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ジン

 何日も特に何もする様子を見せないトーダに、エイジアは聞いた。「帰る術はないのか?」 トーダは笑うと答えた。「帰ろうと思えば首都に連絡をとればすぐに迎えが来る。」「ではなぜ?」 柱にもたれていたトーダはエイジアに向き直ると声を潜めた。「待っている。」「何を?」「トナンが鎮まるのを。」「?トナンがどうかしたのか?」「今度の事故はトナンが引き起こした。ランバーはたいていのことでは故障しない優秀な機器だ。だが、人間の引き起こす想定以上の電磁波には案外弱い。」「なんだそれ?」「きみも感じるだろう?ト...

Planet | 2009.07.29 Wed 09:50

整体師 諸星玄丈 第164話

JUGEMテーマ:連載  第四章 玄丈先生の危機5 やってられん踊りの恐怖(4) 狭い路地は踊り子たちでびっしり埋めつくされ、見物人は路の両端に押しつけられてしまった。まるでおしくらまんじゅうのような状態だ。 そのときだ。「キャー」 突然、女の叫び声があがった。 驚いて声の方を見ると、晴美が路端に転倒してしゃがみこんでいる。 そればかりでなく、行列からニョキッと突き出ている赤い袖の腕が、晴美の左腕をつかみ、晴美を踊りの列の中に無理矢理引っ張り込もうとしているではないか。 あわてたぼくは、もがいて...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.29 Wed 06:49

シュト

 『訪問者』が訪れた夜が明けた。 明け方に寝静まった村は静かだった。 エイジアはまんじりともせず、村をぶらついた。 気がつくとランバーの乗組員たちの休む棟の前に立っていた。 サオ・ハが起きて、こちらを見ている。 小さく会釈すると、向こうも返した。 サオ・ハの座る階段の一段下にエイジアも座った。「ひとつ、聞いてもいいか?」 エイジアの問いにサオ・ハはうなずいた。「トーダはエイジア人か?」 サオ・ハはうなずいた。「わたしもエイジア人らしいんだが、記憶がないんだ。エイジアの民は他にもいるのか?...

Planet | 2009.07.28 Tue 09:22

整体師 諸星玄丈 第163話

JUGEMテーマ:連載  第四章 玄丈先生の危機5 やってられん踊りの恐怖(3) そうこうしているうち、突然、鐘だけが速いリズムで激しく打ち鳴らされだした。しかも、それはずっと長い間つづいたのである。 その音を聞いた者は、心を急かされるような、奇妙な焦燥感を抱かされた。 やがて、その鐘にあおられるかのように、声があがった。 ――やってられん、やってられん。 路の両端にいる男たちが声をあげはじめたのだ。すると女の声が聞こえた。 ――地震が来るぞ。ええさ、ええさ。 踊っている行列の女たちからの声であった...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.28 Tue 07:13

整体師 諸星玄丈 第162話

JUGEMテーマ:連載第四章 玄丈先生の危機5 やってられん踊りの恐怖(2)  十一月の声を聞くころから、都内のあちこちでやってられん踊りが急速に広まりだした。 最初に大きく新聞で取り上げられたのは、十一月三日、文化の日の午後、下北沢北口商店街で開催される「やってられん踊りの会」だった。 シモキタの愛称で知られる世田谷区下北沢は、新宿から小田急線で七分、渋谷から京王井の頭線で四分と、たいへん便利なところにある。また、玄丈道場からは、ドア・ツー・ドアで三十分もかからない。 ぼくは晴美を誘って、やってら...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.27 Mon 08:02

整体師 諸星玄丈 第161話

 JUGEMテーマ:連載 第四章 玄丈先生の危機5 やってられん踊りの恐怖(1) 十一月に入ると社会全体の不安はさらに深まり、それが玄丈道場の会員たちにも暗い影を落としていた。 あとになって考えれば、一九九七年十一月という月は、金融界にとって戦後最悪の月であったといえるかもしれない。 十一月三日に準大手の三洋証券が破綻し、次いで十七日に北海道拓殖銀行が破綻、さらに二十四日には山一證券が崩壊した。そして、二十六日には徳陽シティ銀行が自壊してしまった。この一ヶ月間は、日本金融史上例を見ない「金融シス...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.25 Sat 10:06

(10)それにしても、この男のナイーブさはどうだ。

JUGEMテーマ:連載  藤田はちょっと間をおいて、再び話しはじめた。「というわけで、やつは今夜の九時には一人だ。で、その…あんたの仕事もうまくいくんじゃないかと…」「なるほどねえ」おれは煙草の煙を深々と吸い込みながら、天井に目をやった。 この男は命を奪う相手のこの世で最後の逢瀬が許せなくて、今夜、ぜひとも殺して欲しいという。辻褄が合うようでいて、この言い分にはどこか奇妙なところがあるように思えた。考えたが、それが何なのかわからなかった。 それにしても、この男のナイーブさはどうだ。正確な年齢はわから...

天使のヒットマン。(小説ブログ) | 2009.07.24 Fri 23:17

整体師 諸星玄丈 第160話

JUGEMテーマ:連載第四章 玄丈先生の危機4 獅子身中の虫(5) そんなとき、チンさんが席に近づいてきた。「お待ちどうさまでーす」 翔太の食事だ。「水餃子と五目焼きそばです。すぐに青椒牛肉絲《チンジャオロースー》もできるからね。足りなかったら、また声をかけてね」 チンさんが陽気な声でぼくたちに告げた。「チンさん、ありがとう。おい、翔太君。食べろよ」 加藤さんは翔太に向かって大きな声で勧めた。 翔太はよほど腹がへっていたのか、ものも言わずに食べている。 その間、ぼくは翔太の撮った写真を手に取って眺め...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.24 Fri 08:24

整体師 諸星玄丈 第159話

JUGEMテーマ:連載第四章 玄丈先生の危機4 獅子身中の虫(4)   すると加藤さんが横から口を出した。「まあ、女のことははいいだろう。少なくともダイヤモンドホープと安井君恵が関係あることは、これでわかったわけだな」「そうですね」 やれ、やれ、どうなることかと思った。 翔太が口を開いた。「上田康子と安井君恵のつながりも、ダイヤモンドホープ社絡みだとわかりました。でも、その先はまだ謎です」「たしかに、よくわからんなあ」 翔太の意見は加藤さんの疑問でもあったようだ。加藤さんは首を傾げながら、つづ...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.07.23 Thu 07:22

ミスター・グリーンと空とぶポニー #17

 ブナの森にかこまれた西スモモ広場へ到着すると、会場はすでにたくさんの参加者たちでにぎわっていました。空とぶポニーをつれた大勢の子どもたち、その家族や仲間たち、応援や見物のためにおとずれた人々、そして、それらにカメラをむける取材陣の面々──。 ちいさな男の子にマイクをつきつける姿がひときわ目立っている、あやしげなリポーターを発見しました。ばかばかしいラメ入りピンクスーツ、にたにたと貼りつけたような笑顔、獲物をねらうかのような舌なめずり──。ミスター・グリーンとフィフィが、その顔を忘れられるはずが...

こどものほん | 2009.07.23 Thu 00:39

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