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プロローグ 空が、悲しいと泣き叫ぶように、雨を降らす夜。家々や商店が建ち並び、晴れた日中には人々で賑わっているであろう、ワイズと呼ばれる町にも、止むことなく、雨は降り注いでいた。そんな、ワイズの町の丁度中央に位置し、大きなネジ巻き時計のある広場に、雨に打たれながら佇む、水色の髪の青年の姿があった。 青年は、十代後半か二十代ぐらいの年齢だろう。雨避けか、黒いローブを体に羽織っていた。「まいったな……」 彼は、空を見上げ、そっと赤い瞳を閉じ、雨を直接顔に受けた。「ここで俺も終りそうだな……」 ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 12:59
横からクウォードが話かけるが、アピスは俯いたまま黙々と歩き続ける。 クウォードは、そんなアピスの反応がおかしいと思ったのか、彼女の顔を覗き込んだ。「あっ……」「ちょっと! 見ないでよ……」 アピスの顔は、りんごを思わせるほど真っ赤になっていた。 口を尖らせ「見るなー」と騒ぐアピスを見て、クウォードは口を押さえて笑い出した。「ははっ、真っ赤にならなくても良いじゃないか」「うっさい!」 アピスは怒りながら、クウォードは笑いながら、それぞれ森の中を進んでいく。「アピス……お前も今さっきのは十分キザだっ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:41
アピスは、不快に思ったのか「何よ?」と口を尖らせた。「それは、俺が植えたんだ。アピスの荷物から苗を拝借して……」「拝借ってアンタねぇ! あー、家から持ってきた荷物に足りない苗があったと思ったら……クウォードだったのね」 アピスはガゼルの家から帰って来た後、村の自分の家から荷物を持ち、クウォードの家で暮し始めたのだ。 最初はクウォードが一方的に言っていたことだった。 だが村に帰ったアピスは、何故か自分が神隠しにあったことになっている噂を聞き、村には入辛くなったため、仕方なくクウォードの家で住むこ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:40
「ガゼルさんの家から帰ってきてから、もう何ヶ月かたったけどさ……。あの時からクウォード暇があると必ず出かけてるけど……どこに行ってるのかな?」 ちょっと不安そうな顔で、首を傾げるアピス。 ティルは、何故か顔をそらせた。「さっさぁ、何をしてるんですかにゃー……」 アピスは、あからさまに態度の怪しいティルを見据えた。「ティル……何か知ってるんじゃ……」「しっ知らないにゃ! ぼっ僕、きょっ今日のごはんの魚釣ってくるにゃ!」 ティルはそれだけ言うと、家から逃げるように出て行った。 残されたアピスは、不満そうな...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:38
最終話 花に誓って 森の中にある、一見の木で出来た家の庭で、忙しそうに歩き回る二人の人影。 二人とも、植木鉢を抱えては、別の場所へと移動させていた。「クウォードー!!」 森の中に響く、少女の怒鳴り声。 そしてその声に振り返る、植木鉢を持ちエプロンをした青髪の青年。「この花は日陰じゃなくて日向においてって言ったでしょ! それに、こっちの花が日陰なの!」 クウォードと同じエプロンをした、少し茶色かかった髪のエルフの少女は腰に片手をあて、もう片方で手でクウォードを指さす。「悪い、全部覚えられ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:36
「そんなわけないでしょ?」 後ろから聞こえた声にクウォードは振り返った。「アピス……」「起こしてしまいましたか?」 ガゼルが優しく微笑み聞くと、アピスは首を横に振った。「いえ、すみません寝ちゃって……。あっあの、初めましてアピスです」「お話は聞いておりますよ、アピスさん。私はガゼルと申します。クウォードの義理の父親みたいなものです」 丁寧に挨拶をして、お辞儀をするガゼルに、アピスも慌ててお辞儀をした。 そして、深呼吸するとクウォードを見据えた。「本当にバカよねクウォードは……」「……」「ハーフエルフ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:35
「お前は、俺が好きなんだろ?」「えっあっまぁ、そうだけど……」 アピスは頬を染め、もじもじしながら答える。「俺もお前が好きだ。それにこれから離すつもりもない。だから、他の男になびかないように、結婚するんだろ?」「そっそんな他の男になびくとかないわよ!」 顔を赤くして反論するアピスに対し、クウォードは小さくため息をつき、遠くを見るような目をしていた。「人生何があるか、分からないもんだからな……」「何、じじくさいこと言ってんのよ! 私はまだ結婚なんて……」「問答無用だ。師匠の前で誓うんだ。ティル、何し...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:33
「本当に俺で良いのか? 後悔するなよ? ていうか、もう遅いけどな」「……」 急に一人でしゃべりまくるクウォードに、アピスは唖然としていた。「よし、こうしちゃいられない。師匠の所へ行かないと……」 そう言うなり、クウォードはアピス離したかと思えば、今度は腕を引き黙々と歩き出した。「ちょっと! どこに行くの?」 何も聞かされないまま腕を引かれ、どこかに連れて行かれるのだ。アピスが疑問に思うのも不思議ではない。「師匠の所だ」「師匠って誰よ?」「会ってみたら分かる」(答えになってないじゃん……) アピスは...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:32
第七話 不安な気持ち「こんの分からず屋ー!」 アピスは、クウォードに向けて、右手に握った石を力いっぱい投げた! それは、クウォードの後頭部に向けて飛んでいく!「……っ! 何するんだ、殺す気か!!」 クウォードは、石の気配を感じたのか、とっさに飛んでくる石を避けた! たまたま、クウォードの身体能力が良かったから避けれたものの、普通の人なら頭に直撃し、下手をしたら死んでいたはずだ。「やっと、こっち向いたね」 クウォードは、アピスに怒鳴るために、無意識にアピスの方を向いていた。 アピスはそのチャ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:30
一瞬ぼんやりとしていたアピスは、あの決意を思い出し、急いでクウォードを追いかけた。 だが、クウォードは止まらず、振り返りもしなかった。「クウォードったら!」 アピスも諦めず呼びかける!「クウォード! ……はぁ」 クウォードの歩く早さが早いためか、アピスは早足で歩きながら呼びかけないといけないため、呼吸が荒くなっていた。 そして、それとともに、自分を無視し続けるクウォードに、頭にきていた。「そう……。意地でもこっち向かない気?」 アピスは、クウォードを追いかけるのを止め、何故かその辺の草むらを探...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:29
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