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整体師 諸星玄丈 第115話

JUGEMテーマ:連載第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(9)  「ガラス窓は鏡のように景色を映すからなのかなあ。あるいは、透明で大きなガラス窓だから気がつかないのかな。ともかく、何かを錯覚して、窓にぶつかってしまうんだろうね」 加藤さんは気の毒そうな顔をした。「人間社会も同じすかね? この先に道があると思っていたら蜃気楼だった、なんてことがあるのかねえ?」 スシボンにしては気のきいたことを言う。 さて、朝食もとったことだし、せっかく下田まで来たんだからひと泳ぎするか。晴美を誘って...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.07 Sun 11:15

整体師 諸星玄丈 第114話

JUGEMテーマ:連載第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(8)  「去年と今年で、違う雑草が庭に茂るようにでしょう?」 晴美が加藤さんの意を察して言った。「そう。たまたま時流に合ったというか、そういうときに出てくるものがあるからなあ」「如雪のようにと言いたいのね?」 晴美がまた推量を加えた。「どうして、あんな男がちやほやされるんだろうなあ。わからんなあ」 加藤さんは首を横に振った。 ぼくはふと思いついて言った。「ぼくには、如雪がどこか無理というか、背伸びしているような気がするんですけど...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.06 Sat 19:47

整体師 諸星玄丈 第113話

JUGEMテーマ:連載 第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(7)「ぼくの場合は、あまり常識にはこだわらない。午後とかぎらず、気分転換したいときとか、あるいは朝でも飲みたければ、そのときがベストだと思っている。ミルクを入れない人が多いらしいけど、入れたければ入れてもいいと思うよ。要は、自分がおいしいと思えればいいんじゃないかな」 加藤さんはポットに熱湯を注ぎはじめた。とたんに微妙なベルガモットとスモーキーな香りが漂ってきた。「三分くらい待つんだ」 そう言いながら、加藤さんは庭の方に眼をやった...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.05 Fri 20:26

整体師 諸星玄丈 第112話

JUGEMテーマ:連載  第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(6)     その晩、ぼくたちは遅くまで話をかわした。床に就いたのは一時をとうにまわっていた。 周囲が静かなだけに、庭の草の下で鳴りつづけるリーン、リーンという虫の音がものすごく大きく響いて聞こえた。ただし、車の騒音と違って、いくら音が大きくても耳障りにならないから不思議だ。虫の音は子守唄のように深い眠りへいざなってくれた。 翌朝は早起き鳥がぼくたちを起こしてくれた。四、五時間くらいしか寝ていなかったが、眼はぱっ...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.04 Thu 09:30

階段 7

JUGEMテーマ:連載 雨が降った。うん千年を数えた頃だった。雨は降り続けた。うん千年も浮き沈みを繰り返した太陽を隠して。大地は湿り、植物が芽吹く。水は溜まり、海が蘇る。100年、雨は続いた。時に嵐になり、竜巻が海水を巻き上げた。俺は吹き飛ばされ海面に叩きつけられ、それでも壊れない。雨がやんで100年ぶりに太陽が顔を覗かせた時、不意に女が呟いた悲しい言葉を思い出した。俺はぷかぷかと水面を浮かんで風の赴くままに流されていった。そして、こつん、と何かと頭がぶつかった。風が強く吹いて俺とそれはすれ違...

よーくらなぱさまてー | 2009.06.03 Wed 21:51

整体師 諸星玄丈 第111話

JUGEMテーマ:連載第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(5)    「こう言うと、みんなあっけに取られているよ」 物知り博士は愉快そうな顔をして笑った。「そうかあ」 晴美も感心した顔で加藤さんを見ている。「付け加えるとだね」 物知り博士はまた口を開いた。どうやらこれが彼がいちばん言いたいことらしい。「漠然とした質問に対する答えほど、頭のよさが表れるものはないんだよ。抽象的な質問を、いかに的確に自分の具体的な状況に引き落とせるかということなんだね。ぼくは人間を評価するさいにも、よ...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.03 Wed 08:48

階段 6

JUGEMテーマ:連載 イカロスの翼はロウだったから、太陽に近付いて融けてしまった。でも太陽が間近で爆発したら人間そのものが融けて跡形も無くなる。光が収まった後の地獄に人間の形は無かった。ある朝、女はボロ布にくるまったまま目を覚まさなかった。先輩を流した川から遥か離れ、元々は海だったのだろう窪地を越えるその途中の朝のことだった。俺はどうにかしてこの女を安らかな場所に眠らせてやりたいと思い、多少軽くなったが綺麗そのままのその身体を抱き上げる。てくてくと歩く。歩いて歩いて、相変わらず浮かんでは沈む...

よーくらなぱさまてー | 2009.06.02 Tue 21:22

整体師 諸星玄丈 第110話

JUGEMテーマ:連載第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(4)  「ぼくは企業研修で、わざと漠然とした質問をすることがときどきあるんだよ」 物知り博士は、ちょっとぼくたちの顔を眺めるようにして言葉を切ったが、またつづけた。「たとえば、会社の企業理念について、考えるところを来週までにまとめてくるようにと言うんだ。そのとき、ほかには何も付け加えない」「それだけじゃ、みんな当惑するでしょう?」 ぼくは首を傾げた。「そのとおり。もっと質問を明確に定義してくれとか、意味をはっきり示せと文句を言っ...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.02 Tue 09:15

階段 5

JUGEMテーマ:連載荒野は何処までも続いていた。風は渇いていて吹き上げられた砂が何処でも舞っている。街は無く、枯れかけた木ばかりとすれ違った。たくさん貰った水も食料も徐々に減っていく。でも俺たちは立ち止まることも引き返すこともしなかった。そうすることは無意味だと理解していたから。でも女はちょっとずつだけど細くなっていって俺は心配になった。心配というのは感情によるものではなく俺の中のシステムが女の身体の変化を常に記録して、減り続ける体脂肪や芳しくない体調に警告を促しているからだ。でも俺には何も出来...

よーくらなぱさまてー | 2009.06.01 Mon 23:18

整体師 諸星玄丈 第109話

JUGEMテーマ:連載 第三章 如雪との出会い4 下田での作戦会議(3)「で、君たちは何を如雪にぶつけるつもりかね?」 加藤さんの問いかけに、晴美とスシボンはうつむいたまま口を開きそうもない。「では、まずぼくから」 異論がなさそうなのでつづけた。「ぼくとしては、如雪がなぜあんなに世間を騒がすようなことをしているのか知りたいと思います。プロセス暗示を使ってまでなぜあんなに騒ぎを起こすのかです」「それは大事なポイントだ」 加藤さんはすぐ賛成してくれたが、晴美が顔をあげた。「問題は、その聞き方だわ」 加...

ブログ小説 整体師 諸星玄丈 | 2009.06.01 Mon 09:14

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