そのアンテナに向けてメッセー...
pale asymmetry | 2022.12.12 Mon 20:53
JUGEMテーマ:戯言 私が私であることを疑うほどの痛み。その痛みが私の夜を曖昧にする。時間は際限なく希釈され、それなのに質量だけは増えていき、透明で重い時間が私を弄ぶ。叫んでいたかもしれない。叫びを飲み込んでいたかもしれない。刹那が跳ね回ったかもしれない。永遠を捏ねくり回したかもしれない。 「着いたよ」 誰かの声を感じる。 「私は着いたよ」 それは私の声だったかもしれない。 「どこにいるの?」 私ではない私の声だったかもしれない。身体のほとんどを眠りに浸したま...
pale asymmetry | 2022.12.11 Sun 21:22
JUGEMテーマ:戯言 少女は踊る。デジタルなビーチで華麗に。ロボットも踊る。少女に寄り添うように従順に。少女が旋回して、ロボットがそれに追随する。連舞する二者は世界の紋様を描いている。それは地図で、遍在する魂の住所を記述している。少女は笑う。息を弾ませ汗を飛ばしながら。ロボットも笑う。ぎこちなく、あらかじめプログラムされた枠の中で。 「楽しい?」 少女がロボットに問う。 「楽しいです」 抑揚のない口調でロボットが答える。声は風と親和性が高く、すぐに崩れてしまう。 ...
pale asymmetry | 2022.12.10 Sat 21:09
JUGEMテーマ:戯言 例えば私は言語研究者で、ある日大統領からこう言われる。 「いて座のブラックホールの近くから、異星の知性体がやって来たんだよ。で、何しに来たのか訊いてくれるかな」 言語研究者の私には大いなるチャレンジだから喜んで引き受けたりして、その異星の知性体とやらに会いに行く。すると待ち受けていたのはコンビニですれ違いそうなスーツにネクタイ姿の見るからにサラリーマン風の人物。そして普通に私と同じ言語をしゃべっていたりする。 まあ、言語研究家の私はがっかりするわ...
pale asymmetry | 2022.12.09 Fri 21:38
JUGEMテーマ:戯言 私は風に乗って舞い飛ぶことを望んでいるわけではない。ただ風が吹いているだけなのだ。吹いているから吹かれている。濡れた髪もやがては乾くだろう。どんなに空がどんよりと曇っていても、どんなに月光が薄くか弱くても、風が吹いていて私は吹かれている、それが揺るぎない現実で、だから私は高揚することが出来る。 「つまり地面を転がりたいというわけですね」 その人が微笑んで言う。そんな言葉は一言も発していない。私はただ立ち尽くし、世界を眺めていたいだけなのだ。そう伝える...
pale asymmetry | 2022.12.06 Tue 21:36
JUGEMテーマ:戯言 私の頭の中に住む魔術師が言う。 「惑わされてはいけない。万能の鍵など、この世界には存在しない」 私はそれに頷き、すぐに首を傾げる。 「じゃあ、この世界ではない世界にならあるの?」 魔術師は苦く笑う。 「それは単なる言葉遊びだろう。君はこの世界以外のどんな世界も知らないだろう?」 「でも、あなたは知っているのでは?」 「わたしが知っていたとしても、それが君に伝わることはないだろう。そもそもわたしが知っているのかどうかも、君には伝わらないだろ...
pale asymmetry | 2022.12.02 Fri 20:57
JUGEMテーマ:戯言 世界とは常に流れていて、その流れは決して止まることがないから、いつだって去って行く。あらゆる事象が去って行く。流れはときに速く激しく怒りに満ちているから、あらゆる事象の形が歪められる。あるいは千切られる。あるいは砕かれる。極稀に、全く違う事象と相似になり、私を混乱させる。 世界の中に私という現象は存在するので、私もまた形を変換される。自分のお気に入りの形になろうとしても、あるいは今まさにその形になっていたとしても、それは次の瞬間ぐにゃぐにゃに捏ねくり回...
pale asymmetry | 2022.11.29 Tue 20:51
JUGEMテーマ:戯言 炎を追いかけてはいけないと、何度も何度も教えられてきた。幼少の頃から、周りの大人たちは皆私にそう言い聞かせてきた。炎は神様だけが追いかけられるものだから、人のような未熟な者が追いかけてはいけないのだよと皆が私に言った。私は神妙に頷きながら、本心では全く納得していなかった。炎は美しく、常に手の届きそうなところを進んでいて、しかもその速度はとてもゆっくりだ。少し小走りすれば簡単に触れられそうだったから、これが神様の領域に属するものだとは思えなかったのだ。 ...
pale asymmetry | 2022.11.27 Sun 21:55
JUGEMテーマ:戯言 早朝の湿った部屋で「疲れているのよ」と私が言うと、「それは偽りなんだよ」とあなたは笑う。私のことを一番知っているのは私で、その私が疲れていると言っているのだから、疲れているに違いないのに。「私自身が言っているのだから、そうなのよ」と私が言っても、「僕は君以上に君のことを知っているんだよ」とあなたは笑う。 なんだか理不尽な気分になる。私があなたに制御されているようではないか。でも私を支配しているのは私だし、私をコントロールしているのも私だ。そしてどちらも...
pale asymmetry | 2022.11.26 Sat 21:08
JUGEMテーマ:戯言 私のこの痛みは、もちろん私のものだ。けれど同時に誰かの痛みでもある。誰かの痛みが偏光したそれなのだと思える。その誰かはここから遠く離れた場所にいて、それは10万光年ほど離れた場所で、そこでその誰かが血を流しているのだ。あるいは、流れ出る血を舐めているのだ。 その血は鉄の味ではないかもしれない。 その場所までどれくらい離れていようとも、どのくらいの時間的隔たりがあったとしても、その誰かの痛みと私の痛みは同時性を有していて、これを切り離すことなど出来ない...
pale asymmetry | 2022.11.24 Thu 21:32
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