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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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指先の繊細

JUGEMテーマ:ものがたり    瑠璃色のドレスはキラキラと笑っていた。誘うように笑っていた。何が煌めいているのかマテリアルは解らなかったけれど、その煌めきは静かな主張だった。世界に対する主張だった。あるいはアジテーションだったかもしれない。有り触れたルーティンで構築された世界、イレギュラーなイベントが起こったとしても、それさえも有り触れたイレギュラーだったりする世界に対しての。  少女たちは踊っていた。操り人形がデタラメに操られるように踊っていた。燃えさかる炎のような様式のボンネ...

pale asymmetry | 2021.06.27 Sun 21:09

Eyeball bathing

JUGEMテーマ:ものがたり    受付に行くと、髪の長い女子が対応してくれた。笑顔で、丁寧な言葉で、やわらかい対応。でも左目はピンクのアイパッチで隠されている。この子も入浴中なのだろう。スタッフが仕事をしながら入浴してしまうのだから、よほど気持ちが良いのかも知れない。俄然期待が膨らむ。 「本日は露天風呂の日ですので、露天風呂のご利用額が半額になっています」 「じゃあ露天風呂の方でお願いします」  料金を精算し、タオルとアイパッチを受け取る。コバルトブルーのアイパッチだった。表面...

pale asymmetry | 2021.06.26 Sat 21:37

おにぎり

JUGEMテーマ:ものがたり    その背中は、少年にしか見えなかった。貧弱な、まだ世界をよく知らない少年の背中にしか見えなかった。彼は小さな社に向かって背中を丸めてしゃがみ込んでいた。泣いているように見えた。途方に暮れているように見えた。小さな社よりもさらに小さな身体は、強い風が吹けば吹き飛ばされてしまうのではないかと思えた。 「幼子のようですね」  私は師匠に囁いた。 「子供は赤くはない。人間の子はな」  師匠は簡潔に答え、歩みを止める。私もそれに従った。確かに、その背中は...

pale asymmetry | 2021.06.18 Fri 20:22

strata viarum

JUGEMテーマ:ものがたり    鋭い日差しが真上から街路に突き刺さっていた。路面は石によって舗装されていた。真上からの陽光は影を殺し、路面は光だけが跳ね回って輝いていた。静かな真昼だった。何故か人通りはなかった。まるで皆がこの陽光を嫌ったかのように。あるいは、嫌ったのは路面の輝きの方だろうか。私は路地をゆっくりと歩いていた。見知らぬ街の見知らぬ路地だった。けれどどこかで、今までの人生のどこかで、既に通り抜けている路地のように思われたりもした。どこか懐かしさを感じていたりもした。個性...

pale asymmetry | 2021.06.16 Wed 21:24

石響いくさ

JUGEMテーマ:ものがたり    マンジュというのはとても希少なもので、だからそれを所有する人もごく限られている。聞いたところによると、十人に見たいない数なのだそうだ。室町の時代からマンジュの数は増えていないとも聞いた。今の所有者たちはその時代から代々受け継いできた者たちなのだそうだ。とにかくマンジュがなければ石響いくさは始まらない。だからマンジュを所有する者だけが、石響いくさを開催できるのだった。  マンジュとは万樹と書くのだそうだ。けれど私は、それはもともと万呪と書いたのではな...

pale asymmetry | 2021.06.11 Fri 20:57

海へ還るもの

JUGEMテーマ:ものがたり    透明な自転車で、少年は岬の先端まで走った。海へ還るものたちを観察するために。  風は海から吹いていた。けれどその風はあまり賢そうには思えない。賢い風ならば、海に向かって吹くはずだから。少年はそう思って岬の先端から水面を見下ろした。強い風が水面に尖った鱗を纏わせている。綺麗な衣装に見えた。どこにもないマテリアルで生み出された衣装だと思えた。そういう衣装を纏えば、自分も巨大になれるのだろうかと少年は考えてみた。つまり少年にはその海が、巨大な生命体に見え...

pale asymmetry | 2021.06.08 Tue 22:13

鉱針鳥と夏の種子

JUGEMテーマ:ものがたり    雨は午前中に上がり、昼食時には空はすっかり青に埋め尽くされていた。結局午前中には採掘斑から何の連絡も入らなかった。そんな日がもう一週間も続いている。毎朝出勤して機器の点検をすると、あとは何も仕事のない日々。その代わりに文献を読みあさり、論文を書く。それを繰り返して時間を巡る毎日だった。こんな毎日なら一生続いても良いな、と昼食を食べながら思う。このあとは少しだけ午睡をして、また文献を読みあさろう。そう考えているときに、壁のスピーカーから声が響いた。 ...

pale asymmetry | 2021.05.31 Mon 21:33

DANCE KONJAC

JUGEMテーマ:ものがたり    砂浜には風が吹いていて、空は青かった。太陽はどこにも見えなかったけれど、空全体が光に満ちていた。私はそこに横たわっている。背中に感じる砂は程良い暖かさで、吹き抜ける風も乾いた涼しさを身に纏っていた。私は考えなければいけない。第一にここはどこか。第二になぜここにいるのか。第三に世界とは何か。第四に私とは何か。そして第五に、何故考えなければいけないのか。 「どうせ時間は限られているに違いないのに」  私は呟き、上半身を起こす。水平線はハレーションを過...

pale asymmetry | 2021.05.30 Sun 21:29

船の星

JUGEMテーマ:ものがたり    森の奥に石の積まれた場所がある。丸い石を三角に積み上げた場所が。それは翠色の石で、でも紅色にも見える、本当は漆黒の石なのだという。その場所には、それが必要な者だけが必要なときに辿り着けるのだという。つまりそれは、この世界とは少しずれた場所なのだろう。かといって、異境と言うほどではない。この世界としっかりと繋がってはいるのだけれど、少しずれた場所。私たちにはそういう場所が必要になるときがあるものだ。少年もまたそうだった。  その場所に辿り着いた少年は...

pale asymmetry | 2021.05.18 Tue 21:20

自己確認の回路

JUGEMテーマ:ものがたり    ほぼ裸の男性は腰の周りにだけ鎧のようなものを纏っていた。それ以外の露出された身体は、分厚い筋肉に覆われていて、さらにその筋肉の表面には複雑な幾何学紋様の入れ墨が描かれていた。 「彼が最初の踊り手です」  私を案内してくれている島の観光担当者が、指を差す。男性は大きく股を開き、拳を握りしめて立っている。顎を上げ空を見つめていたけれど、その表情は良く解らない。顔にも細かな入れ墨がぎっしりと描かれていたせいだった。睨んでいるように思えた。でも微笑んでいる...

pale asymmetry | 2021.05.14 Fri 21:15

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