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Counter anchor #05

JUGEMテーマ:自作小説    まっすぐに伸びる路地は、墨色の石畳だった。そしてその路は、遥かな前方で緩やかにカーブを描いて昇っていた。路は空を通り越して、宇宙へと伸びている。どこまでもどこまでも伸びて、始まりの地点に接続されているのかもしれない。それともそこは、終わりの地点か。きっとここは底なのだろうな。そう思って振り返ってみると、案の定背後の路も遥かな先で上昇している。その路もきっと、前方の路と同じ地点に接続されているのだろう。閉じている、というよりは裏返っている感じだろうか、こ...

pale asymmetry | 2019.11.24 Sun 21:55

Counter anchor #04

JUGEMテーマ:自作小説    たぶん今も、目には見えない誰かが、あるいはその存在が都合良く曖昧で、光を光のまま纏ってしまう何者かが掃除をしているのではないだろうか。その建物の内部は、それくらい清浄な空間に思えた。清浄すぎて、息をするのが少し怖くなる。僕の呼吸が、この空間を汚してしまうのではないかと思えて。そう思えてしまうということは、僕はこの空間を汚すことを禁忌だと感じているのだろう。それはやっぱり箱に対する想いだろうか。僕は箱に対して、深いイノセンスを願っているのかもしれない。あ...

pale asymmetry | 2019.11.23 Sat 22:28

電話

JUGEMテーマ:自作小説   嘘つき。   力なく溢れた言葉は、涙を伴っていた。騒ぎ立てる感情は、さまざまな言葉を形にしたがる。でも形になった言葉はたったこれだけだ。嘘つき。嘘つき。嘘つき。子供の癇癪のように、壊れた機械のように同じ言葉を繰り返していたら、滑稽さが目についた。その滑稽な有様は、そのまま自分自身だ。頼りにならない人の言葉をまんまと信じて、心を傷つけている自分の惰弱さが滑稽で仕方ない。   ーーーーどうして信じた? ーーーーどうして信じられた。   ...

My 365 Story | 2019.11.22 Fri 02:56

Counter anchor #03

JUGEMテーマ:自作小説    それは咆哮のようでもあったし、演奏のようでもあった。もし咆哮だとすれば、風を切り裂くスピードで疾走できる獣の咆哮だろう。だたしその獣はスピードだけが頼りで、それがなければあっさりと天敵にやられてしまうような、そんな非力な獣だろう。その四脚の駆動だけを命のよりどころにして、眠ることも食うこともせずにただ走り続けたいと思っているのだろう。実際には、眠らないわけにも食わないわけにもいかないのだけれど。ただ休むことなく走り続けることが出来れば、その疾走は天敵か...

pale asymmetry | 2019.11.21 Thu 22:43

月虹?

JUGEMテーマ:自作小説 短くなる手許の煙草を目を細めて見て、フィルタギリギリまで煙を吸い込む。 煙草一本で目の前の景色を白けさせるのも安くない世の中だ。 少しばかり現状の説明の続きをしよう。 まず、このメタ表現になっている世界表現については、俺の趣味だ。 何故そんなことがなせているのかというと、それは「現代だから」ということにほかならない。 そう、これは日記だ。この文章がどのように世間に流布されているかはわからないが、 これを読んでいるあなたは、おそらくこれが刊行されているものでない限り...

日常的駄文-上向いてれば人生は上々だ【孤髑髏漫】 | 2019.11.18 Mon 23:29

Counter anchor #02

JUGEMテーマ:自作小説    それは箱だった。それは確かに箱にすぎなかった。最初は掌に載せられるくらいの大きさの箱だったのだ。強固に閉じられてはいたけれど、転がせば素直に転がるような、旅に出ればすぐに迷子になってしまうような箱だったのだ。けれど誰かが言いだしたのだろう。このままでは危険なのではないかと。時が来るまで、もっと厳重に閉じ込め、その機能を無効化しなければいけないのではないかと。そして箱は別の箱に閉じ込められた。しかしまた誰かが意見したのだろう。まだ足りないのではないか、も...

pale asymmetry | 2019.11.18 Mon 22:02

Counter anchor #01

JUGEMテーマ:自作小説    響き渡るオルガンの音は、鋼鉄製のクラゲを連想させる。いつ聴いても、何度聴いてもそれを連想させる。透き通るボディの内部には精巧な時計のような細かなパーツがぎっしりと詰まっていて、硬く鋭く揺るぎなく、まるで共食いしているように噛み合い連動しているのに、その身体全体は安穏と怠惰に小躍りしている。そんなクラゲだ。鋼鉄製だから頑丈なはずなのに、今にも砕けてしまいそうな危うさで踊る。優しい人たちは助けてやろうと手を差し伸べるけれど、鋼鉄製だから逆に砕かれて潰されて...

pale asymmetry | 2019.11.16 Sat 22:08

Counter anchor #00

JUGEMテーマ:自作小説    天を翔けているのは何だろうか。目覚めて最初に考えたのはそのことだった。僕はそのとき固く閉ざされた箱の中に収納されていて、だから箱の外の風景を見ることは出来なかった。けれど自分が、自分の納められた箱が、夜にくるまれていることは感じ取ることが出来た。叡智に満ちた夜、その叡智が艶やかすぎて非情な夜に。そんな夜を、何かが翔け回っていたのだ。鳥ではなかった。星も月も隠された闇夜を飛翔することのできる鳥を僕は知らなかったけれど、そんな鳥がいたとしても鳥ではなかった...

pale asymmetry | 2019.11.15 Fri 22:26

月虹 ?

JUGEMテーマ:自作小説   あの日、好きな人が出来たから身辺整理をしようと思ったあの日、 とある彼女が自殺未遂をした。 未遂、と言っても軽いリストカットのような、興が乗ったから切った、ような、 そんな軽いものではなく、当時の医師の話では、場合によっては後遺症が残るほど、だった。 その日からしばらく「彼女」の看病に追われ、気がつけば意中の人は他の若そうな男とくっついていた。 人生ってそんなものだろうな、と思ったけれど、あのとき、あのタイミングでなにかの違和感を感じたのも事実だった...

日常的駄文-上向いてれば人生は上々だ【孤髑髏漫】 | 2019.11.15 Fri 12:59

欠片

JUGEMテーマ:自作小説   「そう。例えるならば、これは欠片だ」   魔法使いがそう言いながら、くるりと水晶に見えるものを指先で回した。 水晶に似た何かは、けれども中心に微かな炎を宿している。   「欠片?」 「そう。はるかなる太古、本当の魔道使いたちが使用していた魔道具のかけら」   それが時を経て、わたしのもとにたどり着くとはなかなか興味深いな、と、魔法使いはいう。 その表情にはなぜか、自嘲の気配が漂っていて、わたしは首を傾げた。   魔法...

My 365 Story | 2019.11.12 Tue 18:42

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