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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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源を巡らせる

JUGEMテーマ:ものがたり    僕たちは大きな輪になって腰掛けていた。僕たちは五人しかいなかったので、互いに距離はかなり離れていた。だからそれは、本当は円を描いていたわけではないかもしれない。例えばそれは五芒星で、その五つの先端に僕たちは位置していたのかもしれない。あるいは、もっと複雑な多角形の頂点のいくつかに位置していたのかもしれない。何にしても僕らの中心には炎があった。金属フレームのガラス張りのピラミッド、それは掌に乗るくらいの大きさのピラミッドの内部で、炎は燃えていた、はずだ...

pale asymmetry | 2021.08.14 Sat 22:02

August dream

JUGEMテーマ:ものがたり    翼が落ちた。ああ、八月なのだなと思った。  私の翼は、八月になると生え替わる。これは人によって様々で、冬の人も春の人もいるけれど、私の場合は真夏に生え替わるのだ。何故だか毎年そのことをすっかり忘れていて、ある朝妙に全身が怠いなと思ったら、背中が軽くなっていて、ベッドの脇に翼が落ちていたりするのだ。そして、ああ八月なのだなと毎年思うのだった。  それは毎年八月だけど、日付は微妙に違う。八月に入ってすぐの時もあれば、明日から九月という日の年もある。ど...

pale asymmetry | 2021.08.08 Sun 21:40

怪物と手を繋いで

JUGEMテーマ:ものがたり    怪物と手を繋いで歩く。歩くスピードが僕の方が速いので、自然と僕が怪物の手を引っ張ることになる。サラサラと揺れる毛とやわらかい肉球のある掌。それを握る僕の手はとても心地よかった。 「離してはいけないよ」  のんびりとした口調で怪物が言う。背は僕より随分と高かったから、声は斜め上から降ってくる。鋭角に降ってくる。 「離さないよ」  僕は前を向いたまま答えた。薄暗い通りに、街灯の仄かなオレンジが並んでいる。その光は揺らいでいる。僅かに潮流があるせい...

pale asymmetry | 2021.08.06 Fri 20:26

World kaleidoscope

JUGEMテーマ:ものがたり    コンビニのパーキングの真ん中で、彼女は両脚を大きく開いて立っていた。腕を組んで、空を見上げている。星を眺めているのだろうか。それとも夜そのものを眺めているのだろうか。コバルトブルーのAラインワンピースを纏っている。その色は今夜の空の色と似ていたけれど、それよりもずっと凜とした直進力を秘めているように思えたのは、彼女が僕に気づいてもまだ空を見つめていたからだろうか。袖のないその衣装が格好良くて、僕もあんなワンピースを着たいなと思ったけれど、そうすると父...

pale asymmetry | 2021.08.04 Wed 21:58

樹と蛇

JUGEMテーマ:ものがたり    弟が昆虫を探したいというので、里山に出かけた。家からは五分くらいのところ。全く整備されてはいないが、獣道があるのでそれに沿って奥に進む。鬱蒼と、という形容がよく似合う森。でももちろん面積は広くはないので、迷うことはない。万が一迷ってしまったとしても、真っ直ぐに進み続ければやがて森のどこかの端っこに辿り着く。そういう里山だ。 「ねえ、声が聞こえない?」  捕虫網を肩に担いでゆっくりと歩いていた弟が、立ち止まり首を傾げる。私も立ち止まり、耳を澄ます。...

pale asymmetry | 2021.07.31 Sat 21:35

The other side beyond

JUGEMテーマ:ものがたり   「僕は死んでいるのか、それとも生きているのか、微妙なところだと思わないかい?」  円柱立体モニタの内部で、彼は穏やかに笑っている。 「何も微妙じゃない。あなたは完璧に死んでいるわ」  私がそう言い放つと、彼は肩を竦める。 「完璧っていいね。何にしても完璧はいいよ。でも君はそれをどうやって証明する。こうして僕と話をしているのに」  私は思わず笑ってしまった。呆れてしまって。 「証明って、そんな必要全くないわ。私はあなたが死んだことを知っている...

pale asymmetry | 2021.07.30 Fri 21:35

稀月露

JUGEMテーマ:ものがたり    砂浜は西の海に面していて、太陽はもう水平線の近くまで傾いている。少しだけ淑やかな茜を纏っていた。それでも放つ熱はまだまだ鋭い。歩きながら、私は額の汗を拭う。斜め前を行く教授は、時々振り返って笑う。彼は全く暑そうな雰囲気はなく、実際に汗をかいている様子もない。まるで、身体の周りの空気を制御しているようだ。つまりその粒子の運動を、そのエナジーを制御しているようだった。実際に彼がそれを行っていたとしても、私は驚かない。そういうことができそうな人物だった、教...

pale asymmetry | 2021.07.29 Thu 21:20

銀帝号の永い夜

JUGEMテーマ:ものがたり    大陸を西から東に横断する銀帝号は、大陸の夜のゾーンのみを走り続ける長距離列車だ。そんなことが可能かって? 可能であるかどうかはこの場合関係ない。現に銀帝号はそういう運行を続けているのだから。絡繰りはもちろんあるだろう。なければならない。けれどそれを知ることが私に必要だとは思わない。そんなことを知らなくても、私は快適に乗車しているのだから。誰かがヒントをいっていたような気がする。銀帝号は月光を燃料に走っているのだとかなんとか。銀帝号の銀は月光のことを言...

pale asymmetry | 2021.07.28 Wed 21:25

Legs for ghosts

JUGEMテーマ:ものがたり    部屋の明かりは消し、キャンドルの炎は黄色。この炎の色の仕組みを私は知らない。私が解っているのは、炎の色は黄色でなければいけないと言うことだ。少し金色がかった黄色。見つめているとどこか遠い場所に旅立ちたくなる黄色。でも実際には、遠い場所からその炎を道標にやって来るのだ。あるいはその熱を道標にかもしれない。それともその揺らぎを道標にだろうか。とにかく、その黄色い炎を灯すことで、私の方の準備は出来ていますよと、稀人に教えることが出来るのだった。  黄色い...

pale asymmetry | 2021.07.26 Mon 21:41

Selfish flapping

JUGEMテーマ:ものがたり    四人目の少女が失踪したのは、梅雨明け間近の大雨の日だった。都市のあちらこちらで冠水が起こり、生み出された川が文明を嘲笑うかのようにさざ波を纏って揺らいでいた。その波が起こす迷彩が、少女の姿を隠してしまったのかもしれない。少女がそれを望んでいたのかどうかは解らないけれど。少女はまだ世界の欠片にしか触れたことがなくて、世界の方も少女の欠片にしか触れたことがない。では誰がその希薄なアクセスを乗っ取って少女を隠してしまったのか。誰、ではないかもしれないが、何...

pale asymmetry | 2021.07.24 Sat 21:34

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