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JUGEMテーマ:ものがたり はぐれ山羊が都市を通過するので、その間都市はロックダウンされる。でも僕たちは家を抜け出し、ビルディングの屋上に集合していた。上手く家から逃げ出せたのは僕を含めて六人。見知った顔は一人もいない。だから僕らは名乗り合わなかった。お互いのことは知らない方が良い。どうせ何人かは命を失うだろうから。 「あれかな?」 東の方角を指差し、誰かが叫んだ。皆がそちらに駆け出す。でも僕は追随しなかった。はぐれ山羊は東からは来ない。南からやって来るのだ。どうやらはぐ...
pale asymmetry | 2022.12.04 Sun 21:28
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第17回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/ 45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/ 時は遡(さかのぼ)って、リーリエのお...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2022.12.04 Sun 19:16
JUGEMテーマ:ものがたり 朝、顔を洗って鏡を覗いたら、私の額にカードが張り付いていた。剥ぎ取ろうとするとひらりと飛翔し、目まぐるしく回転しながら私の手に降りる。ちょうど私の掌ぐらいのサイズ。カードには目が描かれている。黄金色の紋様的な目。そこから長い四肢が生え出ていて、とくに長い腕の片方を空に、もう片方を地面に伸ばして指差している。天と地を指し示す存在。〈ザ・アイズマン〉のカードだ。 これはメンターのカードだ。今は遠い地にいるはずのメンターが私に何かのメッセージを送っ...
pale asymmetry | 2022.12.03 Sat 19:50
JUGEMテーマ:ものがたり 「祈られるのは好きではないのだ」 岩が僕に言った。長く生きた者特有の落ち着いた口調だった。けれどどこか声には幼さが感じられる。ひょっとしたら、この岩はまだまだずっと未来までここに存在し続けるということなのだろうか。そういう予知能力を有しているのかもしれない。それならば皆がこの岩に祈り、崇めたとしても当然のことのように思われる。 「それは間違いなのだ」 僕の思考に岩が答える。どうやら僕の考えていることが解るようだ。たぶん岩の声も、僕にしか聞こえ...
pale asymmetry | 2022.12.01 Thu 20:47
JUGEMテーマ:ものがたり 岬の先端には白銀の灯台が建っている。先端のみならずその全体が輝いていて、昼夜を問わずその輝きが船乗りたちを導いていた。それは方角を教えるだけではなく、そのときどきの運勢や、進むべき夢の行方、あるいは過去の過ちの正し方など、多岐にわたっていた。だから船乗りたちだけでなく、多くの旅人がその灯台を頼りにした。いや、その灯台に住む魔女を頼りにしたのだった。 「お前が来ることは解っていたよ」 扉を開いた僕に、魔女が一枚のカードを投げた。回転するそれを僕は...
pale asymmetry | 2022.11.28 Mon 22:01
JUGEMテーマ:ものがたり 精密機械の甲虫たちだった。外殻が透明で、中にぎっしりと歯車が詰まっている甲虫たちだった。いや、それはいわゆる歯車には見えない。だから本当は歯車ではないのかもしれない。けれど私には、それは歯車としか思えなかった。それは銀河に似ていた。微細な無数の煌めきが、それぞれの軌道でひしめき合っていたのだった。秩序に基づいて連動しているようにも見えたし、出鱈目に掻き乱すだけの現象にも見えた。 違う。これは秩序だ。もう世界は終わっている。けれど世界の複製は消えな...
pale asymmetry | 2022.11.23 Wed 21:50
JUGEMテーマ:ものがたり 夕暮れ時、仕事帰りに海沿いの遊歩道を歩いていると、路面に大きなオタマジャクシのような黒い染みが浮かび上がっていた。傾いた太陽からの茜の光を浴びて、そのオタマジャクシは今にも空中に泳ぎ出しそうに思えた。オタマジャクシにしては尾が長い。そしてオタマジャクシにしては少し先端が尖りすぎている。 「シャクジ」 私は思わず呟いていた。立ち止まり、じっと見下ろす。間違いなく、それはシャクジだった。周囲を見回し、誰もいないことを確かめてから、私は膝を折り顔を近...
pale asymmetry | 2022.11.19 Sat 21:14
JUGEMテーマ:ものがたり ビルとビルの狭間に、その冷蔵庫はぽつんと置かれていた。何かの目印のように思えた。ここから何かが始まる起点のようにも思えた。あるいはこの場所こそが何もかもの終着点のようにも思えた。そうであるならば、私はこの冷蔵庫を開けなければならないのだろう。その内部にはこの世界の始まりが冷やされているのかもしれないし、この世界の終わりが凍っているのかもしれない。 夜の真ん中で、私は冷蔵庫に触れる。街灯が一切あたらない場所であったのにもかかわらず、冷蔵庫は仄かに輝...
pale asymmetry | 2022.11.17 Thu 21:55
JUGEMテーマ:ものがたり この都市には七十二本のタワーが建っているのだという。数えたことがないから本当のことなのかどうかは私には解らない。それに、私がこの都市に着いてからまだ六時間足らずしか経過していないから、タワーの数だけではなくこの都市に関する他のことも、私は知らない。 「船はいつ来るのですか?」 碇人に私は尋ねる。全身を朱色の衣装で包み込んだ長身の碇人は、東の低い空を指差す。その辺りは茜と紫紺が重なるような色彩をしていた。 「十六夜の月が昇り、それに火星が寄り添...
pale asymmetry | 2022.11.11 Fri 21:48
JUGEMテーマ:ものがたり テーブルの上にはピラミッドのボード。その四角錐を取り囲み十八の宝珠が踊るように漂っている。九つの色彩の宝珠たち。だから同じ色彩の宝珠が二つずつ。でも連舞はしない。十八の軌道で十八の世界を描いている。あるいは十八の世界の地図を描いている。決して重なり合うことのない世界。けれど完全に切り離されることもなく、どこかで契りを結んでいるのだ。けれどその契りは厳重に秘されている。僅かでもそれを顕わにすることは禁忌の極みだった。 テーブルを挟んでソファーが二つ...
pale asymmetry | 2022.11.04 Fri 21:18
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