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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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年速3.8センチメートル

JUGEMテーマ:ものがたり    まだ細身の上弦の月だった。けれど、その輝きはもの凄くて、星々は全て月光に飲み込まれ、瞬きは一つも見えなかった。その月光のせいで、僕は河川敷で目が覚めた。夜風が冷たく手足の先が少し痛い。いつの間に眠ってしまったのだろう。というかここはどこだろう。見覚えのない河だ。月光を受けて、何故かその川面は紫色に輝いている。どうしてだろう。この河はそんなに高貴なのだろうか。  そして少年たちが飛んでいる。  愉しそうに飛び回っている。  彼らの手には、小さなラ...

pale asymmetry | 2022.01.25 Tue 21:46

求愛される子ら

JUGEMテーマ:ものがたり    子供たちは、十四人いました。全て男の子でした。それはいつものことで、子供たちに女の子が混じることはありませんでした。どうして女の子が混じることがないのか、私はずっと不思議に思っていました。だって、神様に性別はありません。どこかの神様にはあるのかもしれませんが、少なくともこの地の神様には性別はありません。男でも女でもない、両性具有というわけでもなく、性を超越した存在なのです。なのに、神様はいつも男の子しか選ばない。私はこのことを姉に尋ねたことがありまし...

pale asymmetry | 2022.01.18 Tue 21:32

月兎を飲む

JUGEMテーマ:ものがたり    目が覚めると、海辺の遊歩道を歩いていた。まただ。こういう目覚めを、今までに何度も経験した。つまり眠っている間に歩き回っているのだ。そして目覚めたときに、見知らぬ場所にいる。もちろん、今いるこの場所も私には心当たりがない。  夜だ。それは解る。淑やかな夜だ。それも解る。  卑猥な満月が、中天にある。それは嘘かもしれない。  仄かに輝くウサギが、波打ち際で転がっている。それも嘘かもしれない。  目覚めているはずだけど、過剰に覚醒しているようで、嘘...

pale asymmetry | 2022.01.16 Sun 20:50

Confession of a fake gardener

JUGEMテーマ:ものがたり   「まあ、そうですね」  私のついた最初の嘘は、これだった。質問の方はよく憶えていない。難しいことを訊かれたのだ。私にはさっぱり解らないことを。でも解らないと答えられる雰囲気ではなかったので、私は澄まし顔で頷きながら、「まあ、そうですね」と言ってしまったのだった。今から半世紀前の話だ。それから半世紀の間、私はずっと嘘を吐き続けいる。  私は庭師だ。この国では結構有名な庭師で、大きな庭の制作にも幾つか係わった。しかし私はもともと庭造りを趣味で始めたのだ...

pale asymmetry | 2022.01.15 Sat 21:23

An easy story to aim for the morning

JUGEMテーマ:ものがたり    車両内部には椅子が一つもなかった。長方形のフロアが広がっているだけだ。フロア面は濃い茶色で、澄まし顔で何事も解決してしまう賢い老婆のようだった。 「どの車両もこんな感じなの?」  僕の問に友達は頷き、薄く笑う。 「もちろんそうさ。この列車は多くのことが自由なんだよ」  友達はそう言いながら、両手を掲げて二本の指を素早く折り曲げる。カギ括弧付きの自由ということなのだろう。それがどういう意味なのか、本当に意味があるのかは解らない。意味ありげな顔で...

pale asymmetry | 2022.01.14 Fri 21:08

麒麟の紋様遊戯

JUGEMテーマ:ものがたり    頭の痛みは回転する結晶のように煌めきを撒き散らしていた。その煌めきは私の頭蓋骨の内側を無数に叩いて、私を超越的な覚醒へと導こうとしているようだった。けれどもちろんそんな方向へと進むことなど私には出来ない。私はありきたりな人間なのだ。特別な能力を秘めているわけではなく、何者かに選ばれた存在というわけでもない。だからこの痛みはそういった類いのものではなく、単なる先触れなのだろう。麒麟がもうすぐ現れるという。  私は地面に身を伏せ、息を潜める。漆黒の谷全...

pale asymmetry | 2022.01.10 Mon 21:51

The world enemy

JUGEMテーマ:ものがたり    金色と銀色が混ざることなく渦巻くような、そんな光に満ちた部屋だった。室温はかなり高い。床も壁も天井も無塗装のコンクリートで、どこにも空調機器らしきものは見当たらない。どうやって、この温度を保っているのだろう。壁に触れてみる。ヒンヤリしている。壁や床が発熱しているのではなさそうだった。 「あれがそうです」  老紳士が部屋の奥を指差す。そこには石柱があった。私の腰くらいの高さ。黒い八角形の石柱だった。表面は磨き上げられていて、少し近づくと私の姿がぼん...

pale asymmetry | 2022.01.08 Sat 21:08

The Stone peg

JUGEMテーマ:ものがたり    そこは館の一番奥の部屋だった。窓がなく弱い照明のせいで薄暗い部屋だった。床は一面石のタイルだったけれど何故か仄かに温かかった。それが何かの仕掛けによるものなのか、それとも敷き詰められた翠色のタイル石そのものが持つ特性なのか、もちろん私には解らない。そもそも照明が翠色だったので、床の色が本当に翠色なのか、照明によって色づけられているのかさえはっきりとは解らなかった。 「あれですよ」  案内してくれた青年が部屋の中央を指差す。そこには奇妙な形の石が置...

pale asymmetry | 2022.01.04 Tue 20:09

Neutraltopia

JUGEMテーマ:ものがたり    どこにもない場所を、僕たちは目指していたはずだった。ゆっくりと、本当にゆっくりと夜が明けようとしていて、その裾を装飾するように花火が打ち上がった。金色と銀色と橙色の花火だった。音は聞こえない。全く聞こえない。僕はじっと花火を見つめ、耳を澄ましていたけれど、それが炸裂する音は世界には拡がらなかった。 「きっと、あれは花火の幽霊なんだよ」  君はそう言って、大げさに肩を竦める。真夜中にたっぷりと着込んで出発したから、歩き続けて君の顔は上気している。で...

pale asymmetry | 2022.01.01 Sat 21:33

片恋のシャーラ(プロトタイプ版)23

JUGEMテーマ:ものがたり                ・片恋のシャーラ(プロトタイプ版)の第23弾です(詳しい説明は第1弾に書いてあります)。    他のページはコチラ→「片恋のシャーラ(プロトタイプ版)1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/24/25/26/27/28/29/30/31/32(終)」  (下部にある「カテゴリー別・小説一覧」からも他ページに跳べます。※他の小説も混じった「もくじ」になっています。)      いつもの...

言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2022.01.01 Sat 19:18

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