[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]

JUGEMテーマ:自作小説 嫋やかな響きだった。それは中天から降ってきた。ガラスのベルのような音色だとクシナダは感じた。ガラスのベルが綺麗な音色を放ちながら破壊され、永遠に破壊され続けるような響きだと感じた。何度聞いてもそんな風に感じ、砕け散るガラスのイメージが、砕け散る姿のまま停止した時間に閉じ込められるイメージが、彼女に染みこんだ。初めての響き、初めてのイメージ。そうも感じた。それは仕方のないこと。彼女には彼女ではない者が重なっていたのだから。そういう感覚にはもう慣れていた。...
pale asymmetry | 2021.01.16 Sat 22:18
こりゃたまげた、いきなりエンストするとはね。古いわけでもないし、やっぱり暑さにやられたのかな。諦めてロードサービスを呼ぶ。 JUGEMテーマ:自作小説
慎重にすべき発言 | 2021.01.16 Sat 12:50
その部屋にはその子供以外誰もいなかった。 けたたましい声で泣き喚いている小さな子供の傍に誰もいなかったのだ。 いつもはこんなことはない。 誰かしらが四六時中、入れ代わり立ち代わり見守っている。 その日、偶然、誰もいなかったのだ。 父親は足をとめるつもりも、ましてや部屋に入るつもりも無かった。 ただ、子供は泣いていた。 くすんだ金色、碧い目。 その顔立ちは、自分の妹によく似ている。 自分と同じ顔の妹に。 どうしても自分に似ているとは思いたくない。 息も絶え絶えな赤い髪の子は可愛い。 自分...
SolemnAir | 2021.01.10 Sun 22:43
「これは、また……つくづくエリザとシャロの娘だねえ」 壁にたたきつけられてけろりとしながらエイザは立ち上がる。 ゆらりとシャザはラズの前に立っていた。 傷が開いて血が滴って。 それでも彼女は床に座り込んだ彼の前に立っていた。 そしてその、先ほどまで男の父親がつかんでいた腕をつかむ。 今度は柔らかい指が、優しく。 「シャザ?傷が――」 一度その床を見てラズがその顔を見上げた時だった。 きいいいいいいいいいいいいいいいい 耳をつんざくような高音が鳴り響く。 誰が彼女の名を呼んだか。 魔法...
SolemnAir | 2021.01.10 Sun 18:59
いいか。 そんなにきれいなもんじゃない。 どろっどろのきったない、触りたくもないようなもんであふれてる。 そんなものから目を背けて、その目にきれいなもんばかり映したって 結局、そのきれいさの尺度は違うテーブルの上だ。 同じようなきれいな水を三個比べる時と 明らかに変色して汚れている水、 透明度はあっても変色している水、 飲めるか微妙な水の三個を比べる時、 「きれいさ」の幅が違うだろ。 別にそれだっていいんだよ。 きれいな水の中でどれがきれいだのこれは不純物が混じってるだの 好きに品評会...
SolemnAir//3LOVERS | 2021.01.09 Sat 19:28
JUGEMテーマ:自作小説 父は珍しいものを集めることが好きだった。 伯爵という立場を存分に利用し欲しいものは全て手に入れた。 異国の装飾品、呪術儀式に使う薬、失われた文明の品々、中には不思議な力を持つ人間など 一人の人間の欲望のためにありとあらゆる形でそれらは掻き集められていった。 そこで用意されたのが“旧街”だ。 もとから郊外のため住む者は疎らだったこの土地はやがて“異民の居住区”となり 実質は“伯爵のコレクション場&rdqu...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2021.01.03 Sun 12:00
ここは戦場だ。 弱い者は消される。 強者に取り込まれるか取り入るか。 生まれた時からその階級は決まっている。 それはほぼ覆らない。 主神や女神はまさに霞を喰って生きている。 早い話が捕食を必要としない。 ただ強者に弱者が消される時、次の者がどこかに出現するという。 その絶対数は変わらないということだ。 だが、最弱の神が消されたからといって同等の神が出現するわけではない。 それぞれの神域が乱立しぶつかりあうのがこの世界ヒダマリだ。 それはどこかの異世界のように星を持つわけでも他に生き物...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 21:35
「これでさようならね」 その女は、その男のことが好きだった。 その男もまた、その女のことが好きだった。 立場も身分も相応で、ちょうどいい釣り合い。 ただひとつ、 その家同士の仲が非常によくないことを除けば。 人間も魔獣も竜も、平均寿命を三百年とするこの世界で そのうち青年期は実に二百五十年にわたる。 そのためか結婚というものは青年期を過ぎてから 相続のためだけにするものであって、 共に歩みたい者とは長い時間を婚約という形で契約する。 婚約もあくまでも正式な契約形態であるからには 破棄を...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:20
化物皇子。 ばけものおうじ。 その異名が本名ではないかと思えるほど 広く知れ渡ったそのものの本当の名前はエイザ=ハーン。 柔和な顔立ち、くすんだ黄金色の髪に深い青の目。 その声は高すぎず落ち着きのあるしっとりとしたもので 知能が非常に高く、その記憶力と博識っぷりは世界に轟く。 ハーン大帝国の正妻の第一子であり、 側妻の子である兄二人とは異なり 正統な帝位継承権を持つ将来有望な第三皇子。 完全無欠の皇子さま。 しかし、誰も彼のように成りたいとは微塵にも思わない。 それどころか ”化物皇子...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:19
◆◆◆ 幼い弟はいつも泣き叫んでいた。 いたい、いたい、と。 彼に平穏はなかった。 いつもあらん限りの声でそれを伝えていた。 ◆ 哀れだ、と思った。 可哀想に、と。 小さな弱者がそこに這いつくばることは 妙に高揚感を呼び その昂りが次は罪悪感を呼んだ。 哀れな小さな生き物をもっと哀れにしたい衝動と その必死な小さな生き物を優しく包み込みたい感情が 僕をかき混ぜてぐちゃぐちゃにしていた。 ◆ 弟はその絶叫の中に世界をみていた。 それは広く、僕より遥かに拡がり、 弟がみる世界は途方もなく大き...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:17
全1000件中 631 - 640 件表示 (64/100 ページ)