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JUGEMテーマ:ものがたり 俺は邪悪なフクロウに抱き締められている。背中から強く。そしてフクロウは、半ば俺に溶け込んでいる。重なり、織り込まれるように。いや、織り込まれているのは俺の方かもしれない。もはやどこまでが俺で、どこからがフクロウなのか、その境界は曖昧だ。白夜の流星のように曖昧だ。 俺に出会う者たちに俺の姿がどう見えているのかを、俺は知っている。背中に翼を持つ人間に見えているはずだ。フクロウは翼以外は透明なのだ。その透明な部分が俺と重なり絡み合っているのだ。フクロウ...
pale asymmetry | 2019.09.06 Fri 21:23
JUGEMテーマ:ものがたり その海域に、何かの特徴があるわけではなかった。特別なエナジーが集まっているとか、リリカルな光景が広がっているとか、スピリチュアルな空気が漂っているとか、そういうことは一切なかった。何処にでもあるような日差しが降り注ぐ風景、何処にでもあるような波が煌めく風景、何処にでもあるような湿った風が翻る風景だった。ハワイ沖だと言われても、インドネシア沖だと言われても、トリニダード・トバゴ近海だと言われても頷けるような場所だった。実際にはそこは、ポリネシアとメラネ...
pale asymmetry | 2019.09.05 Thu 21:16
JUGEMテーマ:ものがたり 嵐が近づいている。巨大な渦が、腹を空かした熊のように無邪気に両腕を振り上げている。それは必ず振り下ろされるだろう。構えられた銃からは、必ず弾丸が発射されるように。例外はない。想定外もない。埒外もない。だから闘牛場の地面に渦が描かれる。何重にもぐるぐるととぐろを巻く渦が描かれる。そこに、雨の子供たちを迎え入れるために。 雨の子供たちは専用の衣装に身を包み、渦によって開かれ閉じられた闘牛場にやって来る。その衣装は色彩豊かで煌びやかで、異世界的だ。異世...
pale asymmetry | 2019.09.04 Wed 22:01
JUGEMテーマ:ものがたり 私がまだ小学生の低学年の頃だったと思います。家のすぐ裏の里山の中で、私は迷子になってしまいました。小さな里山で、迷うはずなどなく、道だって一本しかなくて、どちらの方向に歩いても、子どもだった私が歩いても、10分もすれば出られるはずの里山だったのに。今はもうこの里山はありません。取り除かれ、整地され、住宅が建ち並んでいます。だからもう、今の子どもたちは迷ったりはしないでしょうね。 学校から帰ってきてから里山に入ったので、程なく日が傾いているのが解りま...
pale asymmetry | 2019.09.02 Mon 22:18
JUGEMテーマ:ものがたり 彼女はフリーダイバーだ。フリーライダーではない。まあ、正直に言うと若干そういうところもあるけれど。いやそうじゃなくて、フリーダイバーだ。いくつかの大会にも出場して、それなりの成績も残している。あくまでもそれなりの、だけど。普段も時間があれば海に出かけて、フリーダイビングをしている。大抵は30mから40mくらいの水深まで潜るらしい。地上でなら何階建てくらいの建物に相当するのかはよく解らないけれど、彼女にとっては余裕を持って行き来できる水深なのだそうだ。 ...
pale asymmetry | 2019.08.30 Fri 21:04
JUGEMテーマ:ものがたり 私は岬に立っている。岬の先端に立ち尽くしている。一歩踏み出せば、数十メートルの距離を落下することになるだろう。海面は固い岩盤となって私を砕くだろうか。それとも遙かな深みに速やかに引きずり込むだろうか。風が正面から吹いている。だから私は踏み出すことはしない。もし風が背後から吹いていれば、それを私は啓示と考えたかもしれない。そして宙を舞っていたかもしれない。藻屑となるために。 鳥が浮遊している。見たことのない鳥だ。胴や頭の大きさに比べて、両翼の大きさ...
pale asymmetry | 2019.08.29 Thu 21:58
JUGEMテーマ:ものがたり 世界は、世界そのものは常に孤独を含有しているのだと実感できるくらいに、どこまも荒野が広がる風景だった。僕たちはキャタピラの付いたトラクターを止め、重い身体で地面に下り立った。動力によってその重量はかなり軽減されているように感じるはずなのに、システムの不具合なのか、それともそもそものシステムの限界なのか、身につけているエクソスーツは動作のいちいちが重かった。誰からも操られていないのだということを、宿命だと感じてしまいそうなくらいに。 「どこにラボがあ...
pale asymmetry | 2019.08.24 Sat 22:04
JUGEMテーマ:ものがたり 砂漠の夜は寒い。シャルランシャルランと空気が嘆くように沈むから。今夜のように、上品な猫が墜落するような月が輝きを振るわせている夜は、特にそれを感じたりする。だからだろうか、次の都市まで走りきれるバッテリーがあったのにもかかわらず、私はオアシスの照明に引き寄せられるようにバギーのステアリングを切っていた。 泉を取り囲み、キャラバンのメンバーたちがキャンプの設営を終え、一息ついている。キャラバンと共に走行していたのか、マッコウバスの姿も見えた。泉の脇...
pale asymmetry | 2019.08.22 Thu 21:39
JUGEMテーマ:ものがたり 学校で嫌なことがあった。嫌なことがあると頭蓋骨の内側に毛糸がグニュグニュと溜まる。焦げ茶色の毛糸が脳の中を這いずり回り、脳細胞を削って溶かす。そして僕の頭蓋骨の中は、ギュウギュウに蠢く毛糸で満たされてしまう。そうなるともう僕は自動人形だ。何も考えられないし、何も感じない。ただプログラムに従って、学校から逃げ出すだけだ。 自動人形のまま、家には帰れない。だから、僕はとんがり館に向かう。それは学校と僕の家の丁度中間にあって、黒いとんがり帽子を被ったよ...
pale asymmetry | 2019.07.22 Mon 21:49
JUGEMテーマ:ものがたり ゼミメンバーでの初めての飲み会で、たまたま席が隣になった鷺宮さんがどこか恥ずかしそうに僕に囁いた。 「折り紙とかが好きなの?」 僕だけに聞こえるような小さな声だった。独り言の成分が強い囁きだった。普段なら聞き逃したかもしれないような囁きだったけど、「折り」という響きが入っていたので僕は鷺宮さんに顔を向けた。 「え?」 「それ」 鷺宮さんが僕の箸置きを指差す。それは僕が割り箸の袋を折って作ったクラウン型の箸置きだった。 「ああ、うん。折...
pale asymmetry | 2019.07.06 Sat 21:53
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