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翌朝、結は朝食時間に起きて来なかった。 選手たちの手前、私だけはダイニングルームに降りて来た。お手伝いのジップが、既に朝食を作ってスタンバっていた。 ドイツのらしい朝食が並ぶ。 黒いパンに、コーヒーと卵、ハム、野菜、フルーツ、ヨーグルト、チーズ。 「ユウは?」両親が東ドイツ出身のアベルが言った。 「まだ寝ている。」 「監督、先に、チームに戻ります。ありがとうございます、滞在楽しかったです。」 「ではまた明後日。」明後日は試合がある。今日明日は、トレーニングとミーティングだ。 ジ...
大人のためのBL物語 | 2018.09.17 Mon 17:14
滅多に自分の事務所には戻らない栄次だが、桐生による微に入り細に入った報告のおかげで、組内の事はどんなに小さな事でも把握している。その桐生の報告によれば、金町の下には、組の決まりも仕組みも分からないバカが出入りしているのだ。 車が地下駐車場に入ると、衛が車から飛び出した。 「衛さんは俺の部屋で待っていて下さい!すぐにヒロを探させます!」 「それはダメだ!栄次さん、ヒロさんの身に何が起こってるかは分からないけど……この事は人に知られない方が良い。そうでしょう?」 衛の強い目...
真昼の月 | 2018.09.17 Mon 08:06
◇◇◇ ◇◇◇ 「衛さん、いきなりどうしたんですか?」 学校帰り、いつもの場所に停められた車に乗り、運転席を見るなり衛は組事務所に連れて行ってくれるようにと栄次に頼んだ。衛の顔はずいぶんと強張っている。 「運転手が違いますね。ヒロさんは?」 「ああ…、あいつ、きっちりカタを付けておけと言ったのに……」 栄次が口の中でぼやく。 ヒロが最近組員からの妨害を受けていることは知っている。組に来てまだ半年と日が浅いヒロが、いきなり四代目の声掛かりで自分の盃を受けること...
真昼の月 | 2018.09.16 Sun 08:58
◇◇◇ ◇◇◇ 「衛さん、いきなりどうしたんですか?」 学校帰り、いつもの場所に停められた車に乗り、運転席を見るなり衛は組事務所に連れて行ってくれるようにと栄次に頼んだ。衛の顔はずいぶんと強張っている。 「運転手が違いますね。ヒロさんは?」 「ああ…、あいつ、きっちりカタを付けておけと言ったのに……」 栄次が口の中でぼやく。 ヒロが最近組員からの妨害を受けていることは知っている。組に来てまだ半年と日が浅いヒロが、いきなり四代目の声掛かりで自分の盃を受けること...
真昼の月 | 2018.09.16 Sun 08:02
(※)この話には、暴力的なシーンが含まれております。苦手な方はブラウザを閉じ、読まないようにお願いします。 ------------------------------ 「……よう、お目覚めか?」 まだ視界に靄がかかったようだったが、この声には聞き覚えがある。 「……溝口……」 ヒロの腕は背中で1つに縛られていた。それから、両足を曲げられ、膝裏に竹刀を噛ませて、太ももと脛を竹刀ごと縛り付けている。これでは、全く身動き...
真昼の月 | 2018.09.15 Sat 08:01
◇◇◇ ◇◇◇ 組事務所の中には人が少なかった。 取り敢えず、地下の射撃場で銃の訓練をし、そのまま格技室に向かう。誰もいないだろうけど、空手の型を浚って、それから体を動かそう。頭の中を冷静に保つために、少し汗をかきたかった。 格技室のドアを開けようとすると、「ヒロさん」と声をかけられた。溝口とよくつるんでいる男だ。名前は確か、岩井と言ったか。溝口にいつも顎で使われていて、オドオドとした顔をしている、どこかネズミを思わせる男だ。 「あの…、ヒロさんって、組長の盃を貰うって、本当...
真昼の月 | 2018.09.14 Fri 08:05
「兄貴、今日の予定は?」 「今日は午後から幕張だ。夜は待たずに先に寝ていろ」 「はい」 最近、桐生は幕張の商業施設建設にまつわる利権のやりとりの為に、出かけていることが多かった。家事はしなくて良いと言われているが、夜食を作っておくと朝にはきちんと無くなっているから、食べてくれているのだろう。自分を部屋に置いてくれている桐生の役に、少しでも立っているのなら嬉しい。 「じゃあお先に失礼します」 「おう、しっかりな」 桐生に頭を下げ、アニキの頭を撫でてやってから家を出た。 本家のそば...
真昼の月 | 2018.09.13 Thu 08:03
「ここ?」 「そうだ。」 「すごい!ここに住んでいるの?」結は心底驚いた顔をしていた。 「この家は、”ガストホフ”って皆呼んでいる。旅籠の意味だ。 150年くらい前の旅籠なんだよ。そこを買い上げて住まいにしている。」 裏の駐車場に車を入れ、三日月をあしらったアーテスティックな鉄柵の門を開けると、結を庭へ促した。 「オカエリ!」 沢山ある窓が開いて、叫んでいる若い男たちがいる。 「うちのチーム、ブラオミュンヘンの選手たちだ。」 「日本語で”オカエリ”?」 「私が教えた。」 玄関を...
大人のためのBL物語 | 2018.09.12 Wed 08:42
「わ、東郷さん、料理するの!?」 夕方、結がキッチンの入口で言った。 私は、白いギャルソンエプロンを巻き、大鍋を出している。 「パリのギャルソンみたいだね。」 結が、私のエプロンの裾を持って見ている。 「結は料理しないのかい?」 「食べるの専門です。笑」 「うまいもの食わせるから待っていろよ。」 我が家には、タイ移民のお手伝いさんとドイツ人庭師がいて毎回食事作りを手伝ってくれる。 ブラオミュンヘンの選手たちは計3人で、結を入れるとこの日の客は4人だ。 パスタ、ローストビーフ、サラダを...
大人のためのBL物語 | 2018.09.12 Wed 08:42
◇◇◇ ◇◇◇ ヒロが四代目の声がかりで栄次の盃をもらうという話は、翌日には皆の知るところとなっていた。いつもの通りに衛を学校に送り、栄次を本家に送り届けてから真田組組事務所に行くと、会う人ごとに変な顔をされた。忌々しげに舌打ちをする者や、「うまくやりやがって」と唾を吐きかけてくる奴もいた。 事務局の空気も、いつもよりギスギスしている。 「気にするな。元々俺らはヤクザで、仲良しグループじゃねぇんだから」 佐世保や時村はそう言っていつもの顔で笑ってくれたが、他の奴らの尖った目は、...
真昼の月 | 2018.09.12 Wed 08:09
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