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JUGEMテーマ:連載 第一章 玄丈先生との出会い6 実態と影の切り分け(4) 実をいうと、加藤さんと会話しているとき、ぼくは苦い体験を呼び醒まされていたのだ。 あれは去年の暮れ、会社を辞める直前のことだ。ぼくはノルマを達することができずに落ち込んでしまい、ホテルのバーでやけ気味に一人で呑んでいた。下戸のぼくが酒を呑みたくなるのだから、どれくらい落ち込んでいたか、わかるってものだ。 すると、女が話しかけてきた。「あなた、しけた顔してるわね」 なんだ、失礼な女だ。ぼくは誰とも話す気にならなかった...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.23 Wed 10:41
JUGEMテーマ:連載 第一章 玄丈先生との出会い6 実態と影の切り分け(3)「人間にはいろいろな側面があります。私だって、コンサルタント会社を経営している経営者という顔もあれば、家では父親とか亭主の顔があります。どれも自分なんですが、それぞれイメージは違いますよね。だから、いやな面に眼をつむり、好きなところだけ取り上げれば、そういう人間に見えてくるわけです」「それが切り分けという意味ですね?」「そうです。しかも、玄丈先生は、?お父さんはいい人なんだが?と言って、翔太君の潜在意識に、父親はいい人...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.22 Tue 09:24
JUGEMテーマ:連載第一章 玄丈先生との出会い6 実態と影の切り分け(2) 「なるほど」 ぼくは膝をポンと叩いて言った。「そういう親子もあるんですねえ。その点、ぼくの親父なんか逆で、いつも家でグータラしているだけでしたから。もっとしっかりしてくれよと、子供心にも思ったものです」 ぼくの言葉を聞いて、加藤さんは肩を揺すって笑った。「親を馬鹿にしている子は反抗なんかしません。なまじ親を尊敬している子の方が反抗するんです」 そうか。耳の痛い親も多いことだろう。しかし、ぼくにはまだ納得できないことが...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.21 Mon 09:02
何をしに来たのか分からなくなって、公園の出入口へ向かう。リゲルがなにか話しかけたように思うけれど、僕のどぎまぎで遮ってしまった。僕は、どうしてこうずれているのだろう。頼りにならない悲しさは、夢見勝ちに過ごしてきた時間を後悔させる。つま先が交互に前へ出るさまにも見飽きて、門柱として今はあおく燃える桜の木に視線を移す。僕は驚いてしまった、そこにリゲルのお母さんがいたからだ。僕には目もくれず、リゲルへまっすぐ駆けていく後ろ姿は、母親とは思えない儚さがある。 「どうしてこんな勝手が出来るの。暗くな...
セイメイ (仮) | 2009.12.21 Mon 01:06
JUGEMテーマ:連載 第一章 玄丈先生との出会い6 実態と影の切り分け(1) 玄丈先生が去ったあと、ぼくはしばらく部屋から立ち去りがたかった。実態と影を切り分けた、という謎のような言葉がひっかかったのである。すると、先に整体を終えた五十歳くらいの、小柄でやせた男性がぼくに近づいてきた。「加藤といいます。お名前は……たしか月田さんでしたね」 ぼくがうなずくと、加藤と名乗る人は、ぼくの顔をじっと見てから、言った。「月田さんは玄丈先生の言葉に興味があるようですね。打撲のことが気になるのですか?」「い...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.20 Sun 10:02
登場人物紹介 イラスト入り登場人物紹介(まだ全部じゃありませんが…) 暫く進むと、先に白く差し込む陽が、見える。 テテュスはそこが近づくにつれて、凄く眩しく感じた。 洞窟の横からぽっかりと縦穴が空き、陽がさんさんと頭上から降り注いでる。 アイリスが手綱を止める様子が無くて、ディングレーがささやく。 「少し、休まないか?」 アイリスが気づき、ディングレーに振り向いた。 「ああ…疲れたか?」 「まあそりゃあ…。 小半時駆けてるし、予想外のあんなものも居て、普通の道じゃないしな」 アイリスは降り注ぐ陽...
アースルーリンドの騎士 | 2009.12.20 Sun 04:01
JUGEMテーマ:連載第一章 玄丈先生との出会い5 玄丈先生登場(5) ようやく息を十分に吸え、やれやれと思っていると、そのあと先生はまたもやグイッとぼくの腰を押さえつけた。 すると、ぼくはまたまた息をグーッと吐かされてしまった。さらに、玄丈先生はぼくの腰をグッともう一撃、最後の駄目押しのように強く押圧したから、ぼくの肺の中の空気は完全に出ていってしまった。 このあと、玄丈先生はぼくの腰に当てていた手をスーッと抜いていったので、今度はそれに合わせるかのように、ぼくは静かに息を吸うことができた...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.19 Sat 10:09
僕は、時間をかけて剥がれ落ちてゆくのだろうペンキに爪をたてて、削る。遊具の明るい色した皮を剥げば、茶色く凝り固まった鉄が現れる。鉄で出来た遊具にしがみついて遊ぶと、否応なく金臭い手になる。油粘土の匂いほど、僕は気にならないけれど、よく鼻血がでる平(たいら)君は、これを不安の匂いだと言う。明かりを透かした葉っぱがつくる世界がうつくしい。僕は不鮮明な感情から逃避して、事象に目を向ける。ブランコがいったりきたりする様は、時計の振り子と同じで、時間の経過がよくわかる。どうすればいいのだろう。僕はた...
セイメイ (仮) | 2009.12.18 Fri 21:11
JUGEMテーマ:連載第一章 玄丈先生との出会い5 玄丈先生登場(4) いったい何があったのだろうか。ついさっきまで、翔太は育ちのよさそうな青年だが一方でものすごく陰のある人間だ、とぼくは思い込んでいた。ところが、今の翔太にそんな暗さはどこにもない。ぼくは翔太の変貌ぶりを呆然と眺めていた。すると、「月田さん」 突然ぼくの名前が呼ばれた。声の方に顔をやると、なんと玄丈先生だ。「はあ」 ぼくはすごく間の抜けた声を出してしまった。「あなたも見てあげましょう」「い、いえ。あの……、ぼくは金がないので」 心の準備...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.18 Fri 08:11
JUGEMテーマ:連載第一章 玄丈先生との出会い5 玄丈先生登場(3) ときおり、玄丈先生の袴が、きぬずれの音をキュッキュッとさせたが、それがぼくの耳にはとても心地よく響いた。 これは先生の動きがいかにシャープであるかの証明なのだろう。あとになって玄丈先生は四十七歳だと聞いたが、先生の動きはまるで二十代の人間のようであった。 意外なことだが、玄丈先生は必ずしも黙って処置をしているのではなく、翔太に対して、要所要所で質問を投げかけるのであった。 そのうえ、せいぜい十分間くらいの短時間であるにもかかわらず...
ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.12.17 Thu 08:21
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