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アピスはそれ聞き、「お姫様だっこ」と何回か呟きながら、顔を赤く染めていた。「アピスしゃん、たぶんクウォード様は今花畑に行ってると思うにゃ!」「えっ何?」「今クウォード様は家にいないにゃ。でも帰る前に、クウォード様に会ってから帰って欲しいにゃ……」 潤んだ瞳で、上目遣いをしながら、ティルはアピスに頼み込む。 そんな瞳で、一生懸命ティルに頼まれれば、さすがにアピスも頷くしかなくなる。「アピスしゃん、頑張って!」 ベットから立ち上がり、体を伸ばしていたアピスの背中に、ティルは投げかける。「うん。と...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:28
第六話 目覚め 森の中にある、木で出来た家。 その家の中のある一室のベットで、小さく寝息をたて眠るエルフの少女。 その部屋へ、青い長い髪をした青年が入ってきた。「アピス……」 青い髪の青年は、少女に優しく呼びかけるが、アピスと呼ばれた少女は目を覚まさなかった。 青年は、ベットの横に椅子を持っていき、その椅子に腰掛け、アピスを見ていた。「何でお前は、俺の傍に来るんだ?」 青年は、真剣な表情でアピスに問いかける。「何で、俺に優しくするんだ?」 だが、アピスは寝ているせいか、返事を返すことはな...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:26
今さっきとは打って変わって、凄く不安そうな表情で戸惑うクウォードに対し、ティルは自分がしっかりしなければと思い、アピスの様子を見た。「……だっ大丈夫ですにゃ。ただ、寝てるだけみたいですにゃ……」 クウォードは、それを聞くと安堵し、深くため息をついた。「きっと、魔力を使いすぎたんだと思いますにゃ」「そうか……」 クウォードは、小さく寝息を立てるツキノを顔を見て、少し考える。 しばらくすると、クウォードはアピスを抱きかかえ、立ち上がった。丁度、お姫様だっこのような抱え方だ。「くっクウォード様?」 ク...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:25
「でも何でだ? あんなに炎を吐きかけたら、森が燃えているはずなのに……」 クウォードとティルは顔を見合わせたが、すぐに鳥達が炎を吐きつけている先へと急いだ! 「ここは……」 鳥達いた場所のすぐ下は、アピスのよく来ていた、あのお花畑だった。 橙色に染まる花畑。だが燃えているわけではなかった。「アピスしゃん!」 そこには、アピスがいた。必死に魔法のバリアを張り、鳥達の炎から花達を守っていたのだ。 アピスは、ティルとクウォードに気付くと一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまた真剣な表情をしながら、空を見上げ、...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:24
第五話 再開と仮面 森の中を、二本足で歩く猫と、長い髪青い髪をし、剣を持った青年が歩く。「ティル。……何で外に連れ出した?」「にゃんでって、ただ散歩したかっただけですにゃ? 最初にそう言ったですにゃ」 ティルはアピスに会った次の日の今日、クウォードを泣き落としで納得させ、森の中をお花畑に向って歩いていた。 もちろん、クウォードはお花畑に向っているなど、気付いてはいない。「……アピスしゃん、元気にしてますかにゃ?」「……知らない」 ティルは、何となくアピスの名前を出してみたが、クウォードの冷めた反...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:22
アピスは、真っ直ぐなティルの瞳と目が合い、断りきれず頷いた。 正直アピスは、もう一度クウォードに合いたかったのだ。「僕は、もう帰りますにゃ。 明日……絶対来てくださいにゃ!」 ティルはそれだけ言うと、部屋の窓から飛び出ていた。「明日……」 部屋に一人残されたアピスは、ティルの出て行った窓を見つめながら、涙を拭っていた。(明日……この気持ちを伝えよう) アピスはそう心に決めると、泣いたせいで赤くなった瞳を冷やすため、顔を洗いに部屋を出た……。to be continuance....JUGEMテーマ:ファンタジー小説
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:20
「僕は、アピスしゃんに聞いたいことがあって来たにゃ!」「聞きたいこと?」「アイリスの花言葉は……【あなたを愛す】ですにゃ。あの球根をクウォード様にあげたということは、それがクウォード様への気持ちと取っても良いですかにゃ?」 アピスは小さく頷くと、そのまま俯き黙り込んでしまった。「……アピスしゃんは、クウォード様がハーフエルフと知って嫌いににゃったにゃ?」「違うっ!」 アピスは顔を上げて、今にも泣きそうな顔で否定した。「だって私……最初からクウォードがハーフだって知ってたの」「にゃら!」「でも――でも...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:19
第四話 苦しい思い あれから一週間たった。 あの出来事からというもの、クウォードは必要以上に家から出ることはなかった。 アピスが来ていた頃は、毎日のように外に出ていたクウォードの、今の変わりように、ティルは心配をしていた。 そして今日も、ティルはクウォードを心配しながらも、アイリスの花の水遣りをする。 あの日、アピスのくれたアイリス球根を持ち帰ったティルは、クウォードに隠れ、球根を鉢植えに植え、大切に育てていた。 ティルは、植物を育てる時に魔力を注ぐ癖があるせいか、魔力が合わない植物を枯ら...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:17
「お前分かってないのか!? アイツはハーフなんだ……ハーフエルフなんかと付き合うな!」「……っ!」 ディンの一言に、クウォードは表情を歪めた。 そして、ディンはアピスの腕を引っ張る。「帰るぞ!」「嫌だ! 今の言葉撤回して! クウォードに謝ってディン!」「謝る? 何で謝らないといけないんだ? 事実だろう!」 ディンはそう叫ぶと、クウォードは立ち上がり、冷たい表情をしてディンを見た。その冷たい視線に、ディンは恐怖を感じだ。 クウォードはその表情のまま、口を開いた。「そう、俺はハーフエルフだ。今更分か...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:10
「これ、一つクウォードにあげる! ちゃんと花が咲いたら、交換しよう!」 「えっ……あぁ」 クウォードは、微妙ながらも返事をした。「確か、アイリスのはにゃ言葉は……」 ティルがアイリスの花言葉を言おうとした瞬間! アピスが凄い勢いで、ティルの口を塞いだ!「ティルちゃん! ……ダメだよ言っちゃ?」「花言葉は、何なんだ?」 必死で、ティルに口止めするアピスの後ろで、クウォードは首を傾げる。「秘密!」「何だよ、気になるだろ? 教えてくれよ?」 微笑むクウォードを見つめて、少し考え込むアピス。「……なら、アイ...
イルシオン | 2013.05.21 Tue 10:05
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