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JUGEMテーマ:ものがたり 昼食を買いにコンビニエンスストアに行ったら、賢者がいた。イートインに五人の賢者が集まっていたのだ。たしかここ最近は、このイートインは閉鎖されていたはずだ。でもきっと、賢者たちが使いたいと言ったので店員は拒めなかったのだろうなと思った。賢者なのだから。五人の賢者は皆老人だ。七十歳、八十歳、九十歳、そのどれにも当てはまるような相貌だった。でも本当は二百歳、三百歳なのかもしれない。その可能性は否定できないだろう。賢者なのだから。 ところで、どうして彼ら...
pale asymmetry | 2020.04.23 Thu 21:57
JUGEMテーマ:ものがたり 鎧と仮面を纏った旅人は、巨大な樹木に絡め取られている建物を発見した。最も近い恒星が、ちょうど中天に達しようとしていた時刻。旅人は乗ってきた四つ足の従者から降り、その建物に近づく。赤茶色の鉱石をブロック状に削って積み上げた壁を見上げる。扉があった場所は今は単なる穴だったけれど、それはとても大きく、ここは巨人の住処だったのだろうかと旅人は考えた。もちろん人型ではなく、手も足もなくてモサモサした巨大な球体型生物である可能性も考えてみたりした。 可能性は...
pale asymmetry | 2020.04.09 Thu 22:09
JUGEMテーマ:ものがたり それは、線香花火のような細かな閃光を放っている。しかし線香花火のように、その中心に火球は有していない。では何からその閃光は放たれているのか。それは解らない。その中心に何かがあって、その得体の知れない何かから閃光あるいは線光が放たれているのか、それともその中心には何もなく、閃光あるいは線光は何もない起点から花のように咲き開いているのか、それも解らない。 ただ綺麗だった。その柘榴色の閃光あるいは線光は。熟し切った甘みが口中に広がるような綺麗さだった。...
pale asymmetry | 2020.04.08 Wed 21:23
JUGEMテーマ:ものがたり 十五年前に亡くなった祖母は大正生まれの人で、とても厳格な女性だった。両親が共に働いていた私は、祖母に育てられた。それはもうとても怖い人だった。そういう印象、そういう記憶しか残っていない。エピソードとしてはそういう記憶ばかりなのに、何故かたまにふと祖母の笑顔を思い出したりする。いつ笑ったのか、どういうシチュエーションで笑ったのかは全く思い出せない。偽りの記憶だろうか、と疑ってしまうくらいに。けれどその笑顔はとても鮮明で、きっと私は確かにそれを目にしてい...
pale asymmetry | 2020.03.23 Mon 20:50
JUGEMテーマ:ものがたり 極星は流れて落ち、夜は要を失う。秩序の全てが崩れ落ちてしまったわけではないけれど、空に敷き詰められていた透明なラインは曖昧に縺れ、賑やかな無意味が意気揚々と踊っている。玉座からそれを見上げる王はとても愉快な気分になって、狂喜乱舞しそうになったりもしたが、そんなことに熱中すれば腹が減りそうだったので、ただそういう気持ちを自身の体内で遊ばせるだけで、実際にはだらしなく玉座に身体を預けていた。 「この先、流星の雨が激しく降るでしょう」 視界の斜め下方...
pale asymmetry | 2020.03.22 Sun 22:07
JUGEMテーマ:ものがたり 仮面をつけた、十二の眼を持つフクロウが私を導く。洞穴の奥深くへと。光はどこからも届いていない。けれど私を取り囲む岩肌は全て仄かな白緑色に光っていた。内蔵のようだった。巨大なゾウガメの内臓のような感じがした。そのゾウガメはきっと四十六億年前から生きていて、彼の住処とするためにこの惑星が生み出されたのだろう。そのゾウガメを愛でていた超高次元の存在によって。そういう者の存在を意味する記号がこの惑星の各地にあると言うけれど、私は全て嘘だと思っている。そういう...
pale asymmetry | 2020.03.21 Sat 21:16
JUGEMテーマ:ものがたり 金色の衣装を身に纏い、金色の冠をかぶり、妹は風の隙間を転がるように踊る。 「あっしは、主様のために踊りたいのさ」 強い決意を表面に出すことなく、軽やかな口調で妹が微笑んだのは今朝のこと。 「だって主様は、水底でたったの一人で、大層退屈されているでしょう」 衣装を着せられ、化粧を施されているときも、妹はすでに主のことばかりを考えていたのだろう。 「あっしは、主様に少しでも歓んで頂きたいのさ」 そう言うと、上目遣いに僕を睨む。でも一瞬後...
pale asymmetry | 2020.03.17 Tue 22:28
JUGEMテーマ:ものがたり 主は八年に一度閏の年に川を遡る。普段は川から三里も離れた湖の底にいるのに、八年に一度突然川面に姿を現すのだ。どうやって川まで移動しているのかを知るものはいない。空を飛んだり陸を歩いたりしている姿を目にした者はいないから、恐らく湖と川は地面の下で繋がっているのだろうと言われている。何のために主は川を遡るのか。それは穢れを祓うためなのだそうだ。湖の底にずっといると、淀みが体表に纏わり付き、それが主の成長を妨げるのだという。つまり、主は今なお成長しているの...
pale asymmetry | 2020.03.16 Mon 21:44
JUGEMテーマ:ものがたり 一辺が三十センチくらいのアクリルケースの内部で、独楽は回っている。テーブルの真ん中に置かれた、立方体の空間の真ん中で、独楽は回り続けている。それは空間の正確な真ん中だったから、つまりその独楽は空間に浮かび上がって回っていたのだった。紫色の独楽だった。それは魂の色が紫色だったからだ。独楽として留まったこの魂がという意味ではなく、魂というのは大抵紫の色彩を纏っているものなのだ。高貴な紫色を。 その独楽の紫は、少しだけくすんでいた。その回転の速度も、少...
pale asymmetry | 2020.03.15 Sun 21:40
JUGEMテーマ:ものがたり 雨が降り出した。控えめな雨だったけれど、粒は大きかった。だから少し魅力的な雨に思えた。ドンヨリと曇った空には色がない。色のない空に向かって、壁はどこまでも聳えていた。雨は透明だったけれど、その魅力的な雰囲気が、陰鬱な空に色を添えているように思えた。透明な色を。透明だから色なんてないはずなのに。もちろん印象だ。妄想に近い印象。そんな印象を抱いてしまうのは、夜明けからずっと壁を登り続けているせいだろうか。気がつけば、周囲は薄暗くなり始めている。ランチを食...
pale asymmetry | 2020.03.12 Thu 21:19
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