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「四代目の声掛かりで、小野田組若頭であるオヤジの盃をもらう。……それが、どういう意味か分かるか?」 「え…?いや、あの……?」 そう言われて初めて、ヒロは自分が思っていたのとは違う立場に置かれたことに気づいた。 「親子盃を受けるということは、組の継承権を貰うって事だ。本来若頭が組を継ぐのが筋だが、必ずしも若頭が継ぐと決められてるわけじゃねぇ。組の継承権を持った子分の中から若頭が次の組長に指名される、という流れになってるってだけでな。先代の子分は、代が変われ...
真昼の月 | 2018.09.11 Tue 08:07
「いえ、ヒロには桐生が盃をやると言っていたので」 栄次が居ずまいを正して将義に返事をする。事は盃に関わることだ。今迄のようにふざけた態度で臨むわけにはいかない。 「桐生もまだ盃をやってないって聞いたぜ?」 吉居が横から補足すると、将義は「あぁ?」と口元を歪めた。 「盃もやってねぇのに、お前らこいつをこんなにコキ使ってんのか」 「いや……、桐生もまだ色々思うところがあるらしいので」 「何が思うところだ。桐生も甘ったれたことを」 「は……」 栄次は少しだけ...
真昼の月 | 2018.09.10 Mon 08:05
「オヤジ、ヒロが困ってるぜ。やめてやれよ」 「だって貴晴、見たか?あいつ、すっげえ箸の取り方するぜ?」 「え?何?もう一回やって見せて?」 食事の席では将義はずいぶんリラックスしていて、吉居のことを下の名前で呼ぶ。2人は小学校以来の幼馴染みらしい。2人のくだけた態度に、ヒロの胸がチクリと痛んだ。 そうだ。駈も俺の箸の持ち方をやって見せろと面白がっていた。風子に持ち方を教えてやってくれって……。 箸を持ったまま昔のことを思い出していたら、それをどう取ったのか、「ほら!ヒ...
真昼の月 | 2018.09.09 Sun 08:06
「ここ?」 「そうだ。」 「すごい!ここに住んでいるの?」結は心底驚いた顔をしていた。 「この家は、”ガストホフ”って皆呼んでいる。旅籠の意味だ。 150年くらい前の旅籠なんだよ。そこを買い上げて住まいにしている。」 裏の駐車場に車を入れ、三日月をあしらったアーテスティックな鉄柵の門を開けると、結を庭へ促した。 「オカエリ!」 沢山ある窓が開いて、叫んでいる若い男たちがいる。 「うちのチーム、ブラオミュンヘンの選手たちだ。」 「日本語で”オカエリ”?」 「私が教えた。」 玄関を...
大人のためのBL物語 | 2018.09.08 Sat 10:21
たっぷり2時間は汗を流しただろうか。普通は、銃の反動で体の方が先に参る物だが、レースで鍛えられたヒロの体はいくらでもそれに耐えられた。 射撃場を出る前に、もう1度銃のメンテをする。毎回メンテをしていると言うと驚かれ、時村などは「俺のも任すわ」とおどける。自分の銃以外を預かるのはまだ少し怖いが、預けられれば、ヒロは黙々とメンテを行った。幼い頃からマシンのメンテをしていたし、少々の物なら車の修理も自分で行うヒロにとって、細々とした部品を弄るのはむしろ楽しい時間だった。 射撃場を出ると、...
真昼の月 | 2018.09.08 Sat 08:09
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML ※不妊問題についての記述があります。不快に思う方もいるかもしれません。 ですがあくまでも作中の主人公たちの考えですのでお許しください。 僕の家庭教師さま エピローグ(24) そんな頭ごなしに自分の遺伝子を引く子供なんて要らないなんて言って欲しくは無かった。 例え悠が今まで親の愛情を感じた事が無かったとしても、悠の遺伝子は次の世代に受け継がせるべきだと雫は強く思う。 そしてその子が生まれてきたら、雫は例え自分の子供じゃなく...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.09.08 Sat 07:22
だが、確かに桐生の言う通り、小野田本家の幹部達は穏やかで威厳に満ち、優しそうですらあった。大体、組長からしてそうなのだ。小野田組組長である四代目・小野田政義も、その片腕である筆頭組長補佐の吉井隆晴も、共にT大卒の秀才で、モデルのような風貌を一流のスーツに包んでいる。言われなければ、誰も彼らをヤクザとは思わないだろう。新進気鋭の青年実業家……そう言われればしっくりくるだろうか。 彼らは、ヒロの考えていたヤクザとはずいぶん様子が違った。ヤクザと言ったら……そう、真田...
真昼の月 | 2018.09.07 Fri 08:08
結(ゆう)と私は、まだ体の関係はない。この先、そう言う関係になって良いのかどうかまだ迷いがある。いくらなんでも、この恋は社会的反響を考えたら危険すぎる。だいたい、あの芸術品のような体で”男”を受け入れられるのか。彼と会ってから、彼の演目のブルーレイを購入してドイツの自宅で見た。結の見た目そのままの王子的な役割の白鳥の湖と、クラッシックバレエの常識を覆した原始的なエネルギーを表した火の鳥。火の鳥は、刺激的なリズムが炸裂し野蛮なバレエとまで言われたが、パリの観客には大盛況だったと解説文にある。彼は、...
大人のためのBL物語 | 2018.09.06 Thu 08:11
◇◇◇ ◇◇◇ それからのヒロの毎日は、これまでとはずいぶん変わった。 真田組の組長であり、小野田組の若頭でもある栄次の行動は、日中は常に衛と共にある。 衛の朝は早い。5時半には起きてきて、空手と剣道の稽古をしてから町内を走り、それから軽くシャワーを浴びて朝食を取り、8時前には学校へ向かう。だからヒロも2人のジョギングに間に合うように小野田本家に行かなければならない。その為に、朝の家事は免除となり、車も一台与えられた。 ヒロは一人で車に乗って本家に行き、少し離れた場所から車でつい...
真昼の月 | 2018.09.06 Thu 08:06
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(23) あのプライドの高い悠がそれさえ投げ捨て哀願してくれているというのに、それを無下に断る事など雫に出来るはずがない。 それを跳ね除けたら、悠の心が破綻する、そんな危惧さえ覚える。 悠が自分の気持ちを剥き出しにして告白してくれている姿に、雫も自分の気持ちを抑える事など出来なくなってしまった。 だが、愛人でもいいと言うのは雫の本心だった。悠の子供が見られるなら自分はただのセフレで...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.09.06 Thu 05:41
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