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勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第二話 龍の宿る岩(2)

JUGEMテーマ:自作小説 私はタヌキだ。 モフモフした尻尾とモコモコした体毛のタヌキだ。 だから当然お父さんとお母さんもタヌキである。 でも普段は人間の姿で生活してる。 なぜならタヌキは化けるのが得意だから。 でもどのタヌキでも化けられるわけじゃない。 そしてタヌキじゃないからって化けられないわけでもない。 世の中には変わった動物がいて、化けたり人と話したり不思議な術を使ったりする。 そういう動物は霊力を宿していて、そういう動物のことを霊獣って呼ぶ。 私はタヌキの霊獣だ。 霊獣は意外に多くて...

SANNI YAKAOO | 2021.07.07 Wed 15:32

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第一話 龍の宿る岩(1)

JUGEMテーマ:自作小説 私には婚約者がいる。 だけど今は会えない。こことは別の世界で住んでるから。 そして私はまだその世界へ行くことは出来ない。 来年の春、桜が咲く頃までにやり遂げないといけない事があるんだ。 そうしないと彼のいる世界へ戻れない。 だから頑張らないといけない。だって約束したんだから。 来年の春には戻るって。一緒に桜を見ようって。 ぜったいに戻らないと・・・・。 今日も早起きをして、出かける支度をして、いつもの場所へと歩いて向かった。 深い深い山の奥にある大きな岩と、その近...

SANNI YAKAOO | 2021.07.06 Tue 13:27

となえざんまい #03

JUGEMテーマ:自作小説    万華鏡を覗くと必ず酔ってしまう。昔からずっとそうだった。  それは紋様の全体を捉えようとして、逆に紋様に私の全体が捉えられてしまうせいだ。鏡の内に電子雲のように束縛された紋様が、その腹癒せに私を束縛しようとして、それに私は逆らえない。どうして他の人たちはそれに逆らえるのか、私には解らなかった。私は、自身を紋様に束縛させないために揺さぶるしかなかった。紋様を固定しないために私自身の奥底の要を揺さぶるしかなかった。それで、酔ってしまうのだった。それならば...

pale asymmetry | 2021.06.09 Wed 21:59

となえざんまい #02

JUGEMテーマ:自作小説    夜の月面を思わせるくらいに寒い部屋だった。新月の月は空ではなく、ここで冷笑していたのだと思った。  壁際には水晶が並んでいる。碧色の水晶、翠色の水晶、紫色の水晶。全ての壁際にひしめき合うように並んでいたから、部屋が狭く感じる。さらにそれらの水晶たちを着飾るように、金と銀と紅の短冊が天上から賑やかにぶら下げられていて部屋の余白を削り取っていた。エアーコンディショナーの稼働音は耳につくほどだったけれど、水晶はともかく短冊は微塵も揺れていない。どういう仕掛...

pale asymmetry | 2021.05.24 Mon 22:22

となえざんまい #01

JUGEMテーマ:自作小説    陰性の雨が、しゃならしゃならと舞っていた。  当然夜は暗雲に覆い被され、星々も月も見えない。まあ新月の夜だったから、月はもとから見えはしないのだけれど。そういう天然の光りの代わりに、斜め上方の家々の窓から漏れ出る明かりが瞬ぎ、川端の遊歩道を控えめに照らしていた。ただそれは本当に控えめすぎて、加えて遊歩道の面が石畳だったから、私の足取りはそろりそろりと畏まらざるを得なかった。こんなことなら、表玄関に通じる側の道を選べばよかった。つい懐かしさにかられて川...

pale asymmetry | 2021.05.22 Sat 22:04

Corundum Spirit Demon #07

JUGEMテーマ:自作小説    世界は、発情したカレイドスコープだった。  私は蒼玉に強く抱かれていた。そして、蒼玉を強く抱きしめていた。私は激しく燃え上がったままだ。橙の炎を噴火のように天に向けて放っている。それは激しく渦巻き、世界の何もかもを巻き込んで奪い取ろうとしているかのようだった。私を抱く蒼玉もまた燃え上がっていた。冷たい碧瑠璃の炎。それが戯れるように、あるいは諭すように、私の炎に巻き付いている。私の炎が螺旋を描き、蒼玉の炎も螺旋を描いた。ああ、これは二重螺旋だ。私たちは...

pale asymmetry | 2021.05.01 Sat 21:53

「恥を知り端を折れば多知を識る」

きちんと編み込まれた長い金髪はいつも肩から前方に垂れ下がり 胸を越えたところまでたどり着く。 真っ直ぐきれいな姿勢はお手本のよう。 身にまとう服は全てどこから見ても豪華すぎず華美すぎず しかし確かに値が張るものであることがわかる。 彼はいつも穏やかに微笑みを絶やさず、 立場がどれほど違っていようとも、 その話を親身になって聞くし、見下ろすこともない。 非常に優秀な成績でありながらも、勤勉で、 手を抜くタイプではない。 とはいえ、全力投球といった熱血ではなく、 時にはわざと手を抜いて見せて...

SolemnAir//3LOVERS | 2021.04.25 Sun 22:29

Corundum Spirit Demon #0b

JUGEMテーマ:自作小説    絡繰り人形のような屋敷だった。見えない発条や歯車で、屋敷は目まぐるしく変化しているのだ。しかしその変化もまた透明だった。透明だったから臨界がなかった。どこまでもどこまでも変化し、それは世界を基底部から組み直していく。異なる形へと過剰に加速する世界のただ中にいると感じることが、捉えどころのない恐怖を湧き上がらせる。それはすなわち異境だった。この場合の異境とは、起伏と斑を切り取った記号ではなく、起伏と斑に色づけられた心のことを指す。そういう場所に少女はいた。...

pale asymmetry | 2021.04.15 Thu 21:39

Corundum Spirit Demon #0a

JUGEMテーマ:自作小説    宵の裾を引き摺る空気は、ザラメの感触だった。あるいはそれは零れ落ちる無数の金平糖の感触だったかも知れない。少年はその感触に促されて覚醒した。もっとも少年がその感触をザラメや金平糖だと認識したわけではない。少年はザラメも金平糖も知らない。彼はそれらのない時代を生きている。だからこれはアナクロニズムではない。ザラメや金平糖のようだと感じたのは少年ではなく私だ。私はだから当然、ザラメや金平糖を知りうる時代に生きている。生きているはずだ。あるいはそれは生きてい...

pale asymmetry | 2021.04.04 Sun 21:55

Corundum Spirit Demon #06

JUGEMテーマ:自作小説    私は墜ちた。悠久の時を墜ちた。悠久の時を一瞬で墜ちた。本当に墜ちているだろうか。その速度が鋭すぎて、静止しているようにも舞い上がっているようにも感じられる。あるいは私は駆けているのかも。駆け墜ちているのかも。つまり私は、私の意志で墜ちているのだ。それは確かなこと。墜ちることは私の躍動が生み出した、紋様だった。けれど視界が闇に満ちていたので、生まれた紋様は直ちにその闇に取り込まれて見えない。と思ったら、私は固く目を閉じていることに気づく。私はギクシャクす...

pale asymmetry | 2021.03.06 Sat 22:14

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