[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
◇◇◇ ◇◇◇ 大雅と大成は七つ違いの兄弟だ。物心付いたときから両親の仲は不仲で、母親は自分達にあまり関心がないようだった。そんな母親に見せつけるように、父親は自分達を大切にしてくれていた……ように思っていた。 だが、大雅が十歳の時に母親が家を出てしまうと、父親は「仕事が忙しいから」と、あまり家には帰ってこなくなった。大成はまだ三つ。見かねた祖母が家に来てくれて、大雅と大成はおばあちゃんに育てられた。 大雅が十一歳の時に、父親は急に子連れの女を「...
真昼の月 | 2022.02.06 Sun 10:09
◇◇◇ ◇◇◇ バンガローとは名ばかりの山小屋の中で、奏はぽっかりと目を醒ました。小屋の中には小さな卓袱台が一つあるばかりで、皆銀マットの上でシュラフに入り、酒臭い寝息を立てている。 「あ〜、今何時だ?」 時計を確認しようにも、腕時計をつけた左腕もシュラフの中だ。モゾモゾとシュラフのジップを中から下げている間に、すっかり目が醒めてしまった。 時計を確認すると、まだ三時過ぎだった。草木も眠る丑三つ時。とはいえ、大量のアルコールを摂取した後...
真昼の月 | 2022.02.06 Sun 10:09
「たった二人の兄弟だろう?君が大成君の為に頑張れたように、大成君も君の為に頑張ってきたんだ。大成君に聞いてごらん。きっと大成君も、君に恩返しがしたいって言うよ?」 「そんなこと……っ!」 叫ぶなり、大雅は勢いよく首をうなだれてしまった。何かを堪えるように、その手は震えている。奏は大雅の震えが止まるまで、根気よく手を握り、優しい声で囁き続けた。 「寧音もね、すぐに恩返しって言うだろう?でもね、俺は寧音がいてくれるだけで救われてるんだ。寧音が幸せそうに笑っ...
真昼の月 | 2022.02.05 Sat 22:30
「ランウェイだけじゃ、正直食っていかれないんだよ。パルファムや下着の仕事が来ると結構金になってね。あいつが中学に上がった辺りで、そういう仕事も段々入ってくるようになった。俺の名前も結構売れてきて。CMなんかにも出られるようになって。で、すぐに親父に連絡したわけだ」 自分は今東京で水商売をしている。大成の将来の為にも、大成を東京の高校に通わせたい。金は俺が全額出すから、大成を引き取らせてくれ。そう言うと、父親は何も聞かず、「そうか」とだけ答えた。 あの女に見つからないように、進学に...
真昼の月 | 2022.02.04 Fri 22:43
「大成に言われたよ。兄さん、苛められてるの?って。俺は良いから、兄さんは逃げてって。そんなことできない。そう言ったけど、大成はああいうとき、本当に頑固なんだ。自分はあいつらにわざと甘えて媚び売ってやるから大丈夫。でも兄さんは、このままでいたら変な顔になっちゃうよって」 「変な顔?」 「ああ。俺はあの頃、相当変な顔をしていたらしい」 大雅が薄く笑うと、奏は痛ましさに唇を噛みしめるしかできなかった。 「その替わり、僕を迎えに来てって。一日も早く僕を迎えに...
真昼の月 | 2022.02.03 Thu 22:27
◇◇◇ ◇◇◇ 大雅と大成は七つ違いの兄弟だ。物心付いたときから両親の仲は不仲で、母親は自分達にあまり関心がないようだった。そんな母親に見せつけるように、父親は自分達を大切にしてくれていた……ように思っていた。 だが、大雅が十歳の時に母親が家を出てしまうと、父親は「仕事が忙しいから」と、あまり家には帰ってこなくなった。大成はまだ三つ。見かねた祖母が家に来てくれて、大雅と大成はおばあちゃんに育てられた。 大雅が十一歳の時に、父親は急に子連れの女を「...
真昼の月 | 2022.02.02 Wed 22:05
◇◇◇ ◇◇◇ バンガローとは名ばかりの山小屋の中で、奏はぽっかりと目を醒ました。小屋の中には小さな卓袱台が一つあるばかりで、皆銀マットの上でシュラフに入り、酒臭い寝息を立てている。 「あ〜、今何時だ?」 時計を確認しようにも、腕時計をつけた左腕もシュラフの中だ。モゾモゾとシュラフのジップを中から下げている間に、すっかり目が醒めてしまった。 時計を確認すると、まだ三時過ぎだった。草木も眠る丑三つ時。とはいえ、大量のアルコールを摂取した後...
真昼の月 | 2022.02.01 Tue 22:16
◇◇◇ ◇◇◇ 豚汁と焼きそば、それからBBQという定番メニューは、定番なだけにみんなのハートと胃袋を掴む。もっとコジャレたメニューにしようかという意見も出たのだが、娘達が「これが良い!」と主張したこともあり、また、大雅・大成兄弟は学校行事以外でBBQをしたことがないというからこのメニューにしたのだが、大正解だった。 牛肉、ネギの豚バラ巻、タマネギニンジンピーマンという定番食材を金串に刺して焼くと、それだけで視覚的にクるらしく、みんなどんどん手を伸ばしていく。焼きそ...
真昼の月 | 2022.02.01 Tue 16:38
「兄さんが八月にプレタのショーでヨーロッパに行くんです。そのままミラノで落ち合ってギリシアに飛べば、兄のヨーロッパまでの渡航費が浮きます」 どっちみちギリシアには日本からの直行便がないため、ヨーロッパ経由かドバイ、もしくはトルコ経由でアテネ入りし、そこからフェリーで島に向かうことになる。 「それにほら、パパは遺跡も好きでしょう?ミコノス島からフェリーで三十分の所に、アポロンとアルテミスが生まれたデロス島があるよ!ファンタジーの世界みたいな素敵な遺跡の島だから、脚を伸...
真昼の月 | 2022.02.01 Tue 16:37
「だって、こんな時でもなきゃなかなか恩返しもできないでしょ?」 きっと、ちーちゃんズは本当の親に良い距離感で育てられてきたから、そんな風に思えるのだ。愛されるのは当たり前。親が常に傍にいて、子供の面倒を見るのは当たり前。 でも、当たり前ではない家だってあるのだ。 少なくとも、寧音は覚えている。目の前でどんどん衰弱していく母を。自分もゲーゲー吐いて、頭がグラグラして、体を起こしてなんていられなかった。体中が痛くて、でもママはそれ以上に辛そうで。 ママ...
真昼の月 | 2022.02.01 Tue 13:48
全1000件中 191 - 200 件表示 (20/100 ページ)