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「いらっしゃいませ」「あら? 貴方見ない顔ね」 メガネの女性は、挨拶するウィルを、物珍しそうに足先から頭の毛の先まで、じっくりと観察するように見た。「あっえっと……」 ウィルがカーナの行動に戸惑っていると、ルナは苦笑いを浮かべながら、フォローに入った。「彼は私の遠い従兄妹のウィル。昨日こっちについて、お店手伝ってもらってるの」 カーナは、ルナが自分の髪の毛をいじりながら説明をするのを見て、「ふーん」と鼻で返事をすると、ウィルに振り返った。「そうなんだ。……ふふっ。なかなかのイケメン君ね? 町で人...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:20
ウィルのエプロンは、パン屋クラークと刺繍されているところまでは良かったが、なぜか可愛らしいクマの絵も一緒に刺繍されていた。ちなみに、ルナのエプロンは薄桃色で、可愛らしいうさぎの刺繍がしてあった。そのエプロンは、彼女の着ている白い長袖のワンピースによく似合っていた。「クマちゃん……」 ウィルは、エプロンが似合ってると言われ、何とも複雑な顔をしていた。「ほらっ! お客さん来るんだから、そんな顔しない! 笑顔でいらっしゃいませだからね?」 ルナは、ウィルの背中を軽く叩くと、念を押すように言った。「分...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:19
二 朝食も済み、ディランは自衛団の事務所に出かけ、ルナと二人っきりにされたウィルは、少し気まずかった。(まだ怒ってそうだな……)ウィルは、食後に用意してもらった紅茶を飲みながら、食器を洗う、ルナの後ろ姿を見た。だが、後ろ姿だけじゃ、相手の機嫌が分かるはずもない。彼は、こんな空気にしたまま家を出て行った、ディランが恨めしかった。「――ル? ……ウィル!」 ルナの声が、ウィルの耳元で響く!「はひっ!」 ウィルは、自分が呼ばれていることに気付き、少し怯えたようなおかしな返事をしながら、立ち上...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:18
(んっ?)隣に誰かの気配を感じたウィルは、どうせディランかルナだろうと思い、挨拶をしようとした。「おはようござ……いぃっ!」 だが、笑顔で挨拶をしようとしたウィルの顔は、驚きのために引きつった。それは狭くはないが、あまり広くもないダイニングの隅で、ディランが平然と片手で逆立ちをしていたからだ。「……こんな所で何やってるんですか?」「見ての通り、片手逆立ちだ。ちなみに片手で腕立て伏せもできるぞ?」 ディランは平然と答えると、一回だけ片腕だけで、腕立て伏せをするところをウィルに見せた。(さすが自衛団...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:17
「そこを負けてくれるのが親でしょ!」「いや、甘やかしはしねぇ。……というより、わざと負けるのは俺の美学に反する!」「父さんに美学なんて言葉、似合わないわよ!」 怒鳴るルナの顔は、興奮しているのか、少し顔が赤かった。「負け惜しみか?」 勝ち誇った笑みを浮かべるディランに、ルナな歯を食いしばり――そして。「ウィルっ!」 ルナは、ウィルを見ることなく背を向けたまま、彼の名を怒鳴るように叫んだ。「あっうん。何だ?」 ウィルは、驚きのあまり体を一瞬こわばらせた。「罰として、今日はとことん厳しくいくからね!...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:16
もちろん、本気でディランが剣を振り下ろしていれば、ルナの細い腕など簡単に折れていたかもしれない。ウィルは、ディランがそれなりに力を抜いてやっているのだと、何となく感じた。だがそれでも、ディランが力の加減をあまり分かっていないせいか、ルナの腕は微かに震えていた。ディランとルナの剣が擦れ合い、悲鳴のような、耳障りな音が、ウィルの耳に入る。「父さん、あまり力入れないでよ! 剣も私の腕も折れちゃうわ!」「すまんすまん。おわっ!」 ディランは、元々力を抜いていたのを、より一層力を抜いたせいか、ルナに剣...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:14
第二話 日常とパン屋さん 一 雨の中、ウィルがルナ達に助けられた、次の朝。 ワイズの町を濡らしていた雨雲も、どこかへ去っていた。だが、雨雲は自分達はそこにいたと言わんばかりに、水溜りの足跡をワイズの町のあちらこちらに残していた。そんなワイズの町中は、まだ太陽が顔を覗かす程度で完全に空へと昇っていないため、薄暗く、まだ静かだった。しかし、ある一軒の家では、金属同士が打ち合う音が響いていた。「……んっ?」 その金属が打ち合う音で目が覚めたのか、ウィルは目をこすりながら、ゆっくりと体...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:12
「こうしておけば、分かりませんよね?」 ウィルが、微笑みながら言うと、ディランは「そうだな」と頷いた。「それと……ルナ?」「……何よ?」 遠慮がちに自分に呼びかけてくるウィルを、ルナは顔を合わさず、横目で見た。「その……悪かったよ。酷いこと言って」 ウィルが、申し訳なさそうに謝ると、ルナは小さくため息を吐き、彼に顔を向けた。「……許してあげてもいいけど――条件があるわ」「条件?」 ウィルが首を傾げると、ルナは悪戯っ子のように笑った。「アデリナの人なら、精霊を呼び出せるんでしょう? それ今度見せてよ」「…...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:09
ディランは、そんな二人に小さくため息を突くと、仁王立ちのように両手を腰に当て、話始めた。「いいか、ウィル。俺は、お前を捕まえるつもりはねぇ。そのつもりなら、もうとっくにやってる。それに、お前を助けるような面倒なことはしねぇよ」 ウィルが、そっと顔を上げると、ディランの顔がとても真剣な表情になっているのに、気がついた。「十年前、お前達アデリナとガットの狂った民が魔物を召喚したせいで多くの人が死んだ。だがそうなった原因は、俺達リード族にもあるんだ。……少なくとも、俺はそう思っている」(原因はリード...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:09
「はっ?」(触れないって……何か壁でもあるのか?)ウィルは、ディランの言うことに呆然としながら、間抜けなことを考えていた。「ルナには、小さい頃から護身術と剣術をみっちり仕込んである。そんじょそこらの、ナンパ男なんて一ひねりだよなぁ、ルナ?」 ディランが、ルナに視線を送ると、ルナは笑顔で頷いた。「そうね。ナンパ男なんて軽いわ!」「だから、ルナが襲われる心配もない。平和なのさ、我が家は」 ディランは、「がはは!」と豪快に笑っていたが、何故か急に真剣な表情になると、ウィルの右腕を掴んだ! そして彼の...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:07
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