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「ただいま〜、パパ」 「ご飯作ってくれるんだって?」 「いっつもお父さんにばっかり作ってもらってるから、休みの日ぐらいは俺達が頑張りますよ!」 三つもあるエコバックから食材を取り出しながら、二人は楽しそうに今日の報告をした。 もちろん、優吾と会っていたというのは内緒だ。 「今日は久し振りに上野の博物館に行って、帰りに御徒町でお刺身買ってきたんですよ。でもダメだね〜。あそこ行くと、必要ない物まで買ってきちゃって」 「おじさん達、死ぬほどおまけしてくれるからね〜」 ...
真昼の月 | 2022.03.11 Fri 22:34
◇◇◇ ◇◇◇ 今日は朝から寧音と大成が出かけていて、この広いマンションの中に、奏と大河は二人きりだった。 ギリシアで二人は互いの気持ちを確かめ合ったけれど、帰りの件で奏の様子がすっかり変わってしまった。そのせいで、まるで関係がリセットされてしまったように、奏は大雅に対してまでよそよそしく、自分の中に沈み込んでしまっている。この状況を、大雅が心配しない訳がなかった。 ひょっとして、大成と寧音が二人で出かけたのは、自分と奏を二人きりにさせてく...
真昼の月 | 2022.03.10 Thu 23:00
◇◇◇ ◇◇◇ 優吾と別れてから、大成は優吾のアドバイス通りに、寧音を動物園に誘った。 「……動物園より、科学博物館の方が良いわ」 「お姫様のおっしゃる通りに」 大成は笑いながら行き先をすぐ隣の科学博物館に変えた。優吾の言ったとおりにするのが癪だったのかもしれないが、寧音は昔から、恐竜の化石や動物の骨格標本が好きなのだ。 館内は静かで、外の暑さが嘘のようだった。頭上を泳ぐマッコウクジラの骨格標本は、特に寧音のお気に入...
真昼の月 | 2022.03.09 Wed 22:25
◇◇◇ ◇◇◇ 寧音が「パパに内緒で会いたい」と連絡を取ると、優吾はすぐに時間を作ってくれた。キャンプの時には気まずい雰囲気になってしまったが、寧音を我が子のように思っている優吾にとっては、「寧音とケンカするのなんか、いつもの事だろ」という事になるらしい。 寧音も優吾も、日曜日の休診日にシフトが入る事はあまりないので、二人は揃って優吾に会いに行った。 「よう。新婚旅行、どうだった?楽しかったか?あ、お土産ありがとうな」 「ううん。それより、今日は優吾ちゃ...
真昼の月 | 2022.03.08 Tue 22:59
◇◇◇ ◇◇◇ とりあえず、四人はアッパークラス用のラウンジに入ることにした。LOKIはミラノの空港では、当然VIP待遇だ。LOKIの姿を見たスタッフが、ラウンジの奥にあるエグゼクティブルームに四人を案内した。 「……今の、ヴァイオリニストの高橋響じゃないか?」 ソファに落ち着き、飲み物がサーブされると、大雅が小さく口を開いた。 「高橋?」 思わず、寧音が聞き返す。 兄さんと呼んでいた。それ...
真昼の月 | 2022.03.07 Mon 23:08
皆様、昨日もお知らせしたとおり、本日からは少し展開が変わり、少々ハードな内容が出てきます。 ネタバレになるといけないのであまり詳しい事はかけないのですが、地雷にされている方もいると思われます。 もし明るいお話のままハッピーエンドを迎えるのがお好きな方は、ここでおしまいにしてしまったほうが良いかもしれません。 この後第二部もお届けする予定なのですが、ここで一度おしまいにして、第二部に進まれても全く問題はありません。 ということで、大丈夫な方だけ続きをお読み下さい。 ...
真昼の月 | 2022.03.06 Sun 22:24
「分かってるのよ。ちゃんと分かってる。パパがお兄さんを好きになることだって、ずっと前から分かってたの。だって、パパはお兄さんと一緒にいる時だけ、どうしたら良いのか分からないって顔をしてたもの。私のことを見てなきゃいけない。私のことを一番に考えてなきゃいけない。でも、お兄さんに目が行っちゃうし、お兄さんのことを考えちゃう。だからパパはいつも、どうしたら良いのか分からなくて困ってた。……分かってるんだよ。分かってるの」 しばらく、寧音は大成の胸の中でグッと何かを堪えるよ...
真昼の月 | 2022.03.05 Sat 23:47
大雅は奏の手の上に自分の手を重ねて寧音を見つめた。真摯な瞳だった。反射的に何か言い返そうとしたが……寧音は、その言葉をすぐに飲み込んだ。その代わりに口から出て来たのは、ひどく切ない涙声だった。 「……私のパパなの……。ずっと、ずっと、私だけのパパだったの。パパには私だけだった。だから……だから、パパが一番好きになった人で、パパを一番好きになってくれた人にしか、パパはあげられない……」 涙と共にそう呟く寧...
真昼の月 | 2022.03.04 Fri 22:35
◇◇◇ ◇◇◇ 「パ、パパっ!?」 レストランに入り、奏の顔を見るなり、寧音がおかしな顔をして小さく叫んだ。 「ん?おはよう、寧音。よく眠れた?」 「ええ、おかげさまでぐっすり……そうじゃなくて!!」 寧音が何か言おうとするより先に、ウェイターがテーブルを回ってきて、朝食のオーダーを聞き、紅茶やコーヒーをサーブしていく。その間、寧音は何か言いたいのをグッと堪えるように、ぷるぷる震えながら奏の顔をガン見していた。 四人...
真昼の月 | 2022.03.03 Thu 23:19
奏はなんとか体勢を整えると、できるだけ自然に見えるように体を起こし、大雅に向かってぺこりと頭を下げた。 「……取り乱してごめん。その、昨日は、ここまで運んでくれたんだよな?重かったろう?」 「いや、全然。羽かと思った」 「まさか」 小さく笑うと、もう一度キスされた。 「ん……」 最初は柔らかく笑いながら。でもそのうちに、キスに熱が篭もってきた。 「ふ、んん……」 「可愛い。奏さん、あんた最...
真昼の月 | 2022.03.02 Wed 22:34
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