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JUGEMテーマ:自作小説 四色の色彩が滑るように宙を舞った。黒と赤と白と青。黒には赤の幾何学紋様が、赤には白の幾何学紋様が、白には青の幾何学紋様が、そして青には黒の幾何学紋様が、そのそれぞれの表層に描かれている。いや刻まれている。それはまじないの紋様で、マメ小僧たちの魂を構築する回路だった。しっかりと閉じて自律している紋様だった。刃のような角を一本有したソラマメのような形。それが四つの方向から微振動音を響かせながら、渦を巻くように、旋回舞踏しているような軌道で黒い人形に挑みかか...
pale asymmetry | 2020.12.09 Wed 21:47
JUGEMテーマ:自作小説 瑠璃色の鳥居をくぐるたびに、クシュは自身の何かが削ぎ落とされているような気がした。鳥居は身を寄せ合うようにいくつもいくつも並んで立っていたのだ。皆、仄かな瑠璃色の輝きを放っている。大樹の群に支配された光の乏しい森の懐で、その輝きはとても無垢な色彩に見えた。鳥居の表層で時折煌めきが跳ねる。雫のように跳ねた煌めきは、鳥居から離れるとしばらくの間蛍のように明滅しながら漂い、瑠璃色の炎となって燃え上がって消える。冷たそうな炎に見えた。あれは俺から削がれた何かだ...
pale asymmetry | 2020.12.07 Mon 22:00
JUGEMテーマ:自作小説 独特な香が立ち籠める豪奢な応接室にジャーマンはいた。 辺りの家財も腰掛ける椅子も部屋同様に無駄に煌びやかで落ち着かない上、 何より焚きつける甘ったるい薫りも気に入らない。 あからさまにジャーマンは顔をしかめていた。 「おやおやそんなに顔を曇らせて何が気に入らないんだい?」 悪びれた様子もなく(というより悪気がない様子で)対面する青年が問うてきた。 屋敷の主でありこの街唯一の伯爵ーネロリだ。 &n...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2020.12.07 Mon 10:54
JUGEMテーマ:自作小説 森の奥から流れてくる川は、赤錆色をしていた。けれどそれは濁っているようには感じられなかった。その川は赤錆色の鎧を纏っているように、クシュには思えたのだ。するとこの川は今戦っているのかもしれない。都市の人々と同じように、この川も疫病に侵略されているのだろうか。これも薬樹が力を弱めていることが原因なのだろうか。クシュは考え、そしてすぐに考えることを止めた。そんな大きな事象は自分には解らない、と気づいたから。解らないことはそのままで良い。答えを無理に求めても...
pale asymmetry | 2020.12.06 Sun 21:37
JUGEMテーマ:自作小説 都市で疫病が蔓延しているのは、森の薬樹が力を失っているからだ。ある朝、南の空を見つめてお婆が言った。南の方に森があったわけではない。南から風が吹いていたのだ。強い風を受けて、お婆は痛みに耐えるような表情をしていた。クシュはお婆の隣に立ち、同じ方向を見つめた。痛みの原因が見えるかもと思ったのだ。見えたのは分厚い白雲に覆われた空だけだった。その白雲はぎっしりと絡まり合う龍の群のように見えた。あるいは、流体だけで構築された永久機関のようにも思われた。何のため...
pale asymmetry | 2020.12.05 Sat 21:10
JUGEMテーマ:自作小説 茶会は必ず交差点で始まる。いつも突然で、誰もその予兆に気づくことは出来ない。予兆はあるのだけれど、微細すぎるのだ。それはとても微細な旋風だ。指先で摘まみ取れそうなコイルのような風。だからコイル風と呼ばれている。最初にそれを発見した研究者は、実際にコイル風を摘まみ取り、次の瞬間に全身を捻られ粉々にちぎれて霧散した。しばらくの間、半径約二メートルの範囲にその研究者の量子が残留し、賛美歌を奏でていたという。 茶会は、ほとんどの場合大きな交差点で始まる。片...
pale asymmetry | 2020.12.02 Wed 21:48
JUGEMテーマ:自作小説 『ぶつかってくる…!』 春子は思わず身構える。…が、予想していた衝撃は起らなかった。こちらに向かってきた其れをメリッサが 寸でのところ掴み上げたからだ。間近で見ると薄汚れた端切れに身を包んだ小さな子供のようだ。 「ほらほら暴れんじゃないわよ。」 捕まっても尚抵抗しようとする子供をメリッサはもう片方の手で軽くひっぱたく。 すると子供は糸が切れた人形のようにおとなしくなった。どうやら気を失ったらしい。 メ...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2020.12.02 Wed 08:32
JUGEMテーマ:自作小説 ーーカラン、カランーー 「あ、いらっしゃい。悪いけど今日は…ってなんだアンタか。」 店じまいを告げようとしたメリッサは入ってきた人物を見るなり素の態度をとる。 そこにいたのが便利屋を営む弟、ジャーマンだったからだ。 「リサ、頼みたいことがあるんだがいいか?」 「何よぉ、来るなり急にぃ。」 人嫌いなジャーマンが人にものを頼むのは珍しい。 姉のメリッサ相手でもそれは同様だ。 「生きて流れ着いた外物...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2020.11.27 Fri 12:54
JUGEMテーマ:自作小説 「あのぉ、よろしいかな?」 ふいにかけられた声にハッと春子は我に返る。 気が付くとそこにはもう一人の客人が加わっていた。 見たところ東洋的な身なりをした中年の男性だ。 「あ、ごめんなさいねぇロウさん。つい話し込んじゃってぇ。」 ははっと悪びれなく笑い返すメリッサにロウは小さくため息をつく。 やり取りを見る限り、お互いをよく理解しい合う関係なのがわかった。 「そうそう、せっかくだしちょっと付き...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2020.11.25 Wed 18:59
JUGEMテーマ:自作小説 お互いの自己紹介もそこそこに済ませた後、春子とメリッサはのんびりお茶を交わしていた。 メリッサはジャーマン同様独立して店を持っていて昼は探偵事務所、夜はパブを営んでいる。 その探偵事務所というのがやや特殊で、扱う依頼の大半は街で起こる不可思議な案件に偏り それをジャーマンが請け負って解決している。故にはジャーマンとメリッサは “オカルトコンビ”と街では呼ばれていたりするらしい。 「だっさいネーミングよねぇ...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2020.11.23 Mon 21:16
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