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JUGEMテーマ:ものがたり その集落は円形で、それは完璧な真円で、常にそれが保たれていた。集落の中心には社があって、そこには麒麟が封じられている。そのために、つまり麒麟をそこに留めておくために、集落は真円でなければならなかったのだった。しかし普段はそこに、その社の内に麒麟を見ることは出来なかった。社は厳重に閉じられていて、その鍵は集落の代々の長が管理していた。ただ八十八年に一度だけ、社の扉が開かれ、麒麟が姿を現す。姿を現した麒麟は、集落のなかのただ一人に頭を垂れ、その人物は麒麟...
pale asymmetry | 2022.07.18 Mon 21:31
JUGEMテーマ:ものがたり エアーコンディショナーが流す空気の音だけが聞こえる白い場所だった。壁も床も天井も白い。美術館や博物館のように思えたけれど、何も展示されていない。その白は触るとやわらかそうだった。でも実際に触れてみると硬かった。微動だにしないぞ、という強い意志のようなものを感じた。そして同時に、そこには甘く完熟した因子が含有されているように思えた。そう思えたから、私は弟の半覚醒の内にいるのだということが解った。 半覚醒の弟は、ときどき迷宮を作り出す。そしてそこに私...
pale asymmetry | 2022.07.17 Sun 21:54
JUGEMテーマ:ものがたり 妹は美しいノイズだった。美しいのだから、それをノイズというのは間違いなのかもしれない。でも私がここで言うノイズは、決してネガティブな意味あいではない。そこに曖昧さはなく、不快さもなく、相反するようなプロトコルもない。そもそも妹は音ではない。私の隣に並んで歩く実態が、美しいノイズだと私には思えるのだ。 太陽はまだ森の向こうにあって、朝には違いなかったけれど、日差しが路面を照らしてはいない。早朝と呼ぶにも少しばかり早いような空の色、空気の気配、路面の...
pale asymmetry | 2022.07.16 Sat 21:42
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第4回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/ 45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/ 双子の姫が12になった年、公爵家に王...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2022.07.16 Sat 17:41
JUGEMテーマ:ものがたり 扉を開けると家の中が水に飲み込まれていたので、兄が帰っているのだと解った。家の中だけが水に飲み込まれるとはおかしな状態だけど、そうとしか表現出来ない状態なのだった。家中に水が満たされているわけでもなく、家の内部だけが水没しているというわけでもない。水に飲み込まれているのだ。海でも川でも湖でもない。どこにでもあってどこにもない水。概念的な水と言っても良い純粋な水に家の内部の空間がすっぽりと飲み込まれているのだ。放っておいたら消化されて無になるかもしれな...
pale asymmetry | 2022.07.15 Fri 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり 姉は、人差し指の長い爪で地面に短い直線を一本引いた。そこはアスファルトの路面だったけれど、綺麗な白いラインが描かれた。どれほどの強い力で擦ればそんなラインを描けるのか、私には解らない。私が思うに、地面はそんなに優しくはない。たぶん私がやれば爪が削れて欠けてしまうだろう。でも姉はそうなっていない。姉は地面と某かの強い繋がりがあるのか、それともすでに地面を組み伏せているのか、そのどちらかに思えた。どちらなのかは私には解らない。 白いラインの真ん中辺り...
pale asymmetry | 2022.07.14 Thu 20:57
JUGEMテーマ:ものがたり 巨大な水槽に挟まれた通路を、魔女が歩いている。黒いドレスを纏い、足運びによってその黒を銀色に輝かせながら。それは痛みを伴う足運びだったけれど、魔女は明らかにその痛みを愉しんでいた。右に顔を向け、魔女は水槽の水底に暗号を見つける。左に顔を向け、魔女は水槽の水底に解読キーを見いだす。立ち止まり、微笑み、唇を尖らせ、細く長く息を吸い込む。その瞬間、魔女の手には傘が現れた。 紅の傘。金の幾何学紋様で装飾されている。傘を開いて魔女は軽く踊る。彼女はその踊り...
pale asymmetry | 2022.07.12 Tue 22:12
JUGEMテーマ:ものがたり 彼女は歩く。廃墟の狭間を。その場所がかつて街だったのか、そこに営みがあったのか、それは彼女には解らない。この世界が誕生したその瞬間から、この場所は廃墟だったかもしれない。その可能性は否定出来ない。どんな可能性も否定出来ない。歩いている彼女がこの世界に所属していない可能性さえ。 音が響く。雷のような響き。しかし雷にしてはざらつきが強すぎる響きだ。だからそれはミサイルの巡航音だろう。すると戦争はまだ続いているのか。ミサイルは彼女の進む延長上に落ちるの...
pale asymmetry | 2022.07.11 Mon 21:36
JUGEMテーマ:ものがたり 誰かが掠ったのだ。この世界の前世を。私たちはだから知らない。この世界の幼い記憶を。私たちはつい世界が最初から成熟していると思ってしまうけれど、この世界だっていつかの瞬間に生まれたに違いないのだ。何者が生み出したのか、と問うてはいけない。それは禁忌の事象。誰かが叫んだ可能性は否定されることはないが、肯定されることもない。それは否定と肯定が重なったまま成立している現象だ。過剰な現象だと言っても良いだろう。ある人にとっては、それは肯定と否定が重なったまま成...
pale asymmetry | 2022.07.10 Sun 21:42
JUGEMテーマ:ものがたり 川の畔に立っていた。コインのような形の、オレンジ色の石で埋め尽くされた川原だった。陽光は鋭く、空は銀色に破裂していた。その勢いで宇宙も消し飛ばされてしまったかのように、作り物めいた平たい空から陽光が降り注いでいた。そしてその光がオレンジ色の石の表層で魔術のように弾け、その弾け具合がくすくす笑っているように感じられた。 私は確か地下道を歩いていたはずだ。でも今は川の傍らに立っている。そんなに広くはない川、水は濃い青で川底は深そうだ。あるいは底はない...
pale asymmetry | 2022.07.07 Thu 21:48
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