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JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「わたしの使った香辛料が、いつもと違うからかな。エヴィン、こういうのだめだった?」「違うよ、スィエル。とってもおいしいよ」 それでも上手くは笑えなかった。友と再会しても、懐かしい家に戻っても、結局心から笑えていない。自然な笑顔。そんなありふれた当たり前のものをいつどこでなくしてしてきてしまったんだろう。皆に心配をかけないようにと、いつも何かをごまかして笑っている自分。いつでもそんな風だった気がする。それは一体いつからはじまって、そして一体いつになったら終...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.29 Thu 09:52
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「何すんだよはこっちの台詞だ。後ろから人を羽交い締めにしようとしたりして」「からかってやろうと思っただけだよ! ……くそー、ちびのクセに強くなっちゃってまあ……なんでそのちっさい体で、おれを軽々投げ飛ばせるんだよ?」「うるさいな。そういう技があるんだよ、相手の勢いを利用して……ま、いい。とにかく、俺のことをちび言うのはやめろよ」「ちびはちびだろ! 顔も女みたくて、昔と一緒……」 どたぁん!!!! 再びレイが投げ飛ばされた音が屋敷中に響いた。音の重さからして、今度はか...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.28 Wed 10:22
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 エヴィンはその晩は幼少の時期を過ごした生家で休むことになった。現在はイクセレアの警備隊詰所であるそこで普段から寝起きしているレイやスィエルはもちろん、シェーダやアルス、そしてリエも一緒だった。これは同じ先遣隊を率いる上官でもある、黒獅子アグリウス少佐のはからいであり、実質逆らうことを許されない「命令」でもあった。しばし任務を忘れ、懐かしい面々と語り明かす時間がエヴィンには必要ではないのか。黒獅子はそのいかめしい顔を緩めてそんなことを語っていたが、当然エヴ...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.27 Tue 09:59
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「ふん。たしかに俺が迂闊でしたけどね。爆発、四散したトゥルーノースの連携回路がまだ残っていたとしたって何ら不思議じゃない……そう、なんだよね……」「だよ、ねえ……。なのにどうして気付かなかったんだか。自慢の我が弟は、稀代の切れ者だと思っていたのに」「……まさか、アシェードの鐘がそうだなんて、思うか!?」 ティラは執務机に広げられた古い図面を両手で叩き、声を荒げた。そんな自分を冷徹に客観視しながららしくないと思いこそすれ、事の重大さを考えるにどうしても頭に血がのぼる...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.26 Mon 11:55
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「久しぶり」 エヴィンはそう手を差し出すが、スィエルはその手を握らなかった。代わりにほぼ同じ背丈のエヴィンの首にしっかりと両腕でしがみついて、彼の首筋に顔を埋めた。記憶の中よりずっと女らしくなったスィエルの肢体が密着したことでエヴィンは大いに焦ったが、それよりもスィエルの体が小刻みに震えているのに気づいて動転しかける。彼女は泣いていたのだ。 「会いたかったよ! 会いたかったよ……! 街があんな事になって、わたし、毎日怖くて! 何度も首都に行こうとしたの……エヴィンに…...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.22 Thu 09:52
JUGEMテーマ:ファンタジー小説「首都に越したらみるみる元気になった……というか、なりすぎたというか。イクセレアの気候が合わなかったんだか、なんなんだか。寒いの駄目なのかもな、俺」「それはあるかもな。でもちょっと……やっぱり小さいよな、体。十七の誕生日、もうすぐじゃなかったっけ? 生誕祭生まれだもんな」「ああ。数日の後(のち)に晴れてまたひとつ歳を取れるなぁ。……背丈のことは言うなよ」「だって。お前がちっさい原因、昔体が弱かったことと関係してんのかなぁって。……でもアレはウケたかな。ほらアルスが、蒼穹の...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.21 Wed 09:28
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 雪はやまない。にぎやかなアルスがいなくなると途端一行の間に沈黙がおり、しんしんと雪が降る音だけがやけに耳につく。自ら話を切り出すのが苦手なエヴィンはずっと黙りこくっていたし、シェーダは彼らに続く小隊の後方にいてしんがりを務めているから傍にはいない。だがそこで沈黙に耐えきれなくなったレイが口を開いた。 「なあ。どうして、イクセレアへの救助はこうまで遅れたのかな。詳しい説明が聞きたいんだけど」 エヴィンは頷いた。黙りこんでいるのも実はしんどかったので、レイのこの...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.20 Tue 10:45
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 レイはいつも窓から入ってきた。 今日の授業はこんなだった。休み時間は廊下に立たされてばかりの悪ガキがいたずらをするものだから、箒でそいつを追い払ってやった。それを先生に見られて今日は宿題が倍なんだ……レイの話は尽きることがなかった。ごくごく当たり前の日常の話題でも学校に通っていなかったエヴィンにはとても新鮮で、いつも彼が窓辺に現れるのを楽しみに待っていたものだった。 「懐かしいな、本当に」 エヴィンは握ったレイの手をなかなか離すことが出来なかった。レイ...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.19 Mon 10:21
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「な、なんだこのガキ……」「く、来るな……!」 男たちの目にはエヴィンの姿とその手にしたサーベルの輝きが一体となって光が迫るようにも見えたろう。そしてその背後には大いなる蒼穹が羽ばたく。雪の中わずかな陽光を集めた光の束を手にするように、エヴィンはその剣をふるって怒号とつぶてのただ中声高に名乗りを上げた。 「我の名は、エヴィン=アルロ=リスバーンだ!!!!」「なっ……!?」 時が止まるとはこういうことを言うのだろうか。迫りくる白き影につぶてを投げる手が、柔らかい金...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.16 Fri 10:04
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「南部はかなり燃えたって話だけれど、ちゃんと街は残っているようだわね。石造りの街並みでよかったと言うべきかしら。それが原因で北部は根こそぎ崩れてしまっているけれど、雪を防ぐ屋根が残っているだけ南部はマシだわね」「そうだな。雪が本格的に降りだす前に計画が動き出して、救われるのは何よりここの生き残りたちだ。ああそういえば。エヴィン、イクセレアにはお前の生まれたうちがあるんだろ? 昔住んでた家、無事なんだろ? ……おい、聞いてんのか」「いや、……考え事をしてた」 その...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.11.15 Thu 11:56
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