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すると、地面から泥が次々ともり上がり、その泥は人の形を成していった。「さぁ、私のかわいいパペットちゃんたち……やちゃって!」 少女が怪しく微笑むと、鈍い動きで泥人形たちは動き出す。「へっへぇ〜ん。こんなとろい奴らに負けないぜ!」 アルは腰の剣の抜き、人間に斬りかかった!「っ! くそっ、何だこの硬さ!」 アルの剣は、確かに泥人形に命中したが、カキーンっという、金属のぶつかる音とともに弾かれた。「なら、これならどうだ。水よ、我に力を……奴らを飲み込め!」 クウォードが、右手の平を泥人形に向け、...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 10:01
第三話 パペット クウォード達は森を抜け、海の見える所まで来ていた。「近くに村がありますが、そこには寄らなくて大丈夫ですよね?」 一番前を歩いていたガゼルが、皆に振り返りこう言った。 皆は、それぞれ首を振り、村に寄らないことになった。 ガゼルもそして他の者たちも、出来るだけ人里には寄らない方がいいと分かっていた。 エルナは、フードを取ってしまえば獣族だとすぐにバレてしまう。クウォードは外見はエルフだが、魔力の流れや、体外に放たれる目には見え...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 10:00
「えぇ、私はこれでも、長年王国の騎士団長を勤めた男ですよ? 自分で言うのもおかしいですが、王の信頼は厚いです」「さっすが、ガゼルさま〜!」 アルが叫ぶが、「黙ってろ」とクウォードに止められた。「それに、王もきっとリーナ様の子供であり、自分の孫である貴方と会いたいでしょうから。だから、そんなに不安がらずに私にお任せくださいませんか、エルナさん?」 ガゼルは、立ち上がりエルナに手を差し伸べる。 エルナは、ガゼルの手をとった。彼女は、ガゼルの話した一言一言が、とても信用でき、いつの間にか不安な...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:58
ティルは、嬉しそうに笑うと元気よく返事をした。「おやっ!」 ガゼルが急に目を見開き、エルナを見入った。「……貴方様は、リーナ様!」 ガゼルは、「何故貴方様がここに!?」と言葉を続け、驚きを隠しくれない様子だった。「えっ何故、母の名前を知っているのですか?」 エルナの方も、いきなり自分の母親の名前を言い当てられて、戸惑っていた。「母の名前ですと! ……とりあえず皆、中へお入りなさい」 ガゼルは、皆を家の中へ入れ、家の鍵を閉めた。 四人と一匹は、机につき、紅茶を飲みながら...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:56
第二話 大きな旅立ち 木々が生い茂る森の中を、二人と一匹は無言で進んでいた。「クウォードさん、聞いてもいいですか?」 無言に耐え切れなくなったエルナは、ふと疑問に思ったことを聞くことにした。「なんだ?」 エルナの前を歩きながら、少しだけ振り返り、クウォードは聞いた。「お師匠さんは、どんな方なんですか?」 聞いてはみたが、少し考え込み黙ってしまったクウォードに、不安がつのるエルナ。 だが、クウォードはエルナの不安など吹き飛ばすように、話し始めた。「……師...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:54
「まさか……獣人か」 クウォードのその呟くような一言に、女はビクッと肩を震わせた。「あっ大丈夫ですにゃ。ボク達は貴方に何もしないですにゃ」 ティルは、怯えるように震える女を見て、安心させるかのように優しく言った。「俺たちは、獣人狩りはしていない。お前に危害を加えるつもりはない」 クウォードは、そっと女のフードを元通りに直してやり、「かぶっていろ」と続けた。 ――獣人狩り。 それは、獣族と他の種族との間に生まれた「獣人」と呼ばれる者たちを、人身売買のために、賞金稼ぎなどが行っている人狩り...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:52
クウォードは両親がおらず、小さい時は両親の知り合いの家に住んでいた。しかし彼は、迷惑をかけられないと、大人になるとその家を離れ、今住んでいる家へと移り住んだ。「クウォード様。狩りに行きたいにゃ」 ティルが、扉の影からひょっこりと顔を覗かせ、かわいい大きな緑の瞳でクウォードを見た。 クウォードは軽く笑うと、「あぁ、行こうと」微笑んだ。 ティルはその言葉を聞くと、嬉しそうに笑い、家の中へと入って行った。「俺も準備をするか」 クウォードは、顔を布でふき、家の中へと入っていった。 &n...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:51
第1話 悪夢と出会い 小さな小さな、木々に囲まれた村。 その村の中に、必死に逃げ惑う少年の姿があった。『お前は、我々エルフ族の恥さらしだ!!』 少年は、そう叫びながら追ってくる、鬼のような表情の大人達から逃げる。「はっはっ……」 額から流れる汗、荒くなった息が、彼の必死さを物語る。 だが、その必死さをあざ笑うかのように、鬼のような表情の大人達は、少年の周りを取り囲み、彼は逃げ場を失った。「っ!」『お前は、エルフでも魔族でもない……化け物だ!!』 一人の大...
イルシオン | 2013.05.23 Thu 09:45
「違うんだ。一生懸命怒って、幸せになって良いって言ってくれて嬉しかったんだよ。……ありがとうルナ」 ウィルは、満面の笑みで微笑む。そんな彼を、ルナはぽけーっと見入っていた。 ウィルは、顔は悪くも良すぎることもないが、その笑顔は丁度いい具合に月の光に照らされ、ルナにはかっこよく見えていた。「ルナ?」 ウィルの声に、はっと我に返ったルナは赤くなった自分の顔を見られまいと、俯いた。「どうした、ルナ?」「なっなんでもない! じゃあ、おやすみ!」 ルナは、ウィルに顔を覗き込まれそうになり、慌てて彼か...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 23:30
ルナは、自分を助けてくれた精霊は彼等ですと言う様に、レンとラックスの方に掌を向けた。「私が言える立場じゃないことは十分分かっています――でもっ! でも、この子達みたいな優しい、私達人と共存できる精霊もいることだけでも、分かってほしいのです!!」 ルナは、強く手を手すりの所についた。そんな彼女の瞳は、強い光に満ちていた。「2人とももういい」 親方は、2人の背中を軽く叩くと、自分が2人の前に出た。「皆、オレ達からしたら、不思議な力を使う精霊は確かに怖い存在だ。だが、ワシ達は自然の中で生き、精霊は...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 23:29
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