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「ほら、車も小さい訳だし、あんまり私をテオドアのような貴族とは一緒にしないでくれよ?」 「車の大きさは関係ないじゃないですか」 「じゃあ、イタ車※に乗ってる私のことは、テオドアと同じように思わないで?」 ウィリアムがテオドアの貴族趣味をからかうと、久義も思わず笑ってしまった。 「くく、ウィルって……本当に思っていた人とは違いますね」 「そう?君の目に私はどういう風に写っていたのか、怖いね」 「そりゃ、いつも顰めっ面で、テオドア様より怖い方だと思っていました」 「ヒースを怯え...
真昼の月 | 2022.11.12 Sat 22:20
「本当にもう帰ります!俺、仕事を残してきてるんです!」 「しょうがないな」 残念そうに溜息をついたウィリアムは、それでも腕の囲みを解こうとしない。 「じゃあ、ウィルって呼べたら帰してあげよう」 「……!」 思わずギッと睨んでしまったが、それでもウィリアムはニヤニヤと笑っている。これはダメだ。ダメな奴だ。くそ!! 「分かった、ウィル!これで良いんだろ!?」 「よくできました」 そう言うなり、ウィリアムはパッと両手を壁から離して、肩の脇でばんざいのポーズをした。 ...
真昼の月 | 2022.11.05 Sat 16:51
「そ……そういう事を言う方だとは思いませんでした」 真っ赤になった久義に、思わずウイリアムは声を上げて笑った。 「あははは、素直な良い子だ」 「俺は子供じゃありません!」 「知ってるよ。もう二十五なんだろう?」 「そうです!」 「くくく、私より三つも子供だ」 そう言うなり、ウィリアムは久義の髪をそっと撫で、それから頬を指先でさらりと撫でた。 「……ウィ、ウィリアム様……」 「ウィルで良い」 「貴族の方はご家族間やよほど親しくないとあだ名では呼...
真昼の月 | 2022.10.29 Sat 23:59
「次はこっちも見てくれるかい?水草や流木のレイアウトに凝ってみたんだ。ああ、ワキンやデメキンはこっちに種類ごとに入れていて、ブリーディングもしているんだよ」 なるほど、機能的な水槽には、種類毎に金魚が分けられていた。まるで金魚の水族館のようだ。 しかもそれらの水槽は、中に入れる砂利の色や大きさ、流木や石、水草などにもそれぞれ違う工夫を凝らし、どれも見ていて飽きない作りになっている。 「本当に綺麗ですね。時間を忘れてしまいます」 「どの水槽が好き?」 「そうですね……どれも...
真昼の月 | 2022.10.22 Sat 22:36
◇◇◇ ◇◇◇ フィッツガード伯爵邸は、南に向かって本館が建ち、西翼と東翼がせり出すコの字型の城だ。その本館と西翼をホテルとして貸し出し、フィッツガード伯爵家族は東翼に居住している。 ホテル業は専門の業者に任せ、伯爵一家は経営には関わらず、使用料だけを受け取っているのだそうだ。 「庭や屋敷の改装も、経費になるからと喜んでいるようだが……どのみち費用がかかることに変わりはないのだけどね」 そう言って、ウィリアムは実家である城を見上げて小さく嗤った。 かつて...
真昼の月 | 2022.10.15 Sat 22:05
◇◇◇ ◇◇◇ マリエ夫人からお茶菓子を頼まれたのは、それからすぐの事だった。ロンドンの知人を招いてお茶会をするのだという。 「本格的なお茶会じゃないんだけれど、せっかくロンドンから来てくれるなら、久義さんのお菓子を食べていただきたいじゃない?」 そう言って、夫人はバーマストン伯爵を通じて、お菓子の発注を架けてきたのだ。 伯爵が間に入ってしまえば、久義も、ティールームのスタッフも、それを断る事などできはしない。 「全く……フィッツガード夫人は甘えすぎなん...
真昼の月 | 2022.10.08 Sat 23:07
元々、ロンドンで証券アナリストとして働くウィリアムは、金魚の世話があるからと週末だけには屋敷に帰ってくるが、普段はロンドンにフラットを借りて暮らしている。だから、父と真理江が二人でいる所を見る機会はずっと少ないのだ。本当なら、屋敷に帰ってくるのは必要最低限にしたい所だが……屋敷の金魚たちを不慣れな使用人に任せっきりにする訳にはいかないから、週末は帰ってこざるを得なかった。 日に日に屋敷が変わっていく様子を見るのは、父が母を忘れたがっているようで、母の面影が日ごとに消されて...
真昼の月 | 2022.09.25 Sun 00:32
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムはテオドアの部屋で、テオドアと向かい合って座っていた。学生時代から仲の良い二人ではあるが、大学を卒業してから、これほど密接に行き来していた事はない。 伯爵は、バーマストンへの来訪にはいつもウィリアムを伴っていた。「ウィリアムもテオドア君と積もる話しもあるだろう」などと言っているが、この機会に息子と夫人を共に出かけさせ、二人の距離を縮めたいという魂胆があけすけと覗える。 確かにテオドアとの時間は有意義だが、それにしても二人はバーマストン伯爵家に甘えす...
真昼の月 | 2022.09.17 Sat 22:16
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML (前の記事)← 番、つがえば番う時!(ポリアカ編) 警察学校の自由時間はほとんど無いと言っていい。 日々の課題を片付け、寝るまでのほんの僅かな時間がそれだった。 ようやく訪れた安息の時間。 その時、昌己はたまたま一人だった。 慣れない報告書を書き上げた身体はいつになく火照った感じがして、窓を開けるとちょうど晩春の夜風が心地よく頬を撫でていった。 都会の喧騒から離れた警察学校の周...
時の過ぎ行くまま(Rink\'s Cafe別館) | 2022.09.12 Mon 04:26
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML →番つがえば(次の記事) 2022年9月4日のJ・GARDEN52で配布した オリジナルオメガバース小説の無配本です 一部ブログ用に書き直しております。 紙本だとあまり改行とか入れないのですがブログは別です! 横読みなのでちょっとスペースを入れさせていただいております! 次の春庭で本編を出す予定ですので 試し読みだと思ってお付き合いください! ◆この物語のオメガバース設定について◆ 全ての生き物は種の保存の為に環境に応...
時の過ぎ行くまま(Rink\'s Cafe別館) | 2022.09.11 Sun 04:38
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