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回転騎士の地図記号 #05

JUGEMテーマ:自作小説    勾玉だ、と思った。タツノオトシゴかもしれない、とも思った。胎児かな、と考えたりもした。もし胎児だとしたら、それは恐竜の胎児かもしれない。そんな気もした。いやそれならば恐竜ではなく恐竜によく似た生命体と言うべきだろう。胎児なのだから。そしてそれは選ばれた胎児だ。頭に冠を戴いていたから。まばゆく煌めく王冠、まばゆすぎて色彩を感じ取れない光冠だった。その光冠は銀河を結晶化したもののようだった。一体何者に、何者たちに選ばれたのだろう。それともその胎児自体が選ん...

pale asymmetry | 2020.04.21 Tue 22:04

「君待ち橋の約束」 1、ある曇天の日

JUGEMテーマ:自作小説 ある記憶の物語    「君待ち橋の約束」    僕の住む町には、「君待ち橋」という名前の橋がある。 名前の由来は知らない。一見なんてことない、簡素な橋だ。 橋の下を流れる川の水も適度に汚い。 時々、鴨やら白鳥やらが、泳いでいるのを見かけるが、 僕は、その度に申し訳ない気分になる。   勝手に人間の都合で川を汚し、豊かであるはずの自然を破壊し、 ほかの生き物たちに迷惑をかけているにもかかわらず、 彼らは、そのことを恨みもせず、不思...

君待橋の約束 | 2020.04.20 Mon 13:50

回転騎士の地図記号 #04

JUGEMテーマ:自作小説    生命体の死は熱力学第二法則により不可避だ。エナジーの立ち居振る舞いと、その品格に関する法則によって。しかしこの法則は、どの辺りのエリアまで、どの辺りのスケールまでを守備範囲としているのだろうか。例えばこの惑星。もちろんそれはカバーしているだろう。例えば私の世界全体。それもカバーしているだろう。私が知っている宇宙はどうだろう。私が知る範囲ではカバーしていると思う。では私ではない誰かの世界。あるいはその誰かが知る宇宙ならどうだろう。こうなるともう怪しくなっ...

pale asymmetry | 2020.04.19 Sun 22:20

回転騎士の地図記号 #03

JUGEMテーマ:自作小説    風は色彩を持たない。光が風を彩色しているだけだ。風景とはのその文字が示すとおり風のありさまだから、目に見える世界は風が撫で回しているから色を持つのだろう。時間が止まれば世界は闇だ。というか世界は色を失う。その色には透明も含まれる。それはそうだ。時間が止まれば風が動きを止めるから、何も撫で回せなくなるし、光がつまり光子が動きを止めるから風が彩色されることもない。世界が目に見える状態を維持するためには、風と光は必須のリソースだ。しかし彼らが世界を形作ってい...

pale asymmetry | 2020.04.16 Thu 21:38

回転騎士の地図記号 #02

JUGEMテーマ:自作小説    境界なんてだいたい斑だ。つまり境界線なんて存在しない。そこは奔放に滲みが広がるエリアで、自分が二つのフィールドのどちら側にいるのかなんて解らないものだろう。あるいはどちら側にもいると言えるだろう。どちら側にもいないと言うことは難しいだろう。私が生命体として利己的である限り。というようなことを、私はバス停のやたらと長くやたらと硬いベンチシートにだらしなく腰掛けて考えたりしていた。バスを待っていたわけではない。というか、待っていても当分の間バスは来ない。こ...

pale asymmetry | 2020.04.15 Wed 22:26

回転騎士の地図記号 #01

JUGEMテーマ:自作小説    生命は宇宙から飛来したのだそうだ。でも飛来したのは多分短いコードに過ぎないだろう。それは生命と言うよりは生命の種子だろう。それが自身を複雑化してインフォメーションに変貌したのだ。それが進化だったのかどうかは疑問だと思う、私は。インフォメーションに、生命の種子から生命体に移ろいだことによって、コードの頃に確かに有していたはずの自由、変幻自在の自由を失ってしまったように思えてならないからだ。いや絶対に失っている。私たちは不自由だ。不自由すぎる。ゆるやかに空...

pale asymmetry | 2020.04.14 Tue 22:16

回転騎士の地図記号 #00

JUGEMテーマ:自作小説    最強の世界には、最強の敵が必要だ。あるいは最狂の世界には、最恐の敵が必要だ。こういう合わせ鏡は無限を生み出すことにしかならないから、結局途方に暮れることになる。それはそれで、ときには愉しく感じることもあるのだけれど、私の時間は有限だからいつもいつも合わせ鏡で悪魔を取り出すわけにも行かない。つまり私はそこまで退屈してはいないということ。目まぐるしく忙しい日々を過ごしているわけではないけれど、例えば今日や明日に実行するべきだろうと思われる事象はいくつもある...

pale asymmetry | 2020.04.13 Mon 22:27

四月十一日〜多分続かないやつ一話〜

JUGEMテーマ:自作小説     動画は作って低クオリティでも満足したのでそのシナリオをぶつけます多分これから一生動画を作ることはない字幕入れが世界で一番めんどくさいと思う                   …………ひゅうひゅうと風が吹いている。   ひらひらと裾が後ろへ引かれ、何の恨みがあるのか風は私をどんどん押しやっていく。踏ん張ってみたが……というか踏ん張るような動作を取っ...

My First JUGEM | 2020.04.11 Sat 17:16

DonGun -後編-

JUGEMテーマ:自作小説    それは漆黒の巨大な鉾だった。それが風景をわっさわっさと揺さぶりながら近づいていた。比喩ではない。本当にその鉾が動くたびに、それの周辺の空間が幾ばくか歪んだのだ。なんと言えば良いのだろう。その鉾は実在するもとして確かに見えているけれど、違う時空に存在しているような、その時空が何かの作用でこの世界の時空と重なっているような、そんな感じだった。つまりその鉾はこの世界には存在していないのだ。違う場所での存在が、この世界と先鋭的に絡まって、この世界を移動している...

pale asymmetry | 2020.04.04 Sat 22:27

DonGun -前編-

JUGEMテーマ:自作小説    ピカピカのスーツの銀色が眩しくて、少し恥ずかしかった。「飾りがなくて寂しいね」とお祖母ちゃんは言ってたけど、スーツの全部が飾りのようなもので、これ以上に何を飾り付ける必要があるのだろうと、僕には思えた。でもお祖母ちゃんはきっとお祖父ちゃんのスーツ姿を思い出しているのだろう。するとお祖父ちゃんはこの銀ピカのスーツに飾り付けをしていたのだろうか。どんな? 想像もつかない。クラントストル方程式を紋様化して飾っていたりしたのだろうか。それならきっと重かった...

pale asymmetry | 2020.04.03 Fri 22:06

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