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「……お前はさ、あの銃を持って、誰かを弾いて来いと言われるのかって思ってんのかもしれねぇけどな。あれは、そういうためのモンじゃない」 「え?」 では、何のための銃だ。銃は人を殺すための物だ。そうして自分はその扱い方を覚えろと言われている。 ああ、やはり自分はヤクザになったのだ。どんなにここが居心地が良くても、やはりこの人はヤクザで、自分はその世界に入ってしまった。もう後戻りはできないのだ。 そう思って背中を硬くするヒロに、桐生は優しく話し始めた。 「うちの…&hell...
真昼の月 | 2018.09.02 Sun 07:54
また会いたいと・・・道ノ瀬結(みちのせ ゆう)は言った。 世界の違う友人が一人増えたと思えばいい。 東郷はそう考え、彼を記憶の片隅に追いやろうとしたが、どうにもあのしなやかな体が 手のひらに、体に、感触として残っている。 彼を送ったホテルの部屋の前で、ラインとスマホの番号を交換した。 道ノ瀬からLINEが早くも翌朝に来た。若者だけあって反応が早い。 「昨日は、ピンチを助けていただいてありがとうございました。 東郷さん、いつまで日本にいらっしゃるのですか?」 「9月第一週までです。...
大人のためのBL物語 | 2018.09.01 Sat 16:21
2018年9月、東京でスポーツや芸術部門の優れた選手アーティストに贈られる功労賞の受賞パーティが行われた。 その会場に、ひときわ目立つ男がいた。 長身に漆黒の髪、黒いスーツと黒いシャツを装い、暗いグレーのネクタイを締めている。 物静かで、おいそれと話しかけるのをためらうような落ち着きと品格を放っている。 東郷悟(とうごうさとる)、42歳。 職業はドイツサッカーリーグの名門、ブラオミュンヘンの監督である。 W杯優勝を何度も経験したサッカー強豪国で、初めての日本人監督である。 60あるドイツのプロチー...
大人のためのBL物語 | 2018.09.01 Sat 15:51
「飲んどけ」 「ありがとう…ございま、す」 指震えてキャップが外せない。何度か格闘していると、桐生がキャップを外して渡してくれた。 水は常温で、トロトロと喉を流れて落ちていく。それは優しい温度で、ヒロの乾ききった体を潤してくれた。 「落ち着いたか?」 「はい…。すいませんでした」 「ああ。……今迄にもよくうなされていただろう?」 「あ……」 知っていたのか。そう思ったが、ヒロは小さく頷くに留めた。 「俺は放っておいた方が良いと言ったんだがな。...
真昼の月 | 2018.09.01 Sat 08:01
「これ……」 「そうだ。見たことくらいあんだろう?オヤジから、お前にチャカの使い方を教えるように言われている。そら、持ってみろ」 金町がエアパッキンに包まれた銃を差しだしてくる。ヒロはゴクリと唾を飲み、ソレに手を出すのを躊躇った。 「心配すんな。まだマガジンは入ってねぇよ。ほら、さっさと持て」 「あ…、はい……」 両手で受け取ると、それはずしりと重い。人の命を奪うための物だ。そう思うと、その塊は、なおさらに重かった。 「安心しろ。いきなりぶっ放せと...
真昼の月 | 2018.08.31 Fri 08:03
栄次が帰った後、ヒロの運転で2人は桐生の部屋に帰った。部屋に帰りながら、ヒロは桐生に栄次の話を聞いていた。 「桐生の兄貴と組長は、付き合いは長いんですか?」 「おう。中学の入学式で乱闘して以来だ。ま、俺達、ヤンキーマンガを地で行ってたからな」 桐生の昔話は面白かった。自分の知らない世界の話だからかもしれないし、桐生がとても楽しそうに話すからなのかもしれない。 自分は、駈とは学校は別だった。自分は東京で、あいつは静岡に住んでいたから、学校どころか県も違うし、当然共通の友達などもいな...
真昼の月 | 2018.08.30 Thu 08:01
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(21) 「俺はお前と居るのを楽しんでた。 これからもそうだ…雫」 「ん?」 「お前と居たいと思うのは俺の意志だ。 だからお前が負い目を感じるような事は何も無い。 確かに俺の興味を持つものは移ろいやすい。…だが、お前だけは違う」 「そんな事わかんないじゃないか! いつか悠が僕という人間に興味を無くしちゃったらきっと、あの時の時間は無駄だったって思う日が来るかもしれな...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.29 Wed 09:07
「ヒロ、溝口達に裏で色々されてるみたいだな」 仕事の退けた後に、栄次にそう言われたとき、ヒロは思わず「は?」と間抜けた返事をしてしまった。組事務所には滅多に戻らない組長が、何故そんな細かいことを知っているのだろうか。 「良いか、ヒロ。舐められたらヤクザは終わりだ。組み手の時にでも良いから、溝口のことは1度きっちりと潰しておけ」 「ですが……」 暴走族の斬り込み隊長だということだし、溝口もきっとケンカなら強いのだろう。だが、サシで、拳だけで闘おうとするのなら、溝口はそう強...
真昼の月 | 2018.08.29 Wed 08:02
「まずは空手の基本を覚えろ」 「はい」 ジャージに着替えて行ったのだが、男達の格好はバラバラだった。金町はヒロと同じようにジャージのズボンにTシャツといういでたちだが、ジーンズ姿や革パン、スーツのジャケットを脱いだだけの男もいる。 溝口は革パンだ。 「俺はこれで闘い馴れてるからな」 そうイキがる溝口に、一応後輩として頭を下げ、ヒロもジャージの上着を脱ぎ、Tシャツ姿になった。 金町派にとって、ヒロなどただのホスト崩れだ。女受けする小綺麗な顔に、ほっそりとした優男。身長も18...
真昼の月 | 2018.08.28 Tue 08:01
JUGEMテーマ:JUNE/BL/ML 僕の家庭教師さま エピローグ(20) 悠がもう高卒以上の資格を取得していた事に唖然としてしまう雫はった。 どこかでそうじゃないかとは思っていた事ではあるが、やはり普通の高校生じゃなかった事に驚きが隠せない。 「じゃあなんで今悠がここにいるの?」 「そりゃ雫が居るからに決まってるじゃないか!」 それは前にも聞いた事がある話ではあるが、またあの時より深い情報が付け加えられると雫にだってまったく受け止め方が変...
時の過ぎ行くまま(Rink's Cafe別館) | 2018.08.27 Mon 10:26
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