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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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Oil bee

JUGEMテーマ:ものがたり    ビショップという名の少年は、草原を歩いていた。信号を受信し、それに導かれて歩いていた。風は西からやわらかく吹いていて、心地良い風なのだろうと彼は思った。それはしかし推測だ。彼は心地良い風というものがどういう性質の風なのかを知らない。大抵彼は草原を歩いていて、大抵風に吹かれているけれど、その風が彼に某かのインフォメーションをもたらしてくれることはなかった。  ビショップという名の少年は北西の方角を向き、斜め上方を見つめる。信号はそちらの方向から彼に発...

pale asymmetry | 2020.10.26 Mon 21:28

先触れの舞

JUGEMテーマ:ものがたり    宵に大雨が降った。南風に操られ、斜めに強く降った。縁側は家の北側にあるから、それに面した縁側は雨に濡れない。背後から降り、家の軒が雨を遮ってくれるから。雨が強く降れば降るほど、縁側にその雫が巻き込まれてくることはない。だから私はスコッチウイスキーに熱々のお湯を注ぎ、縁側に寝そべりながら飲んだ。雨にうたれる庭を眺めながら。  庭は少し草が目立つ。ちょっと最近手入れをサボっていたな。そんなことを考えながら温かいスコッチを飲む。時々、カーブチーを囓ったり...

pale asymmetry | 2020.10.23 Fri 21:23

蝶結びの迷宮

JUGEMテーマ:ものがたり    その人は、僕と目線を重ねるために片膝をついた、と思えた。僕の瞳の底の底まで見通すために少し小首を傾げた、ように感じた。そして笑った。あたしに任せてしまえば、何もかもが上手く流れ出すのよ。と言っているかのような笑顔だった。でも実際には何も言葉を発していない。ただその人は左手を伸ばし、その人差し指で僕の鼻の頭に軽く触れただけだ。 「大切なものをなくしたと思っているわね?」  その人の声に、僕は旋風のように洗練された激しさを感じた。獣でさえも平伏すよう...

pale asymmetry | 2020.10.21 Wed 14:53

Sapphire torch

JUGEMテーマ:ものがたり   「おやおや、これはこれは小人のぼうやだね」  巨大な光の人が、僕を見下ろして笑っている。そう思えた。でも本当は解らない。光の人は文字通り人型の光だったから、その表情は僕には解らないのだ。声がとても優しそうに響いていたから、僕が勝手にそう思っただけだ。極々薄い桃色に輝く光の人は、人型だけどその端々は丸い。その形も優しく笑っているようなイメージに思えたのだ。 「ここはぼうやの国ではないのに、どうしてきたのかな?」  光の人が片膝をついて、しゃがんだ。...

pale asymmetry | 2020.10.19 Mon 20:19

Dragon coil

JUGEMテーマ:ものがたり    水は空気のように希薄だった。重なり合って纏うはずのブルーもグリーンも見えない。色彩は全て水底に潜り込んでしまったのだろうか。それとも偏在する余剰空間に巻き取られてしまったのだろうか。どてらでも構わない。僕のダイブにとってはそのどちらでも関係ないから。  コンソールの水深表示にはアスタリスクのマークが三つ並んでいる。それは僕が順調にゾーンに入り込んだことを示している。色彩が消えてしまったのもその影響だ。同時に僕の身体も半透明になっていたりする。大抵の...

pale asymmetry | 2020.10.12 Mon 21:31

踝ひんやり

JUGEMテーマ:ものがたり    水は緑色に澄んでいると思えたから、そう口にしたら彼に笑われた。 「本当に澄んでいるなら、色彩なんてないはずだろう」  確かに彼の言うとおりだ。緑色に見える時点で純粋な水に緑色の何かが、光を緑色に弾く何かが混ざっているのだ。でも綺麗だから、私には澄んでいるようにしか感じられない。 「水温のせいではないかな」  彼は右手を水に浸し、軽く掬う。 「ひんやりとしていると、清らかに思えてしまうだろう?」  そう言って私を見つめる瞳には、その奥深...

pale asymmetry | 2020.10.11 Sun 21:35

異迷路

JUGEMテーマ:ものがたり    翼の人たちが上空で戯れている。皆、瑠璃色をしている。瑠璃色の衣装を纏っているのか、瑠璃色の鱗に包まれた身体なのかはよく解らない。僕はあまり視力が良くないので、眼鏡なしでは細かなところが見えないのだ。眼鏡は、この異迷路に入ってすぐに粉々に砕かれてしまったので、世界はやんわりとぼやけている。それに陽光は銀色のハレーションが強すぎて、そもそも落ち着いて空に眼差しを固定することが出来ないのだった。  その上空が一瞬陰る。僕を跨いでキリンが歩いて行く。翠色の...

pale asymmetry | 2020.10.07 Wed 14:52

その魚は夢を見ない

JUGEMテーマ:ものがたり    耳の奥がむずがゆい。耳かきで探ってみる。耳の奥からとても小さな鱗が出てくる。煌めく朱色の鱗だ。美しい扇形をしている。美しい扇形とはどんな形か。説明することは難しい。私は数学者ではないから、数式でそれを客観的に表すことなど出来ない。けれど美しい扇形は確かに存在していて。その形を私は正確に知っている。私の頭の中に、その完璧なイメージがあるからだ。私はその美しい扇形を具現化しようと日々悪戦苦闘している。でもまだ一度も成功したことはない。私は扇職人なのだ。 ...

pale asymmetry | 2020.10.06 Tue 22:17

ライカの降臨

JUGEMテーマ:ものがたり    ライカが地球に帰還した日の朝、私は寝坊した。とくに前日に夜更かししたわけでもなかったのに、いやむしろいつもより早くベッドに入ったのに、夢も見ずに深く眠ったのに、寝過ごしてしまった。しかも目覚めたときもまだまだとても眠くて、出来れば今日は一日中ベッドで過ごしたいと思っていた。でも仕事に行かなければいけないので、無理矢理にベッドから離れたのだった。  だからテレヴィジョンの電源を入れたとき、最初何が起こっているのかよく解らなかった。まだ私の頭が十分に稼...

pale asymmetry | 2020.10.05 Mon 20:45

Turn over

JUGEMテーマ:ものがたり    両手に漆黒の手袋を装着する。何とかグローブとか、何とかギアとか呼ばれている手袋だけど、何とかの部分はよく憶えていない。名前を憶えるのは苦手なのだ。名前を憶えることが性能や機能を高めることに繋がるのなら、憶えてみようかとも思うけれど、実際には何の関係もないし。むしろ名前に惑わされてその道具の本質を見失ったりすることの方が多いような気もする。まあ、本心を言えば面倒くさいのだけど。たくさんの名称を憶えていて、会話の中でそれを連呼することで気持ちよさそうにし...

pale asymmetry | 2020.10.04 Sun 21:30

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