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JUGEMテーマ:戯言 雨が降ったことに気づかなかった。音もなく、陰りもなく、匂いもなく、いつの間にか雨が降っていたらしい。どうして何も告げずに、雨は去ってしまったのだろう。東から吹く風には雨の余韻は織り込まれてはいない。私は玄関の鍵を閉め、歩き出す。日の当たる部分の道は、もうすっかり乾いている。街路樹の下の湿った落ち葉がなければ、雨が通り過ぎたことに気づかなかったかもしれない。少し寂しい。雨が私を誘わなかったことが。 猫のような犬のような影が、少し先を歩いている。その漆黒は...
pale asymmetry | 2022.09.12 Mon 21:07
JUGEMテーマ:戯言 窓を開けると、雲のスクリーンが淡く輝いている。夜は浮かびながら沈んでいるようだった。 「この世界にないものを欲しがることは、月に向かって手を伸ばすことと似ている」 あなたの言葉をふと思い出す。いつも落ち着いたトーンを纏ったあなたの声を思い出す。もう長く会っていないあなたの横顔を思い出す。どれも、鮮明に思い出す。 「決して手に入れることは出来ないし、決して触れることは出来ない。でも欲しがることを、手を伸ばすことをやめることなど出来ない」 あなたの...
pale asymmetry | 2022.09.10 Sat 21:19
JUGEMテーマ:戯言 雨が降れば潤うはずだと思える。それは確かなことだと思える。そうはっきりと思えるということは、結局のところ私は花ではなく花器なのだと思う。それもかなり奇妙な花器だろう。例えば花を溺れさせるような。あるいは、花を弾き飛ばすような。弾き飛ばした上で、自らも溺れるような。 もちろんそれは、自らが内に蓄えていた水によってだ。それは淀んでいたかもしれないし、多くの不純物で逆に豊穣だったかもしれない。それにその不純物同士が思いもよらぬ化学反応で、新しい宇宙を膨張させ...
pale asymmetry | 2022.09.07 Wed 21:16
JUGEMテーマ:戯言 この風はどこから来たのか。どこで生まれたのか。どこへ向かっているのか。そういうくだらないことを考えながら時間を食い潰す。意味もなく空回りしている自分を感じているけれど、その感覚があまりにも希薄で、世界に触れているかどうかが怪しくなったりする。 「まあ、そういうときもあるよ」 あなたは笑う。どこか微妙な感じで。あなたは知っているのかもしれないと思ってしまう。この風が何者なのかを。どんな使命を有しているのかを。如何なる宿命を背負っているのかも。それを問う...
pale asymmetry | 2022.09.04 Sun 21:26
JUGEMテーマ:戯言 羅針は真南を指している。間違っているのは私だろうか。渦との距離を正確に計ることは出来ない。でも私の心は恐れる必要などないと告げている。長い列を成す人たちは、何に踊らされているのだろうか。あるいは何かなどは何もなくて、ただ踊りたくて踊っているだけかもしれない。そこに意味などなくて、意味を否定するだけのアルゴリズムがあるだけなのかもしれない それならば、みんなアルゴリズムに踊らされているのか。それに気づくことなく、自身の欲望に従っているだけだと誤解させられ...
pale asymmetry | 2022.08.31 Wed 21:34
JUGEMテーマ:戯言 水玉の流れに沿って、水玉を纏う。 その紋様は私の心を優しく撫でる。濁った眠気が霧消して、心地良い覚醒に思わず笑ってしまう。温い水は全身の皮膚に、透明なコードを入力してくる。それはこの星がまだドロドロと怒り狂っていた頃に組み立てられたコードだ。もちろんそのままではない。それはあらゆる可能性を選択し続けることで、洗練されたコードだ。その記録はもう失われてしまっているけれど、それでもコードはしっかりと今も機能していて、かつての怒りも忘れてはいない。 水玉...
pale asymmetry | 2022.08.30 Tue 21:07
JUGEMテーマ:戯言 東の空にオリオン。そして私は気持ちを持て余す。とても些末な何かが、私の後頭葉で混沌としたイメージをくゆらす。それは明確な何ものにもならないから、私はこの自分自身の想いを読み取ることが出来ない。全くヒントがないから、読み解くことなど到底出来ない。 ただオリオンを見上げる。その仰角は浅く、その冬はまだ遠い。その銀河は冷たいだろうか。想像の宇宙船を飛ばしてみようか。幼い頃にテレヴィジョンの中で博士が誘っていたように。私はそのとき何を想像しただろう。ただ空想に...
pale asymmetry | 2022.08.22 Mon 20:31
JUGEMテーマ:戯言 螺子を落として、道に迷う。小さな螺子だから、地面の小石に紛れて見つからない。膝を折り、目を見張り、嘆きながら探してみるけれどもう二度と触れられないだろうという想いしか感じられない。そうこうしているうちに、その螺子が何のためのものだったのかも解らなくなり、なぜ落としてしまったのかも解らなくなり、そもそも何をしているはずだったのだ私は、という考えに囚われて、そして完全に道を見失う。 立ち上がり、背筋を伸ばし、深呼吸。それで何かが好転するわけではないけれど、...
pale asymmetry | 2022.08.18 Thu 21:38
JUGEMテーマ:戯言 波打ち際で、炎が転がる。 夜と言うにはまだ心許ない。ゆるやかに寄せては返す波が、私の甲を濡らす。でも波はそのまま這い上がろうとはしない。私の方はそれを待ち望んでいるのに。私の心臓まで這い上がって、私の鼓動を握りつぶしてくれて良いのに。そうやって、私を次の世界へと吹き飛ばしてくれても良いのに。そんなことを思っても、濡れるのは甲ばかり。 波打ち際で、炎が転がる。青白い炎が転がる。 東の空に星が見えた。私を誘っているのだろうか。ここではないどこかに。...
pale asymmetry | 2022.08.16 Tue 21:49
JUGEMテーマ:戯言 零れ落ちたスイカの欠片の紅が、世界の全てに思えてしまう。いや、そうなのかもしれない。それ以外に世界なんてないのかも。その赤の内部に私はいないから、私は世界にはいないんだ。頬に感じている生温かい風も世界には所属していないし、寝ぼけているように瞬く星だって、世界の外側に蠢いているのだろう。 自分が旅をしているのか、それとももう旅を終えているのかよく解らなくなる。始まったものはどんなものだっていつかは終わるはずだから、私の旅だっていずれは終わる。でも終わって...
pale asymmetry | 2022.08.15 Mon 21:19
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