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勇気の証 第八話 猫を迎えに(2)

JUGEMテーマ:自作小説 陽は沈み、遠い空にだけわずかな光が残っている。 暗くなる前に東京へ着くどころか、夜ギリギリになって長野へ到着した。 あのあと三ヶ所も渋滞している所があったので、これでもまだ早く着いた方かもしれない。 目的地である渋温泉へ向かった私たちは、どこか空いている宿がないか捜していた。 今から用を終えて東京へ向かっても仕方ない。 友人にそう連絡したら『多分そうなると思ってたよ』と笑われた。 『マナコのことだから、途中に困ってる人や動物がいたら助けるんじゃないかと思ってたよ。...

SANNI YAKAOO | 2019.08.23 Fri 10:35

NO

JUGEMテーマ:自作小説   ---------------約束など、覚えていないのでしょう。   「息災か」 「陛下こそ」   たったそれだけだ。夫たる国王と交わした言葉は。 なんてそっけない。自分でもそう感じているし、夫もそう感じているとわかっている。   けれども他に言葉など見当たらない。見つけられない。 仮面のようにこわばった表情を変える方法を見つけられないように。   いったい、いつからこうなってしまったのか。 なぜ、こうなってしまったのか。 &nb...

My 365 Story | 2019.08.23 Fri 08:17

女子会がやりたくて(同窓会編)第六話

ピンポーン。ピンポーン。 エリカ先生が出ていったばかりだと言うのに、誰かがすぐにやって来たようだった。ピンポーンが二回続いたので、マンションのエントランスではなく玄関の前にあるインターホンから押されたものだった。エリカ先生が忘れ物をして戻って来たのかも知れないと思い、玄関の扉を開けてみることにした。 続きはpixivにて 女子会がやりたくて(同窓会編)第六話   *不定期連載です。   JUGEMテーマ:自作小説

あやかる | 2019.08.22 Thu 18:28

YES

JUGEMテーマ:自作小説   -------------約束を、覚えているか。       この時代、王の仕事とは存外つまらないものだ。 議会によって決議された書類に、王の名前で印を押す。 そんなものだ。   はるかな昔、それこそ英雄譚に登場する時代であれば、能動的な仕事は多かっただろう。けれどもいくつかの革命を超えたこの時代には、王の仕事は単調なものに成り果てている。しかたあるまい、時代の主役はもはや王侯貴族ではなく、統治してきた民なのだから。代わりに王はささやか...

My 365 Story | 2019.08.22 Thu 11:52

勇気の証 第七話 猫を迎えに(1)

JUGEMテーマ:自作小説 日本という国はよく出来てるなあと、海外から帰ってくると感心する。 他の国では首都に相当するほどの街がいくつもあるんだから。 しかも山林がほとんどの中、限られた平地に機能的に収まっている。 それでもって交通機関も発達しているから、都市から都市への移動も便利だ。 私がボランティアに行っている国では、予定していた電車が次の日に来ることさえある。 それでも苦痛に感じなかったのは、あの広大な大地と、雄大な時間のおかげかもしれない。 誰もがのんびりしているし、時間に急かされる...

SANNI YAKAOO | 2019.08.22 Thu 10:19

ジャンプ!

JUGEMテーマ:自作小説   我々はなぜ、空を飛ぶのだろう――――。     強い風が吹き抜ける絶壁で、俺はアンニュイにつぶやいてみた。 はるか上空、さわやかに澄み切った青空では 仲間たちが自由に飛び回っている。ぎゃうぎゃう、と騒いでいる声がここまで届いてくるんだ。ああ、楽しそうだなあ。はるか遠くまで見通せる眼力で見守っていると、高度を下げて俺に近づいてきた仲間がいる。比較的親しく付き合っている、やや小柄な純金色のドラゴンだ。つぶらに澄んだブルーアイズをまっすぐに俺に向け、 ...

My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:17

イエー!

JUGEMテーマ:自作小説   「あたしと付き合ってくださいっ!」 「断る」   すらりとした長身が前を歩いていた。先輩だ! 気づくと同時にダッシュをかけていた。 先輩は気配に敏い。声をかけるより先に振り返った。深いチョコレート色の瞳にあたしが映った次の瞬間、いつものように大声で交際を申し込む。直ちに返ってきた返答は拒絶。がっくりとあたしは肩を落とした。でもまわりは、わっと盛り上がった。負けたー、だの、まだまだかー、というにぎやかな声が交差する。 あたしの告白はすっかり名物と...

My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:15

自慢のコレクション

JUGEMテーマ:自作小説   ひさしぶりなんだ。 時間がようやく空いたから、長く訪れなかった場所に足を向けると、≪彼≫は挨拶もそこそこに語り始めた。こちらの困惑など、まったく気にもしない。   一方的にべらべらと話している≪彼≫を眺めて、懐かしい反応だなあと感じた僕は、さらに記憶を探った。ええと、≪彼≫がいま、夢中になっているものは何だったっけ? でも≪彼≫に示された壁一面を見て思い出した。   ああ、そうだった。かつて≪彼≫を苛めた存在の、――の収集。   それがいま、≪彼≫が夢中...

My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:14

泣いて泣いて泣いて

JUGEMテーマ:自作小説   すん、と鼻をすすった。なんだかすっきりした気持ちがある。こんなに泣いたの、どのくらいだろう、と考えながら、ピー、と云う電子音を聞いた。あ、炊けたんだ。セットしておいた炊飯器を開けば、ほわほわ、と蒸気とお米の匂いが立ちのぼる。ん、いい匂い。ちょっと強ばった頬を動かして微笑んだあと、ぱたぱたと動いた。水をお椀に汲んで、塩と梅干を小皿に取り分けて、炊き上がったばかりのごはんを濡れた手のひらにのせる。   あ、ちち、とごはんをはずませながら、こわごわ、おむ...

My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:12

気配

JUGEMテーマ:自作小説   ことこと、と鍋がやさしい音で揺れている。 ふわりと漂うスパイシーな香りに、私は満足に微笑んだ。今日はあちらの世界の具材を使った煮込み料理を作っている。≪彼≫はこちらの世界の料理も好んでいるけれど、やはりいちばんはあちらの世界の具材だ。舌が馴染んでいるのだろう。美麗な面持ちを子供のように輝かせて、ぱくぱくと食べる。黙っていれば貴公子であるのに、どうしてあそこまで食欲旺盛なのか。もっとも私はそんな彼が嫌いではない。ううん、むしろ、   (――――だめ) 思...

My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:11

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