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「いつまでもあんな日本人に振り回されているつもりだ。お前は日本人が嫌いだったんじゃないのか」 思わずそう声をかけると、ウィリアムは携帯からテオドアに視線を動かし、意外そうな顔をした。 「私は今迄に一度も、日本人が嫌いだなんて言ったことはないぞ。ただ父が義母の為に、母との思い出をメチャクチャにすることを許しがたく思っているだけだ」 そう言って、また足下に視線を落としたウィリアムをの眉は、辛そうに歪んでいた。テオドアはそんなウィリアムに鷹揚に頷いて見せる。 「ああ、...
真昼の月 | 2023.10.21 Sat 22:12
◇◇◇ ◇◇◇ テオドアは今日、フィッツガード伯爵からの招待で、バーマストン伯爵夫妻や久義の母謳子と共にフィッツガード邸を訪れていた。謳子も招待されたのは、先日届けてくれたお節料理に対する返礼のようで、お茶会の中でも最も格式の高いアフタヌーンティーへの招待となったようだ。 もっとも、いつも通りウィリアムとテオドアは両親達とは別行動で、そのお茶会には参加していないのだが。だが先ほどから、ウィリアムの私室で向かい合っているウィリアム本人は心ここにあらずで、それがテオドアを少々苛立たせて...
真昼の月 | 2023.10.14 Sat 22:08
『……なぁ、久義。ゆっくりしていくんなら、少し真面目にロクロでも回していくと良い』 『うん、ありがとう』 久義の作る和菓子をいつも手放しで褒めてくれる伸吉だが、それでも何か少しでも良いから作陶するようにと久義に勧めていた。久義も毎年、必ずロクロに向かって某(なにがし)かを作っていく。ロクロを回して土に向き合うことは精神統一にもなるのだろう。東京の店とはまた違うピリリと張り詰めた空気。土に向かっている間は、己の内と対話しているような気持ちになった。 『お前の和菓...
真昼の月 | 2023.10.07 Sat 22:02
『ありがとう、ちゃーちゃん!』 『あ、これ雑誌で見たことある!ちゃーちゃん、並んだんじゃない!?』 祖母がいつも久義を子供の頃の呼び名で呼ぶから、伊嶋の親戚達は祖母に倣ってみんな久義を“ちゃーちゃん”と呼ぶのだ。 皆歓声を上げて思い思いのお菓子を選ぶと、互いの近況を話ながらお菓子に舌鼓を打った。 今年結婚をした子もいれば、子供が増えた者もいる。小学校に入学した小さい従兄弟もいれば、村から出て、街で職を得た従兄弟もいる。今年村に来たばかりのアイスランド人の...
真昼の月 | 2023.09.30 Sat 12:09
本日から第二部となります。 舞台が変わりますのでちょっと雰囲気が変わるかもです。 なお、引き続き『』の会話は日本語での会話、「」は英語の会話となります。 どうぞ第二部もお付き合いの程、よろしくお願いします。 イヌ吉拝 ◇◇◇ ◇◇◇ 灰色の空から重そうな雪が落ちてきた。空港で見たニュースで今年の冬は寒くなると言っていたが、それなら今年も雪は深くなるのだろう。 「さむ…」 イギリスだってずいぶん寒かったはずなのだが、暖かな電車の中か...
真昼の月 | 2023.09.16 Sat 20:10
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムの部屋に入るのは二度目だった。前に来た時は水槽と金魚の数に驚いたが、今はそれも目に入らない。 久義はウィリアムと二人きりの空間にいることに戸惑い、何を言えば良いのか、そればかり考えていた。 「さっき、帰りの日付はまだ決まっていないと言っていただろう?決まったら教えて欲しい。空港まで迎えに行こう」 先日のやりとりを無かったことにでもするつもりなのか、ウィリアムはそう言っていつも通りの笑顔を見せた。 ───...
真昼の月 | 2023.09.02 Sat 23:05
◇◇◇ ◇◇◇ 謳子からは、久義が東京に帰る事を、ちゃんとフィッツガード伯爵家にも知らせておけ、と言われていた。真理恵夫人が久義のお菓子を当てにしていると悪いから、その期間はイギリスにはいないちゃんと伝えておけと言うのだ。それは当然そうするべきだと分かってはいるが、久義はウィリアムの顔を思い出すと、どうしても連絡する手が遅くなった。 ……あんな別れ方をしたのだ。お互いに気まずいに決まっている。だが、何も言わずに日本に帰るような真似もできないだろう。 『テオドア...
真昼の月 | 2023.08.26 Sat 22:12
『ん〜、そうだけどさぁ。私いる?いらなくない?別にデザイナーの挨拶、いらなくない?クリスマスプレートは何ヶ月も前にデザイン納品してるし、イベントの指示は十一月には終わってるじゃない?私いる?いなくても良くない?』 『当日チェックがあるだろ』 『そんなの私でなくても良くない?』 久義が日本に帰ってしまうせいか、この時期の母はいつもモチベが下がる。イギリスの……いや、キリスト教国にっとてのクリスマスは、当然ながら宗教祭事だ。イギリスではみんなクリスマスに合わせて帰省して、家族揃...
真昼の月 | 2023.08.20 Sun 02:24
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来て下さりありがとうございました! 8月1日に、当blogはありがたいことに開設10周年を迎えました! 御礼ページをアップしておりますので、まだ見ていないよ、という方はぜひ覗いてみて下さい! 開設10周年記念ぺーじはこちら!! >>>開設10周年ありがとうございます!! 今年の御礼小説は、大竹先生と設楽君です!久しぶりの二人に会いにきて下さると嬉しいです! それでは、『金魚の恋53』始まり始まりです!! ...
真昼の月 | 2023.08.05 Sat 23:36
皆様、コメントありがとうございます。 お返事はコメントをいただいた順に書いております。 先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。 イヌ吉拝 08:18:19:10頃メッセ下さった方 コメントありがとうございます!! ウィルの家族は、真理恵さんばかりが強烈ですが、あのウィルを伯爵と、そんな伯爵が好きになった人なので、本当は義務よ...
真昼の月 | 2023.08.05 Sat 19:41
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