[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]

その当時の事を思い出し、奏が口を閉ざすと、寧音が震える唇を震わせた。 「じゃあ、やっぱり私は……」 だが、すぐに奏は首を振った。 「聞いて。最初はね、俺も何が本当の事なのか分からなくて、少し混乱していたんだ。それで……恥ずかしい話だけど、俺は今まであの部屋の姉さんの遺した物を、怖くて触れなくて……。ごめんね、寧音。俺は姉さんに向き合うことが、ずっとできなかった。勇気が無かったんだ。でも、……今回荷物を整理していた...
真昼の月 | 2022.03.17 Thu 23:41
◇◇◇ ◇◇◇ 部屋の中はしんと静まりかえっていた。誰も、一言も声を発することができなかった。寧音の顔色は痛々しいほど真っ青で、そんな寧音を大成がそっと抱きしめる。 「寧音」 「わたし……私は……」 「寧音、母さんの話は、あれは全く事実無根だ。母さん達は姉さんの話を聞かずに、自分達の想像した話を事実として勝手に思い込んでいるだけなんだ。今まで、何の話もしなくて悪かった。座って、俺の話を聞いてくれる?」 奏がまっすぐに...
真昼の月 | 2022.03.16 Wed 22:59
「チャチな名声を振りかざすのが大好きなお母様に教えて差し上げますよ。名声や権威というのはね、こういう風に利用するものです。さぁ、どうしますか?あなたが俺の愛しい家族である奏と寧音に今後二度と近づかないと誓うなら、クレールへの口利きを考えてやらないでもありませんよ?まぁ、クレールが彼を使ってくれるかどうかは、あなたの素晴らしいご主人の実力次第ですがね」 握りしめた美弥子の手が、ブルブルと震えている。言い返せない自分が悔しいが、このチャンスを棒に触れるほど恵まれているわけではない...
真昼の月 | 2022.03.15 Tue 23:32
「つまりあなた達は、娘が犯罪被害に遭ったという話が世間に出れば潰される程度の音楽家であると、自覚しているわけですね?だからこそ、そんな小さな傷を揉み消そうと必死でいらっしゃる。ああ、そうそう。自分の娘を見殺しにしても全く良心の痛まないような人でなしであると、そのドキュメントには付け足してもらわないと」 「無礼な!」 美弥子の顔は今やどす黒く変わっていた。大雅の台詞に思う所であるのだろう、その顔はますます醜く歪んだ。 「ネットを見てご覧なさい。高橋誠一郎にしても、高...
真昼の月 | 2022.03.15 Tue 00:02
「やめろ!あなたはそうやって、姉さんの話を一度も聞かなかったくせに!」 「何を聞けというの!?こんな事が世間に知られたらどうなると思ってるの!?私達の音楽家としても名声が、お前なんかの為に地に落ちることになるのよ!律を殺しただけじゃ飽き足らず、私達にまで仇なそうとするなんて!お前なんて、呪われた悪魔の子よ!」 「ふざけるな!!」 ショックの為に足に力が入らなくなった寧音を、大成が後ろからしっかりと抱きしめた。 「寧音、二階に行こう」 「でも……!」 &nb...
真昼の月 | 2022.03.13 Sun 23:45
しばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。大雅が玄関を開けると、確かに先日の女────高橋美弥子がそこに立っていた。 「どうぞお入り下さい」 「……ずいぶんちゃんとした所に住んでいるのね。驚いたわ」 美弥子はぶしつけな態度で部屋の中をぐるりと見回した。 「何のご用ですか?どうやってここの住所を手に入れたんです?」 母にはアパートの住所すら教えていないのだ。まだ移り住んで間もないここの住所を、何故母が知っているのか。 「高...
真昼の月 | 2022.03.12 Sat 22:56
「ただいま〜、パパ」 「ご飯作ってくれるんだって?」 「いっつもお父さんにばっかり作ってもらってるから、休みの日ぐらいは俺達が頑張りますよ!」 三つもあるエコバックから食材を取り出しながら、二人は楽しそうに今日の報告をした。 もちろん、優吾と会っていたというのは内緒だ。 「今日は久し振りに上野の博物館に行って、帰りに御徒町でお刺身買ってきたんですよ。でもダメだね〜。あそこ行くと、必要ない物まで買ってきちゃって」 「おじさん達、死ぬほどおまけしてくれるからね〜」 ...
真昼の月 | 2022.03.11 Fri 22:34
◇◇◇ ◇◇◇ 今日は朝から寧音と大成が出かけていて、この広いマンションの中に、奏と大河は二人きりだった。 ギリシアで二人は互いの気持ちを確かめ合ったけれど、帰りの件で奏の様子がすっかり変わってしまった。そのせいで、まるで関係がリセットされてしまったように、奏は大雅に対してまでよそよそしく、自分の中に沈み込んでしまっている。この状況を、大雅が心配しない訳がなかった。 ひょっとして、大成と寧音が二人で出かけたのは、自分と奏を二人きりにさせてく...
真昼の月 | 2022.03.10 Thu 23:00
◇◇◇ ◇◇◇ 優吾と別れてから、大成は優吾のアドバイス通りに、寧音を動物園に誘った。 「……動物園より、科学博物館の方が良いわ」 「お姫様のおっしゃる通りに」 大成は笑いながら行き先をすぐ隣の科学博物館に変えた。優吾の言ったとおりにするのが癪だったのかもしれないが、寧音は昔から、恐竜の化石や動物の骨格標本が好きなのだ。 館内は静かで、外の暑さが嘘のようだった。頭上を泳ぐマッコウクジラの骨格標本は、特に寧音のお気に入...
真昼の月 | 2022.03.09 Wed 22:25
◇◇◇ ◇◇◇ 寧音が「パパに内緒で会いたい」と連絡を取ると、優吾はすぐに時間を作ってくれた。キャンプの時には気まずい雰囲気になってしまったが、寧音を我が子のように思っている優吾にとっては、「寧音とケンカするのなんか、いつもの事だろ」という事になるらしい。 寧音も優吾も、日曜日の休診日にシフトが入る事はあまりないので、二人は揃って優吾に会いに行った。 「よう。新婚旅行、どうだった?楽しかったか?あ、お土産ありがとうな」 「ううん。それより、今日は優吾ちゃ...
真昼の月 | 2022.03.08 Tue 22:59
全1000件中 191 - 200 件表示 (20/100 ページ)