[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ものがたり ゆるやかなアーチを描く石造りの橋だった。石は極淡い黄金色をしていた。輝いているわけはなかったけれど、それは確かに黄金色で、撫でてみると表層は僅かにざらついている。なのに指に御張り付く感じもする。何かが、極微量の何かが流れ込んでくるような感覚があった。いけないことのような気もした。この橋の表層を撫でることは、禁忌のような気がした。でも僕はその表層に指を滑らせて、流れ込んでくる何かを躊躇なく受け入れた。指から流れ込んだそれは、頭の旋風から螺旋を描いて天へ...
pale asymmetry | 2021.10.23 Sat 21:26
JUGEMテーマ:ものがたり アンブレラを用意してはいたけれど、私はテレフォンボックスに逃げ込んだ。そこからの方が落ち着いて観察出来ると思ったから。傘は雨を解けることは出来たけれど、獣を避けることは出来ない。もっとも、獣たちは私に見向きもしていないし、そもそも私の存在を感知することが出来ない様子だった。獣たちは皆人形を喰らうことに夢中だった。空から降ってくる人形を。 空は輝く灰色だった。そこには無数の煌めきが散りばめられていた。それらが何者かに払われたように、あるいは祓われた...
pale asymmetry | 2021.10.21 Thu 21:39
JUGEMテーマ:ものがたり 私は目覚めてもいない。私は眠ってもいない。覚醒は空回りし、眠りは乖離しているのだ。そこには結論はなく、規則などあるはずもなく、ただ仮定だけが渦を巻く。そしてそれは何者にも保証されていない。笑ってしまいそうだ。擽られているわけではない。空が、途方もなく高い空がエメラルドのベールを纏っているからだ。それは貞淑さの証ではなく、どこまでも秘された戯れごとの熱だ。漏れ出てきているわけではなのに、私に感じさせようと挑発しているのだろう。 私はまんまと感じてい...
pale asymmetry | 2021.10.20 Wed 20:53
JUGEMテーマ:ものがたり 私の中学には、同級生に石がいる。同じクラスで机を並べている。青い石だった。少し白く陰った石で、輝きはなく澄んだ感じもなく、何を考えているのかよく解らないような印象の石だった。石なのだから、何も考えていないと思われるだろうか。でもその石は私たちのクラスメートなのだ。私たちと同じ中学生で十四歳なのだ。実際のところは全然解らない。でもその石は私たちと同じような子供だとされていた。 だから、私たちのクラスの誰かが、順番で毎日連れて帰り、家の井戸水で清めな...
pale asymmetry | 2021.10.09 Sat 21:31
JUGEMテーマ:ものがたり 鐘の音。尖った鋼の音。時間を沈ませる音。空気を眠らせる音。その音で、私は目覚める。ベッドから上半身を起こすと、窓際に立つ私が見えた。その私がベッドの私を見つめて、やわらかく微笑む。 「緊張してはいけないわ」 窓辺の私が囁く。声がベッドに届いた瞬間に、ベッドの私は緊張する。でも身体から力が抜けて、起こしていた上半身を再びベッドに沈める。 「そうそれで良い。私たちには休息が必要なのよ」 声を聞きながら私は考える。ここはどこだっただろう。遠い異...
pale asymmetry | 2021.10.07 Thu 21:13
JUGEMテーマ:ものがたり その洋館は、土曜日の夜にだけ窓に明かりが灯る。深夜、犬と散歩をしながらそれが気になっていた。土曜日以外の夜は、誰もいないのだろうか。するとこの洋館の住人は、毎週土曜日にやって来て日曜日には去って行くのだろうか。普段は別の場所に住んでいるのだろう。そして週末だけここにやって来て、たぶん庭の手入れをしているのだろう。そう思うのは、その洋館の庭はとても綺麗に整っていて、どの季節にも乱れたことがなかったからだ。一体どんな人物が庭の手入れをしているのだろう。そ...
pale asymmetry | 2021.10.03 Sun 21:33
JUGEMテーマ:ものがたり ヒグラシの声で目が覚めた。全ての窓が開け放たれていたから。窓は東西南北の四方向にあったけれど、そのどこからも風は流れ込んでいない。ヒグラシの声と陽光だけが滲むように部屋に侵入している。この部屋は侵されている。私が不可能犯罪を犯しているのでないかぎり。いや、暑さと喉の渇きで、奇妙な妄想に囚われている。 ベランダに出て開けた風景を取り込めば、少しは涼しくなるかもしれない。そう思ってみても身体が動かない。重い夢の余韻が、私の身体をまだ隅々まで支配してい...
pale asymmetry | 2021.09.26 Sun 21:30
JUGEMテーマ:ものがたり 小さなフィギュアたちは輪を描いて並べられていた。それは踊っていた。王冠を戴いて踊っていた。アルファロメオジュリエッタスパイダーのボンネットで、フィギュアたちは儀式に夢中になっているように見えた。いや実際に密かな儀式だったのかもしれない。ダッシュボードに置かれたトーチが、その儀式を浮かび上がらせている。それはビームとなって、その向こう側の水平線へと伸びている。すぐに減衰して、世界に踏みにじられていたけれど。 「私たちはいざようわけにはいかないのよ」 ...
pale asymmetry | 2021.09.22 Wed 21:29
JUGEMテーマ:ものがたり 僕と彼女は、砂浜に小さな椅子を並べて腰掛けていた。東に面した砂浜。広がる海は完璧な凪ぎ。風はなく、それなのに空気がサワサワと沈み続けているような気がする。それは昼間の季節と夜の季節にずれがあるからだろう。あんなに暑かった昼の後、清浄な寒さの夜に僕らはいる。このずれは心地よかった。こういうずれを直接的に感じていると、何か特別な存在になったような気持ちになる。身勝手な空想だけど。 「夜は寒いね」 ランプの灯りを見つめて、彼女が呟く。独り言だったかも...
pale asymmetry | 2021.09.20 Mon 21:31
JUGEMテーマ:ものがたり クビナシクイナを乗りこなすことは、私には全く無理だった。だって、オーラを読み取ってそれをコントロールするというのだから、そんなことは私には不可能だ。今までオーラなるものを目にしたことがないし、それが見えるものだなどと信じたことさえない。もちろんそんな才能は微塵もない。というわけで、私が跨がったクビナシクイナは並走するガイドのK君が操ってくれた。 長い二本の脚をもつザボン。クビナシクイナはそういうのがぴったりの生物だ。身体の表面の触り心地もザボンの...
pale asymmetry | 2021.09.17 Fri 21:01
全1000件中 251 - 260 件表示 (26/100 ページ)