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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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Deep in her bones

JUGEMテーマ:ものがたり    彼女は歩く。廃墟の狭間を。その場所がかつて街だったのか、そこに営みがあったのか、それは彼女には解らない。この世界が誕生したその瞬間から、この場所は廃墟だったかもしれない。その可能性は否定出来ない。どんな可能性も否定出来ない。歩いている彼女がこの世界に所属していない可能性さえ。  音が響く。雷のような響き。しかし雷にしてはざらつきが強すぎる響きだ。だからそれはミサイルの巡航音だろう。すると戦争はまだ続いているのか。ミサイルは彼女の進む延長上に落ちるの...

pale asymmetry | 2022.07.11 Mon 21:36

Half awakening of the bone

JUGEMテーマ:ものがたり    誰かが掠ったのだ。この世界の前世を。私たちはだから知らない。この世界の幼い記憶を。私たちはつい世界が最初から成熟していると思ってしまうけれど、この世界だっていつかの瞬間に生まれたに違いないのだ。何者が生み出したのか、と問うてはいけない。それは禁忌の事象。誰かが叫んだ可能性は否定されることはないが、肯定されることもない。それは否定と肯定が重なったまま成立している現象だ。過剰な現象だと言っても良いだろう。ある人にとっては、それは肯定と否定が重なったまま成...

pale asymmetry | 2022.07.10 Sun 21:42

石を洗う

JUGEMテーマ:ものがたり    川の畔に立っていた。コインのような形の、オレンジ色の石で埋め尽くされた川原だった。陽光は鋭く、空は銀色に破裂していた。その勢いで宇宙も消し飛ばされてしまったかのように、作り物めいた平たい空から陽光が降り注いでいた。そしてその光がオレンジ色の石の表層で魔術のように弾け、その弾け具合がくすくす笑っているように感じられた。  私は確か地下道を歩いていたはずだ。でも今は川の傍らに立っている。そんなに広くはない川、水は濃い青で川底は深そうだ。あるいは底はない...

pale asymmetry | 2022.07.07 Thu 21:48

一角獣の朝

JUGEMテーマ:ものがたり    時間が止まらない事象である以上、朝は必ず来る。それは富める人にも、病める人にも、戦う人にも、逃げる人にも、瞑想する人にも、そして私にも。私は裕福ではなく、病んでもいない。戦ってもいないし、逃走中でもない。瞑想はといえば、微かにそれに浸っているかもしれないけれど、強い自覚があるわけではない。それでも朝はやって来るので、私は一角獣に水を与えなければいけない。  水といっても、もちろん水道水では駄目だ。ミネラルウォーターやスパークリングウォーターとかでも...

pale asymmetry | 2022.07.06 Wed 21:24

The sweet soul of flowers

JUGEMテーマ:ものがたり    新月の夜だけど、闇に埋め尽くされていたわけではなかった。ホタルのような小さな光が、ホタルのように漂っていたから。淡い橙色のその光は、時間の進み具合を奇妙にもたつかせているようで、世界は足踏みと蹴躓きを繰り返しているように私には感じられた。それとも、私自身が足踏みと蹴躓きを繰り返しているのだろうか。いっそのこと宙ででんぐり返って、首の骨を折り砕いた方が良いのではないだろうかなどと考えたりもしていた。  光から滲む色彩が、花畑を浮かび上がらせていた。そ...

pale asymmetry | 2022.07.04 Mon 21:03

Falling wings

JUGEMテーマ:ものがたり    彼女は校舎の屋上から、ひらりと飛び出した。この校舎を取り巻く空気は優しい粘性を秘めていて、この世界の物体の運動に関する法則はすでに無効化されていると信じているのだろう。あたしにはそれは信じられないから、彼女はグランドに向かって加速しながら墜ちていく。鈍い音が響いて屋上から覗くと、グランドの隅、校舎の脇で彼女が横たわり鮮血を広げている。 「私は翼を持っているのよ」  傍らにはいつの間にか彼女が立っている。あたしはその彼女の顔を真っ直ぐに見つめる。そ...

pale asymmetry | 2022.07.03 Sun 22:07

The fruit of the giant

JUGEMテーマ:ものがたり    小さな渦が、二十四時間以内に巨人に発達するという放送が集落全体に流れた。けれどそれがどこで起こっているのかは放送されなかったので、僕らは集落を隅から隅まで探し回らなければいけなかった。もちろんその放送の目的は、巨人は危険な存在だから消滅するまでの間は頑丈な建物の中に避難していなさいということだったけれど、僕らはその巨人の姿を見たかったのだ。観測したかった、と言った方が正確かもしれない。だって、観測されなければ、巨人の存在は確定されないのだから。 「...

pale asymmetry | 2022.07.01 Fri 21:49

Hugging time

JUGEMテーマ:ものがたり    お昼休み、職場の近くの公園でお弁当を食べていたら、目の前にUFOが着陸した。アダムスキー型だった。非常識だと思った、二つの意味で。一つは、音もなく土煙も立てず、衝撃波もなくそよりと空気を揺らすこともなく着陸したこと。UFOはもっと派手に登場しないと。もう一つは皆がくつろいでいる公園で我が儘に場所を占有したことだ。とそんなことを考えながら周囲を見回すと、公園には私しかいなかった。さっきまでは大勢の人が確かにいたから、ということは未知の殺人光線か何かで皆消滅し...

pale asymmetry | 2022.06.30 Thu 22:11

けんのうろ

JUGEMテーマ:ものがたり    祖母はそれのことを『けんのうろ』と呼んでいた。人の形をしていたけれど、確かにそこに何かが存在しているようには思えなかった。何もない、というか濃厚な闇がわだかまっているような感じ。だから『けんのうろ』の『うろ』は『洞』のことなのだろうと、私は理解していた。『けん』の方はよく解らない。それが何なのかを私に教えずに、祖母は逝ってしまった。 「また穢れてしまっているね」  生前の祖母が私にそう声をかけるときは、決まって雨が降っていた。それはいつもと違うよ...

pale asymmetry | 2022.06.27 Mon 21:33

Early summer garnet

JUGEMテーマ:ものがたり    休日の朝、珍しく早い時間に目が覚めたのでベランダの掃除をしてみる。隅々まで綺麗に洗い流して、サボテンたちにたっぷりと水をあげる。海からの風がいつになく清涼に感じたので、スタンドを組み立ててハンモックを広げてみた。正午過ぎまでこの場所には日が当たらない。だからこの風を愉しんでみたくなったのだ。といっても、この風に纏われながら微睡みたかったのが本音だけど。  ハンモックに包まれて横たわる。遠くで鳥の声が聞こえる。一直線に低い空を横切る赤い鳥のイメージを...

pale asymmetry | 2022.06.26 Sun 21:47

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