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マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-6-

 リードだろうとアデリナだろうと、外見ほぼ同じで、見分けはつかないため、ウィルがルナをハーフだと見抜けなかったのも、しょうがないことだった。 しかし、ウィルはそんなことよりも、おかしなことに気付き、口を開いた。「でもルナがハーフなら、アデリナ嫌いのワイズの人達なら差別してるはずじゃ……」 精霊使いであるウィルを捕まえて、牢屋に入れるほど、アデリナ族を警戒し、嫌っているワイズの人々なら、ルナを差別するのが普通だ。 そう思って疑わなかったウィルは、首を傾げた。「それは十年前の戦争の時に起きた、事件...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:40

マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-5-

      三 ルナが出て行って、どのぐらいたっただろうか? ウィルは、太陽の光も差し込まない、冷たい独房に入れられいるせいか、まったく時間の感覚が分からなかった。 ウィルが、小さくため息を吐こうとした時、また牢の扉が開いた。「ウィルさん」 扉から、顔を出したのは、アイリだった。「アイリ? どうして君が……」 ウィルが、思わぬ客に驚いていると、アイリは、ずれた眼鏡を直しつつ、近くにあったイスに腰掛け、小さく笑った。「僕が来たのに驚いた感じですね」「あぁ。一応、アイリを騙してたことなるし。君との...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:37

マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-4-

『サァ、ネムリナサイ』 だが、あの不気味な女性の声が聞こえてきた瞬間、意識が闇の中に引っ張り込まれるかのように、ルナは意識を手放した。『タチアガリ、ワタシヲトキハナチナサイ』 ルナが倒れ、しばらくすると、またあの女性の声が、部屋の中に響く。「……はい」 すると、意識のないはずのルナが、返事をし、ゆっくりと立ち上がった。 そんな彼女は、いつものような明るい光を持った瞳ではなく、魂の抜けたような、空ろな瞳をしていた。……まさにそれは、何かに取り憑かれ、体を支配されているようだった。 ルナは黙ったまま...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:35

マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-3-

      二 パン屋クラークの二階。 まだ、太陽は高い位置にあったが、ルナの部屋にはカーテンがしてあるせいか、少ししか日の光が入らず、薄暗かった。 そんな薄暗い部屋の中で、ルナは三角座りをし、膝に顔を埋めて、一人泣いていた。「……どうしてこうなるのよ……」 ルナは、誰かに聞くかのように呟く。だが、彼女以外、誰もいない部屋の中は静まり返り、誰も答えてくれる者はいなかった……。 ルナは、ふと、自分の近くにおいてあった、母親の形見の剣を見た。剣は、カーテンの隙間から入ってきた光を浴び、冷たく銀色に輝い...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:32

マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-2-

「アンタ……」 ウィルは、フェスが謝ってきたことと、自分の刑を軽くするよう動いてくれるという話に、呆気に取られていた。 彼は、まさかフェスがそこまでしてくれるとは、夢にも思っていなかったからだ。「それに、僕がライバルと認めた君を、こんな所で失うのは恥です! 君を倒すのは僕と決まっているのですから」「ははっ。そうだな」 威張っていうフェスに、ウィルは思わず笑ってしまった。 フェスは、そんなウィルに怒るわけでもなく、ただ安心したような表情をしていた。「その元気を保ってください。……それでは、僕は急ぎ...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:28

マジカルパン 第五話 炎の精霊アラルネ-1-

   第五話 炎の精霊アラルネ      一 どこからか、水滴の落ちる音が聞こえてきた。 ウィルは、体に感じた寒さに、意識を取り戻した。「ここは……」 冷たい地面に、薄暗い室内。周りにあるのはベットや、机とイスぐらいで、明かりを灯す物もなく、ただ壁の上の方に開いた穴から、かすかに光が入ってきていた。 ウィルは、ぼーっとする頭で考えながら、冷たい地面から立ち上がろうとした。「……っ!」 腹に、鈍い痛みが走り、ウィルは顔を少し歪めた。「そうか、あの時……」 ウィルは、森でルナと助けた後、自衛団と鉢合わ...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 22:26

マジカルパン 第四話 救出と自衛団-13-

「そんな指輪、精霊使いの手の中になければ価値のないものだ。くれてやる」 ルナは、投げられた指輪を急いで拾い、大切そうに両手で包んだ。「だが、妙なマネするなよ? そんなことをすれば、自分や父親、あの精霊使いがどうなるかな?」「……」 ルナは、ただ黙って、指輪を強く握り締めていた。「さぁ、こいつを運ぶぞ。誰か、手伝ってくれ」「はい!」 自衛団員達は、両側に棒のついた長方形の布の真ん中にウィルを乗せ、四人が前後で棒を持ち上げ、ウィルを布で支え、運んでいく。「何をじっとしている。君も一緒に帰るんだ」 ...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:29

マジカルパン 第四話 救出と自衛団-12-

「精霊使いなんて関係ない! ウィルは、私を助けてくれて、ゴブリンだって退治してくれた!」 ルナは、ウィルの前に出て、彼を庇うように、両腕を横に広げた。「彼を捕まえさせない!」(ルナ……)ウィルは、驚いたように目を見開いた。「そうか、そうか」 すると、自衛団の後ろの方から、中年ぐらいの濃いグレーのひげを生やした男が、笑顔を振り撒きながら、前へ出てきた。「ルナさんがそこまで言うなら、彼はいい人なのだろう」「バズさん……」 ルナは、笑顔で近寄ってきたバズに、何を思ったのか、心から嫌な顔をした。「ゴブリ...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:28

マジカルパン 第四話 救出と自衛団-11-

「皆さん違うの! この子達は魔物じゃ……」「何が違うっていうんだ? 大人しくしてるようだが、紛れもそいつらは魔物だろう!」「そっそれは……」 ルナは、言葉を詰まらせ、ウィルの方を見た。「危険なものを排除するのが自衛団の仕事だ!」 自衛団の弓を持った一人の男が、弓を引き、レンに向けて矢を射った!「うわっ!」 レンは、慌てながらも、どうにか矢を避けた。「あの野郎……」 ラックスは、体勢を低くし、唸る。自衛団側に何か動きがあれば、すぐにでも飛び掛りそうなほどの、雰囲気を出していた。「ラックス止めろ」 ウ...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:26

マジカルパン 第四話 救出と自衛団-10-

      三 ウィル達は、ゴブリンを退治した後、ルナの剣を探して、森の中を探し周っていた。 ルナとウィルは辺りを見回し、ラックスは臭いで探し、レンにいたっては、空から探していた。「こっちから、キツイ臭いする」 ラックスは、草むらを臭い、嫌そうな顔をしながら言った。「ありがとう」 ルナは、ラックスにお礼をいうと、彼の目線の先にある、草むらをかき分けた。「……あった!」 ルナは、嬉しそうな声を上げてしゃがみ込むと、草むらに落ちていた、一振りの剣を大事そうに手に取った。「それが例の剣か?」「うん!...

イルシオン | 2013.05.22 Wed 11:25

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