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(110)その気の顔しとる、ミエミエやんか。

 ふたりは駅前にむかって歩きはじめた。駐車場にいくには駅前商店街をとおらねばならない。 「あれまあ。あんなに、あっちゃこっちゃに挨拶しまくって」  商店街の人と近くの住人は顔見知りである。 「根性あるなあ、このふたり。本心はデートゆーことやないですか。ほら、池子なんかその気の顔しとる、ミエミエやんか」  大木社長は吹きだした。 「小林くん。奥さんの歳はいくつだね」 「五十歳ですわ」 「まわりの人はあのふたりを見て、デートなんて考えないよ。きみが死んだことは新聞にも載ったくらいだから、なおさら...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.15 Fri 21:27

(109)顔全体の皺とたるみの微妙な動きからも判別できる。

 ●  十一月三十日がやってきた。  幽霊探偵団の推理は、万全に万全を期したものになっていた。だが、幽霊の悲哀を今回ほど味わったこともなかった。幽霊には、現実におよぼす力などなにもないからだ。  午後一時、舟井は駅前の駐車場に車をいれ、マンションにむかった。われわれ三人の幽霊は、三十センチの間隔もあけずに彼をとりかこみ、四方八方から思いつくかぎりの罵詈雑言をあびせていた。  間もなく、ふたりそろってマンションからでてきた。  黒と灰色の大きな縞模様のスーツ姿の舟井は、顔では笑っているものの...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.14 Thu 02:25

(108)恋〜は〜わたしの恋〜は〜雲のう〜えを〜。

 翌日は、緊張した情報収集となった。  池子は私の前で黒っぽい和服を用意していた。楽しげに、大ブスの大オバンが恋の歌を口ずさんでいた。恋〜は〜わたしの恋〜は〜雲のう〜えを〜。  そして、ちらちらとテレビ画面を見る。「ローマの休日」が映されていた。池子は和服の用意をしつつ、画面から目をはなすと即刻、鏡にむかって、なにやらわけのわからない表情と素振りをする。  最初は不思議でしかたなかったが、すぐにわかった。彼女はオードリー・ヘップバーンの表情と仕草を、我がものにしようとしていたのである。針でふ...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.11 Mon 21:47

(108)恋〜は〜わたしの恋〜は〜雲のう〜えを〜。

 翌日は、緊張した情報収集となった。  池子は私の前で黒っぽい和服を用意していた。楽しげに、大ブスの大オバンが恋の歌を口ずさんでいた。恋〜は〜わたしの恋〜は〜雲のう〜えを〜。  そして、ちらちらとテレビ画面を見る。「ローマの休日」が映されていた。池子は和服の用意をしつつ、画面から目をはなすと即刻、鏡にむかって、なにやらわけのわからない表情と素振りをする。  最初は不思議でしかたなかったが、すぐにわかった。彼女はオードリー・ヘップバーンの表情と仕草を、我がものにしようとしていたのである。針でふ...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.11 Mon 21:37

(107)いよいよ、わしらの出番がきたのかもしれない。

「いよいよ、わしらの出番がきたのかもしれない」 「とゆーことは?」 「いつまでも奥さんが、舟井にだまされているとは思えんからな。舟井にとって、時間が経てば経つほど不利になってくる。はやいうちにした方がいいと思うのが人情ってものだ」 「ぼくもそう思います」中森専務が言った。 「いま、小林さんの奥さんはご亭主を亡くしたばかりだ。だから、その…動機もあるといえばあります」 「動機?」 「たとえば、自殺でもいいんです」 「池子が? アホな。わが家は強力仮面夫婦なんですやん。ご存じのはずやないですか。亭...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.08 Fri 21:37

(106)十一月三十日になにかが起きる。

●  すでに私の葬式からひと月半以上がすぎていた。  ひさしぶりに会議に活気がみなぎっていた。 「あさっての十一月三十日ゆーことやったんですなあ」私はもう一度たしかめた。 「池子が書きこんでたのもこの日付やった。メモには、たしか、黒て書いてたけど、これ、どーゆー意味なんですやろ、社長はん」 「さあ〜。わしの方も電話している舟井のノートをのぞきこんだんだが、和服という文字が見えただけだった。なにせ、電話の片方の話だけでは内容の理解に限界があってな。ただ、はっきりしてることは、ヤツが奥さんを、そ...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.07 Thu 20:34

よわむしなピンキーリング chapt.13

 今日はいつも通り、磯谷さんと二人での仕事。昨日は半分以上、桜庭さんと一緒だったけど、仕事帰りのOLさんたちで店がにぎわう時間には磯谷さんが戻ってきて三人だったから結構、気が楽だったんだよね。  charm*に着いたばかりの時は、昨日みたいにからかわれるのかって思ったけど、そんな事はなくて、若宮さんの「わ」の字も出なかった。  それはそうだよね。この店にとって――っていうよりも磯谷さんと桜庭さんにとっては若宮さんはまだ一回来たきりのお客さんだもん。忘れてたっておかしくないよ。  ……これが飯沼さんだっ...

Sweetish trip! | 2008.08.06 Wed 00:55

(105)幽霊性鬱症候群。

 このときふと、いま私は、宇宙の時間と空間の厚みの最下層の、その底辺部に生息していることに気がついたのだ。  きゅうに息苦しくなった。じつに奇異な感覚だった。これを境に、それまでの光景が、私のなかでぐるりと反転したのである。  天空の星は輝いていたのではなかった。  それは穴にすぎなかった。光がそこからもれていたにすぎなかったのだ。なぜ、いままで、これに気づかなかったのだろう。  いま、私の頭上を覆っているのは、すべてを包む宇宙ではなく、私たちを宇宙から隔離する、星の数だけの穴をもつ巨大な暗...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.05 Tue 00:31

(104)宇宙の彼方の記憶、天空の奥底の輝き。

 ●  その夜、墓場には私だけだった。社長と専務はまだ探索をつづけている。もうすぐ帰ってくるだろう。  墓石によりかかって私は、先ほどのにわか雨でスモッグをすっきり洗いながした天空をながめていた。満天の星空をつつみこむ広大な空間。ビルの影ごしに映えるネオンの光きをそれは吸収し、本来の宇宙の姿を示していた。  私は視野をそのひろがりにあわせた。ため息がもれるほどそれは巨大で、私の眼球にぴったり添った湾曲を描いていた。私の思考はこれまでの不毛ないくつもの夜を駆けめぐり、やがて宇宙の彼方の記憶、天...

ぼ、ぼ、ぼくらは幽霊探偵団〜。  (小説ブログ) | 2008.08.04 Mon 03:47

第二話 「友達」

ガヤガヤと騒がしい教室。

とりかご | 2008.08.03 Sun 16:47

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