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◇◇◇ ◇◇◇ 事務所に戻ると、奥沢が捕まったという報告を受けたらしい金町派が続々と集まっていた。その中には、溝口の姿も見える。 金町やその下の者達はどこぞの小部屋に奥沢を押し込んで、「事情聴取」の最中らしい。 ヒロはまずいつもの事務局に顔を出したが、そこはもぬけの殻だった。組の連中はみな和室の大広間に集まり、事の成り行きを見守っている。準構成員だとか非構成員だとか……もちろん、溝口達のような下っ端は、皆別のフロアで銘々に集まり、そちらの様子を伺っているようだ。 自分...
真昼の月 | 2018.08.21 Tue 07:38
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(15) 悠は雫の前髪に指を差し入れ、優しく後ろに髪を剥いた。 雫は堪らなくなって、鳴咽をあげて泣き始めた。 本当はそんな残酷な事を悠に言うつもりは無かった。 だが悠に自分を諦めさせる為に、あえてきつく言い放たなければならないと、心を鬼にして言ったつもりだった。 それなのにやはり悠の孤独を考えると、堪えきれなくなって涙が零れる。唇からは声にならない嗚咽があがり、 心は締め付けられ痛かった。 ...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.21 Tue 06:01
◇◇◇ ◇◇◇ 組事務所に戻ると、ヒロは車を修理屋に持っていくように言われ、すぐにそちらへ向かった。 向かった先は個人経営の修理場で、表には何台もの車が修理を待って、行儀良く停められている。 桐生の車は工場の奥へ動かすように指示された。そこには他の車の姿は見えず、表にはいなかったひょろりと背の高いオヤジが1人立っていた。オヤジは「自分のことはおっさんって呼べよ」とだけ言うと桐生の車のへこみをぽんぽんと叩き、「桐生さんの車にしちゃ、今日は軽いな」と頷いた。 「すぐ何とかしちゃうからっ...
真昼の月 | 2018.08.20 Mon 08:01
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(14) 悠にお前に俺の気持ちなんか分るかと言われた雫だった。 だがその気持ちは、悠と肌を合わせるようになってから、時々雫にだけはなんとなく伝わっていた想いでもある。 言い知れない悠の家族に対する嫌悪感と怒りは、自分の抱える孤独と表裏一体のもののように感じていた。 その家族に対する嫌悪感の裏にこそ、強い家族というものへの憧れが隠されているように雫には感じていたのだった。 そしてそ...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.20 Mon 06:06
「奥沢。もっと良い所に連れっててやるよ。今度は俺とドライブとしゃれこもうぜ?」 阿鼻叫喚の形相でわめき立てる二人をベンツの後部座席に押し込むと、時村は「事後処理をしておきますんで、俺はここに落としていってください。終わり次第そちらに向かいます」と言いながら携帯を取り出した。 「分かった。おう、ヒロ。本家はやめだ。事務所に戻れ」 「はい」 後部座席は騒がしいからと、桐生が今度は助手席に乗り込んできた。窓を開けて時村に指示をいくつか出し、最後に「周りの学生さん達に怖がらせて悪かったと謝...
真昼の月 | 2018.08.19 Sun 14:57
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(13) 雫の頭の中でかつてないほどのスピードで、今までの悠との出来事がぐるぐると走馬灯のように回っていた。 学年一、頭の良い悠に勉強のやり方を聞こうとして声を掛けた事から始まった二人の関係だった。 今思えばものすごく間抜けな事を質問をしたと赤面するしかないが、あの時はとにかく成績も崖っぷちに立たされ必死の雫だった。 帰国子女に在りながら、一般入試の人間を押し退けてトップで難関校と言...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.19 Sun 08:54
「奥沢。もっと良い所に連れっててやるよ。今度は俺とドライブとしゃれこもうぜ?」 阿鼻叫喚の形相でわめき立てる二人をベンツの後部座席に押し込むと、時村は「事後処理をしておきますんで、俺はここに落としていってください。終わり次第そちらに向かいます」と言いながら携帯を取り出した。 「分かった。おう、ヒロ。本家はやめだ。事務所に戻れ」 「はい」 後部座席は騒がしいからと、桐生が今度は助手席に乗り込んできた。窓を開けて時村に指示をいくつか出し、最後に「周りの学生さん達に怖がらせて悪かったと謝...
真昼の月 | 2018.08.19 Sun 08:01
「おい、どこにいるんだ!?」 佐世保の声に、ヒロが冷静に答える。 「2台先の車です。奥沢が運転して、後部座席に女がいました」 「あぁ!?お前、それ見間違いじゃねぇのか!?」 高速の高架下に位置する246号線だ。薄暗い上に、高架の柱が邪魔をして、反対車線とは距離もある。そんな状況で、ある程度の速度で流れている反対車線の運転席など、確認できるはずがない。佐世保や時村がそう思うのは仕方がないだろう。 「ヒロ、間違いないんだな?」 だが、桐生はそれを見間違いだとは思っていないように確認...
真昼の月 | 2018.08.18 Sat 08:02
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(12) 雫は、総ての思考が停止してしまい身体に力が入らない。 悠に酷い事をされているとか、そういう肉体的な事とは関係なく、悠に言われた『一生』という言葉がズシンと重く圧し掛かっていた。 『一生』なんて言葉を誰かに言われたのはさすがにこれが初めてだった。 正直そこまでの事を考えた事は今まで一度だってない。 悠を好きだという気持ちに嘘はない。 だが一生添い遂げるとか、そ...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.18 Sat 05:12
◇◇◇ ◇◇◇ その日は朝からバタバタと慌ただしかった。桐生も早く事務所に行けとヒロをせっつき、6時には桐生を乗せた車は事務所の地下駐車場に入った。事務所内は、ヒロが足を踏み入れた時にはもう、怒声が鳴り響いていた。 どうやら、いくつかの組の取り纏めを任せられていた奥沢という男が、縄張りの店舗から売り上げと女を連れて逃げたらしい。その女というのが若頭補佐、金町のバシタ(女)だったものだから、金町のメンツは丸潰れだ。金町派の連中は、昨日の夜から血なまこになって奥沢を追っているらしい。 「...
真昼の月 | 2018.08.17 Fri 08:01
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