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『サァ、ネムリナサイ』 だが、あの不気味な女性の声が聞こえてきた瞬間、意識が闇の中に引っ張り込まれるかのように、ルナは意識を手放した。『タチアガリ、ワタシヲトキハナチナサイ』 ルナが倒れ、しばらくすると、またあの女性の声が、部屋の中に響く。「……はい」 すると、意識のないはずのルナが、返事をし、ゆっくりと立ち上がった。 そんな彼女は、いつものような明るい光を持った瞳ではなく、魂の抜けたような、空ろな瞳をしていた。……まさにそれは、何かに取り憑かれ、体を支配されているようだった。 ルナは黙ったまま...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:35
二 パン屋クラークの二階。 まだ、太陽は高い位置にあったが、ルナの部屋にはカーテンがしてあるせいか、少ししか日の光が入らず、薄暗かった。 そんな薄暗い部屋の中で、ルナは三角座りをし、膝に顔を埋めて、一人泣いていた。「……どうしてこうなるのよ……」 ルナは、誰かに聞くかのように呟く。だが、彼女以外、誰もいない部屋の中は静まり返り、誰も答えてくれる者はいなかった……。 ルナは、ふと、自分の近くにおいてあった、母親の形見の剣を見た。剣は、カーテンの隙間から入ってきた光を浴び、冷たく銀色に輝い...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:32
「アンタ……」 ウィルは、フェスが謝ってきたことと、自分の刑を軽くするよう動いてくれるという話に、呆気に取られていた。 彼は、まさかフェスがそこまでしてくれるとは、夢にも思っていなかったからだ。「それに、僕がライバルと認めた君を、こんな所で失うのは恥です! 君を倒すのは僕と決まっているのですから」「ははっ。そうだな」 威張っていうフェスに、ウィルは思わず笑ってしまった。 フェスは、そんなウィルに怒るわけでもなく、ただ安心したような表情をしていた。「その元気を保ってください。……それでは、僕は急ぎ...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:28
第五話 炎の精霊アラルネ 一 どこからか、水滴の落ちる音が聞こえてきた。 ウィルは、体に感じた寒さに、意識を取り戻した。「ここは……」 冷たい地面に、薄暗い室内。周りにあるのはベットや、机とイスぐらいで、明かりを灯す物もなく、ただ壁の上の方に開いた穴から、かすかに光が入ってきていた。 ウィルは、ぼーっとする頭で考えながら、冷たい地面から立ち上がろうとした。「……っ!」 腹に、鈍い痛みが走り、ウィルは顔を少し歪めた。「そうか、あの時……」 ウィルは、森でルナと助けた後、自衛団と鉢合わ...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:26
「そんな指輪、精霊使いの手の中になければ価値のないものだ。くれてやる」 ルナは、投げられた指輪を急いで拾い、大切そうに両手で包んだ。「だが、妙なマネするなよ? そんなことをすれば、自分や父親、あの精霊使いがどうなるかな?」「……」 ルナは、ただ黙って、指輪を強く握り締めていた。「さぁ、こいつを運ぶぞ。誰か、手伝ってくれ」「はい!」 自衛団員達は、両側に棒のついた長方形の布の真ん中にウィルを乗せ、四人が前後で棒を持ち上げ、ウィルを布で支え、運んでいく。「何をじっとしている。君も一緒に帰るんだ」 ...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:29
「精霊使いなんて関係ない! ウィルは、私を助けてくれて、ゴブリンだって退治してくれた!」 ルナは、ウィルの前に出て、彼を庇うように、両腕を横に広げた。「彼を捕まえさせない!」(ルナ……)ウィルは、驚いたように目を見開いた。「そうか、そうか」 すると、自衛団の後ろの方から、中年ぐらいの濃いグレーのひげを生やした男が、笑顔を振り撒きながら、前へ出てきた。「ルナさんがそこまで言うなら、彼はいい人なのだろう」「バズさん……」 ルナは、笑顔で近寄ってきたバズに、何を思ったのか、心から嫌な顔をした。「ゴブリ...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:28
「皆さん違うの! この子達は魔物じゃ……」「何が違うっていうんだ? 大人しくしてるようだが、紛れもそいつらは魔物だろう!」「そっそれは……」 ルナは、言葉を詰まらせ、ウィルの方を見た。「危険なものを排除するのが自衛団の仕事だ!」 自衛団の弓を持った一人の男が、弓を引き、レンに向けて矢を射った!「うわっ!」 レンは、慌てながらも、どうにか矢を避けた。「あの野郎……」 ラックスは、体勢を低くし、唸る。自衛団側に何か動きがあれば、すぐにでも飛び掛りそうなほどの、雰囲気を出していた。「ラックス止めろ」 ウ...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:26
三 ウィル達は、ゴブリンを退治した後、ルナの剣を探して、森の中を探し周っていた。 ルナとウィルは辺りを見回し、ラックスは臭いで探し、レンにいたっては、空から探していた。「こっちから、キツイ臭いする」 ラックスは、草むらを臭い、嫌そうな顔をしながら言った。「ありがとう」 ルナは、ラックスにお礼をいうと、彼の目線の先にある、草むらをかき分けた。「……あった!」 ルナは、嬉しそうな声を上げてしゃがみ込むと、草むらに落ちていた、一振りの剣を大事そうに手に取った。「それが例の剣か?」「うん!...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:25
ラックスは、待ってましたとばかりにゴブリンから離れ、身軽に木の上へと飛び上がる。「我の魔の力を精霊ラックスに……」 ウィルの言葉とともに、彼の掌の魔石が、青く輝き始める。「全てを凍らせる吹雪を呼べ……」 ウィルがそこまで唱えると、掌の魔石が弾け、今度はラックスの周りが青白く輝きだす!「――アウィザース!」 ウィルが叫ぶ。 すると、ラックスは大きな口を開け、その口から白い息吹をゴブリン達目掛けて吐いた! その息吹が降りかかったゴブリン達は、一瞬にして凍りつき、氷の石造のようになっていった。後ろに控...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:22
「いっいやぁぁー!」 ルナは、両手で頭を押さえながら、その場に座り込み、涙の滲む目をギュッと閉じた。「ラックス!」「おうっ!」「ぐぎゃああ!」 幹の中に響く聞き覚えのある声と、ゴブリンのうめき声。「ルナッ! 大丈夫か!」 隅で小さく震えているルナの両肩に、誰かの手が触れた。ルナはそっと瞳を開け、上を見上げた……。「ウィ……ル?」 ルナは震える声で、名前を呼んだ。 彼女の目に映ったのは、心配そうな表情をするウィルの姿だった。(助けに来てくれた……) 彼女は、安心感から、瞳に溜まっていた涙が溢れ出し、...
イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:20
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