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もちろん、本気でディランが剣を振り下ろしていれば、ルナの細い腕など簡単に折れていたかもしれない。ウィルは、ディランがそれなりに力を抜いてやっているのだと、何となく感じた。だがそれでも、ディランが力の加減をあまり分かっていないせいか、ルナの腕は微かに震えていた。ディランとルナの剣が擦れ合い、悲鳴のような、耳障りな音が、ウィルの耳に入る。「父さん、あまり力入れないでよ! 剣も私の腕も折れちゃうわ!」「すまんすまん。おわっ!」 ディランは、元々力を抜いていたのを、より一層力を抜いたせいか、ルナに剣...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:14
第二話 日常とパン屋さん 一 雨の中、ウィルがルナ達に助けられた、次の朝。 ワイズの町を濡らしていた雨雲も、どこかへ去っていた。だが、雨雲は自分達はそこにいたと言わんばかりに、水溜りの足跡をワイズの町のあちらこちらに残していた。そんなワイズの町中は、まだ太陽が顔を覗かす程度で完全に空へと昇っていないため、薄暗く、まだ静かだった。しかし、ある一軒の家では、金属同士が打ち合う音が響いていた。「……んっ?」 その金属が打ち合う音で目が覚めたのか、ウィルは目をこすりながら、ゆっくりと体...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:12
「こうしておけば、分かりませんよね?」 ウィルが、微笑みながら言うと、ディランは「そうだな」と頷いた。「それと……ルナ?」「……何よ?」 遠慮がちに自分に呼びかけてくるウィルを、ルナは顔を合わさず、横目で見た。「その……悪かったよ。酷いこと言って」 ウィルが、申し訳なさそうに謝ると、ルナは小さくため息を吐き、彼に顔を向けた。「……許してあげてもいいけど――条件があるわ」「条件?」 ウィルが首を傾げると、ルナは悪戯っ子のように笑った。「アデリナの人なら、精霊を呼び出せるんでしょう? それ今度見せてよ」「…...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:09
ディランは、そんな二人に小さくため息を突くと、仁王立ちのように両手を腰に当て、話始めた。「いいか、ウィル。俺は、お前を捕まえるつもりはねぇ。そのつもりなら、もうとっくにやってる。それに、お前を助けるような面倒なことはしねぇよ」 ウィルが、そっと顔を上げると、ディランの顔がとても真剣な表情になっているのに、気がついた。「十年前、お前達アデリナとガットの狂った民が魔物を召喚したせいで多くの人が死んだ。だがそうなった原因は、俺達リード族にもあるんだ。……少なくとも、俺はそう思っている」(原因はリード...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:09
「はっ?」(触れないって……何か壁でもあるのか?)ウィルは、ディランの言うことに呆然としながら、間抜けなことを考えていた。「ルナには、小さい頃から護身術と剣術をみっちり仕込んである。そんじょそこらの、ナンパ男なんて一ひねりだよなぁ、ルナ?」 ディランが、ルナに視線を送ると、ルナは笑顔で頷いた。「そうね。ナンパ男なんて軽いわ!」「だから、ルナが襲われる心配もない。平和なのさ、我が家は」 ディランは、「がはは!」と豪快に笑っていたが、何故か急に真剣な表情になると、ウィルの右腕を掴んだ! そして彼の...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:07
ウィルは、そんな彼女に怒る気も失せ、小さくため息を吐くと、そういえばと、何か思い出したかのように口を開いた。「パン屋を手伝えってどういうことだよ?」「言葉の通りよ。人手が足りないの。助けてあげたんだから、お礼は働いて返してよ。 アンタなら客引きに使えるし……」 ルナは、そう言うなり、妖しく笑った。(客引き……)ウィルといえば、そんな彼女に呆気にとられていた。「ウチはな、一階でパン屋をやってるんだ。だけどな、ルナ一人じゃ結構大変でな?」 そして、ルナの話に乗る気満々なディラン。(一体何なんだ、この...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:06
「そうか。だが、そんなキワドイ所まで聞いてねぇぞ?」 強面の男は、腕を組みながら、意地悪く笑った。(じゃあ、どう答えろってんだよ……)少し矛盾したことを言ってくる強面の男に、ウィルは気付かれないように、小さくため息を吐いた。「お前、確かウィルとかいったな?」 その強面の男の言葉に、ウィルはもう一度吐きかけたため息を、飲み込んだ!「何で俺の名前を! ……ていうか、さっきからアンタ誰だよ!」「今まで丁寧にしゃべってたと思えば、アンタ呼ばわりか?」 強面の男は、わざとらしく肩を竦め、ため息を吐いた。「...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:05
二「……ここはどこだ? アンタ誰だ?」 目を覚ましたウィルが言った、第一声はそれだった。見知らぬ部屋の、見知らぬベットに、いつの間にか少し大きめの服に着替えて、寝かされていた自分。そして一番の問題は、自分に寄りかかるように、ぐっすりと眠っている、見知らぬ赤毛の少女の存在。それらのことは、ぐっすり睡眠中ルナと、彼女の父親ディランが、家へ運んで看病してくれたことなど知らないウィルにとっては、混乱するのに最高の条件だった。 何で、俺はここに?いや、その前にこの女、誰だ? 俺が部屋に連れ込...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:04
第一話 居候になりました 一 ワイズの町の南東、飲食店が建ち並ぶ一角に、パン屋クラークと書かれた看板の下がる家があった。その家の二階の一室には、ベットに寝かされ、寝息を立てる水色の髪の青年――ウィルと、ベットの横のイスに座る、黒髪にメガネをかけた男がいた。メガネの男は、顔にしわはよっていたが、童顔なためか、年をそれほどとっているようには、見えなかった。「ザックおじさん……どう?」 部屋の扉が開き、扉の隙間から赤毛の少女――ルナ・クラークが、顔を覗かせた。ザックと呼ばれたメガネの男は...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:03
ウィルは、強面の男より少し小さいぐらいだったが、強面の男は彼を、特別重そうには担いでいなかった。きっとローブから覗く、がっちりとした筋肉のおかげだろう。「私、ザックおじさん呼んでくる!」 赤毛の少女は、ローブのフードを深く被り、走り出した。「気をつけていけよ、ルナ」 そんな少女の背中に、強面の男は声をかける。すると、ルナと呼ばれた少女は振り返らず、片手だけ上げ合図をした。「さて、俺も行くか!」 強面の男は、ウィルを担ぎ直し、歩き出そうとした時だった。「んっ?」 ウィルが首にかけていたチェーン...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 13:01
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