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JUGEMテーマ:ものがたり 卵かけご飯を食べるために都市を彷徨う。材料を求めているわけでもなく、それが食べられる飲食店を探しているわけでもない。材料も道具もそろっていて、それはバックパックに詰め込まれていて、いつでも卵かけご飯を構築出来る準備は整っているのだ。問題はその辺りにはなく、場所なのだ。つまり卵かけご飯を食する場所だ。特に北北東の強めの風が吹くこんな早朝には、どこで卵かけご飯を食べるかによって、たぶん世界の行く末が変化してしまうだろう。文明が滅ぶかもしれない。だから僕は...
pale asymmetry | 2021.07.19 Mon 21:02
JUGEMテーマ:ものがたり 闇はざらついていて、乾いていた。強く吸い込むと咳き込んでしまいそうな闇だった。 予定では、日が暮れる前にこの山を越えて今頃は麓の集落に着いているはずだった。鉱虫の採集に夢中になってしまって、時間を読み違えてしまった。小さなトーチ一つでこの山道を進むのは心許ない。今夜はこの峠道の途中で野宿するしかないだろう。さてどこで野宿するのが良いのだろうかと考えながら歩いていると、炎が見えた。ちょうど道が登り切った辺りで、誰かが火を焚いている。安定した炎が、私...
pale asymmetry | 2021.07.16 Fri 21:14
JUGEMテーマ:ものがたり 屋根の瓦が弾む音が聞こえてくる。この世界にはたった一人の翼者がいるのだ。瓦の音は誰かの足音。翼者は世界のために存在する。音から推測するに、歩幅は短い。私と同じくらいだろうか。だから身長は160センチくらいなのかもしれない。翼者は世界のために、常に傷ついている。つまり世界の代わりに傷つけられているのだ。この世界をより完全な完成に近づけるために。 「翼者様を癒すのは、私たちの役割なんだよ」 祖母から何度も聞かされた。そのための鍛錬もさせられた。でも翼...
pale asymmetry | 2021.07.07 Wed 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり 僕らは一列で森の道を進んでいく。道が細すぎて、そうしないと進めなかったのだ。僕らを取り囲む木々はどれもこれも大樹だ。でも威圧的な感じは一切ない。どこか守護神のようなやわらかな風格を感じられた。だから大樹が陽光を遮り、偽物の夜が漂う森の中でも、僕らは怖じけることなく進むことが出来た。 「海の匂いがするね」 僕が声を上げる。空気が湿っていたせいだろうか、思ったよりも声は重く響いた。 「たぶん森の端っこが海に面しているんだと思うよ」 先頭のユー...
pale asymmetry | 2021.07.03 Sat 21:35
JUGEMテーマ:ものがたり 砂漠というのは見渡す限り砂なのだと思っていた。砂が作り出す巨大なうねりに飲み込まれそうになるのだと思っていた。でも周りを見回すと岩石があちらにもこちらにも転がっていて、低木が賑やかに生えている。地面は固く、うねりそうにもない。けれどここは紛れもない砂漠なのだ。騙されているのかと最初は思ったけれど、どうやらそうではないらしい。隣で寝そべる人物は、仕事の後輩をからかうような人には見えなかった。 「あの、これからどうするんですか?」 僕の質問に先輩が...
pale asymmetry | 2021.06.28 Mon 21:48
JUGEMテーマ:ものがたり 瑠璃色のドレスはキラキラと笑っていた。誘うように笑っていた。何が煌めいているのかマテリアルは解らなかったけれど、その煌めきは静かな主張だった。世界に対する主張だった。あるいはアジテーションだったかもしれない。有り触れたルーティンで構築された世界、イレギュラーなイベントが起こったとしても、それさえも有り触れたイレギュラーだったりする世界に対しての。 少女たちは踊っていた。操り人形がデタラメに操られるように踊っていた。燃えさかる炎のような様式のボンネ...
pale asymmetry | 2021.06.27 Sun 21:09
JUGEMテーマ:ものがたり 受付に行くと、髪の長い女子が対応してくれた。笑顔で、丁寧な言葉で、やわらかい対応。でも左目はピンクのアイパッチで隠されている。この子も入浴中なのだろう。スタッフが仕事をしながら入浴してしまうのだから、よほど気持ちが良いのかも知れない。俄然期待が膨らむ。 「本日は露天風呂の日ですので、露天風呂のご利用額が半額になっています」 「じゃあ露天風呂の方でお願いします」 料金を精算し、タオルとアイパッチを受け取る。コバルトブルーのアイパッチだった。表面...
pale asymmetry | 2021.06.26 Sat 21:37
JUGEMテーマ:ものがたり その背中は、少年にしか見えなかった。貧弱な、まだ世界をよく知らない少年の背中にしか見えなかった。彼は小さな社に向かって背中を丸めてしゃがみ込んでいた。泣いているように見えた。途方に暮れているように見えた。小さな社よりもさらに小さな身体は、強い風が吹けば吹き飛ばされてしまうのではないかと思えた。 「幼子のようですね」 私は師匠に囁いた。 「子供は赤くはない。人間の子はな」 師匠は簡潔に答え、歩みを止める。私もそれに従った。確かに、その背中は...
pale asymmetry | 2021.06.18 Fri 20:22
JUGEMテーマ:ものがたり 鋭い日差しが真上から街路に突き刺さっていた。路面は石によって舗装されていた。真上からの陽光は影を殺し、路面は光だけが跳ね回って輝いていた。静かな真昼だった。何故か人通りはなかった。まるで皆がこの陽光を嫌ったかのように。あるいは、嫌ったのは路面の輝きの方だろうか。私は路地をゆっくりと歩いていた。見知らぬ街の見知らぬ路地だった。けれどどこかで、今までの人生のどこかで、既に通り抜けている路地のように思われたりもした。どこか懐かしさを感じていたりもした。個性...
pale asymmetry | 2021.06.16 Wed 21:24
JUGEMテーマ:ものがたり マンジュというのはとても希少なもので、だからそれを所有する人もごく限られている。聞いたところによると、十人に見たいない数なのだそうだ。室町の時代からマンジュの数は増えていないとも聞いた。今の所有者たちはその時代から代々受け継いできた者たちなのだそうだ。とにかくマンジュがなければ石響いくさは始まらない。だからマンジュを所有する者だけが、石響いくさを開催できるのだった。 マンジュとは万樹と書くのだそうだ。けれど私は、それはもともと万呪と書いたのではな...
pale asymmetry | 2021.06.11 Fri 20:57
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