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◇◇◇ ◇◇◇ ヒロが四代目の声がかりで栄次の盃をもらうという話は、翌日には皆の知るところとなっていた。いつもの通りに衛を学校に送り、栄次を本家に送り届けてから真田組組事務所に行くと、会う人ごとに変な顔をされた。忌々しげに舌打ちをする者や、「うまくやりやがって」と唾を吐きかけてくる奴もいた。 事務局の空気も、いつもよりギスギスしている。 「気にするな。元々俺らはヤクザで、仲良しグループじゃねぇんだから」 佐世保や時村はそう言っていつもの顔で笑ってくれたが、他の奴らの尖った目は、...
真昼の月 | 2018.09.12 Wed 08:09
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(25)最終話 二人は互いの昂りを擦り合わせた。そのどちらからも尖端にはジワリと水滴を滴らせている。 先程まで戒めていた雫のそこを慈しむように悠は指で輪を作り潜らせると、雫の唇からは再び熱を帯びた艶やかな声が零れ出る。 二人の間には先程までの険悪なムードはまったくなくなっていた。 チーターと狼が取っ組み合いの喧嘩をしているかのようだった騒がしさも鳴りを潜め、二人は嘘のように穏やかな表情を浮か...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.09.12 Wed 02:48
「わ、東郷さん、料理するの!?」 夕方、結がキッチンの入口で言った。 私は、白いギャルソンエプロンを巻き、大鍋を出している。 「パリのギャルソンみたいだね。」 結が、私のエプロンの裾を持って見ている。 「結は料理しないのかい?」 「食べるの専門です。笑」 「うまいもの食わせるから待っていろよ。」 我が家には、タイ移民のお手伝いさんとドイツ人庭師がいて毎回食事作りを手伝ってくれる。 ブラオミュンヘンの選手たちは計3人で、結を入れるとこの日の客は4人だ。 パスタ、ローストビーフ、サラダを...
大人のためのBL物語 | 2018.09.11 Tue 20:38
「四代目の声掛かりで、小野田組若頭であるオヤジの盃をもらう。……それが、どういう意味か分かるか?」 「え…?いや、あの……?」 そう言われて初めて、ヒロは自分が思っていたのとは違う立場に置かれたことに気づいた。 「親子盃を受けるということは、組の継承権を貰うって事だ。本来若頭が組を継ぐのが筋だが、必ずしも若頭が継ぐと決められてるわけじゃねぇ。組の継承権を持った子分の中から若頭が次の組長に指名される、という流れになってるってだけでな。先代の子分は、代が変われ...
真昼の月 | 2018.09.11 Tue 08:07
「いえ、ヒロには桐生が盃をやると言っていたので」 栄次が居ずまいを正して将義に返事をする。事は盃に関わることだ。今迄のようにふざけた態度で臨むわけにはいかない。 「桐生もまだ盃をやってないって聞いたぜ?」 吉居が横から補足すると、将義は「あぁ?」と口元を歪めた。 「盃もやってねぇのに、お前らこいつをこんなにコキ使ってんのか」 「いや……、桐生もまだ色々思うところがあるらしいので」 「何が思うところだ。桐生も甘ったれたことを」 「は……」 栄次は少しだけ...
真昼の月 | 2018.09.10 Mon 08:05
「オヤジ、ヒロが困ってるぜ。やめてやれよ」 「だって貴晴、見たか?あいつ、すっげえ箸の取り方するぜ?」 「え?何?もう一回やって見せて?」 食事の席では将義はずいぶんリラックスしていて、吉居のことを下の名前で呼ぶ。2人は小学校以来の幼馴染みらしい。2人のくだけた態度に、ヒロの胸がチクリと痛んだ。 そうだ。駈も俺の箸の持ち方をやって見せろと面白がっていた。風子に持ち方を教えてやってくれって……。 箸を持ったまま昔のことを思い出していたら、それをどう取ったのか、「ほら!ヒ...
真昼の月 | 2018.09.09 Sun 08:06
「ここ?」 「そうだ。」 「すごい!ここに住んでいるの?」結は心底驚いた顔をしていた。 「この家は、”ガストホフ”って皆呼んでいる。旅籠の意味だ。 150年くらい前の旅籠なんだよ。そこを買い上げて住まいにしている。」 裏の駐車場に車を入れ、三日月をあしらったアーテスティックな鉄柵の門を開けると、結を庭へ促した。 「オカエリ!」 沢山ある窓が開いて、叫んでいる若い男たちがいる。 「うちのチーム、ブラオミュンヘンの選手たちだ。」 「日本語で”オカエリ”?」 「私が教えた。」 玄関を...
大人のためのBL物語 | 2018.09.08 Sat 10:21
たっぷり2時間は汗を流しただろうか。普通は、銃の反動で体の方が先に参る物だが、レースで鍛えられたヒロの体はいくらでもそれに耐えられた。 射撃場を出る前に、もう1度銃のメンテをする。毎回メンテをしていると言うと驚かれ、時村などは「俺のも任すわ」とおどける。自分の銃以外を預かるのはまだ少し怖いが、預けられれば、ヒロは黙々とメンテを行った。幼い頃からマシンのメンテをしていたし、少々の物なら車の修理も自分で行うヒロにとって、細々とした部品を弄るのはむしろ楽しい時間だった。 射撃場を出ると、...
真昼の月 | 2018.09.08 Sat 08:09
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML ※不妊問題についての記述があります。不快に思う方もいるかもしれません。 ですがあくまでも作中の主人公たちの考えですのでお許しください。 僕の家庭教師さま エピローグ(24) そんな頭ごなしに自分の遺伝子を引く子供なんて要らないなんて言って欲しくは無かった。 例え悠が今まで親の愛情を感じた事が無かったとしても、悠の遺伝子は次の世代に受け継がせるべきだと雫は強く思う。 そしてその子が生まれてきたら、雫は例え自分の子供じゃなく...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.09.08 Sat 07:22
だが、確かに桐生の言う通り、小野田本家の幹部達は穏やかで威厳に満ち、優しそうですらあった。大体、組長からしてそうなのだ。小野田組組長である四代目・小野田政義も、その片腕である筆頭組長補佐の吉井隆晴も、共にT大卒の秀才で、モデルのような風貌を一流のスーツに包んでいる。言われなければ、誰も彼らをヤクザとは思わないだろう。新進気鋭の青年実業家……そう言われればしっくりくるだろうか。 彼らは、ヒロの考えていたヤクザとはずいぶん様子が違った。ヤクザと言ったら……そう、真田...
真昼の月 | 2018.09.07 Fri 08:08
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