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JUGEMテーマ:ショート・ショート 午後の風は熱くざらつていて、午睡から目覚めた僕らは慌てて窓を閉め、カーテンを閉ざし、エアーコンディショナーをフル稼働させた。薄暗い部屋はカーテンのブルーに仄かに染まっている。空気が濾過されて、まろやかになったよう泣き出した。 「蛾の夢を見たわ」 ソファーに並んで腰を下ろし、僕らはアイスティーを飲む。レモンの酸味が喉に心地良かった。 「綺麗な蛾だったわ」 彼女の声は湿っていて、何だかこの部屋が水中に没しているような気分になる。 「...
pale asymmetry | 2022.08.12 Fri 20:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に帰ると、どの部屋も薄暗かった。玄関も、リビングも、ダイニングキッチンも。彼女はリビングのソファーで丸まっていて、テレヴィジョンには極彩色の幾何学紋様が蠢いていた。テルミンの音が響いている。そのメロディーに合わせて、幾何学紋様が蠢いている。僕は部屋の照明をつける。その瞬間に夜を感じた。なぜだろう。部屋は明るくなったのに、世界は夜を纏った。 「調子はどんな感じ?」 僕が尋ねると、彼女は目を開いて僕を真っ直ぐに見つめる。 「世界を見失っ...
pale asymmetry | 2022.08.09 Tue 21:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「鹿が、伸び上がっていたの」 ケータイの目覚ましアラームを止めると、彼女が僕の肩を揺すって言う。 「すごく、伸び上がっていたの」 僕は自分の夢を思い返そうとして、それが全て失われていることに気づき少しがっかりする。何か甘い感覚だけが残っていたけれど、それはもう無意味な感覚になっている。 「鹿って、どんな鹿?」 僕が訊くと、彼女は少し不機嫌な顔をした。 「鹿は鹿よ。奈良にいるような鹿」 「そうか。それで、その鹿が伸び上がったの...
pale asymmetry | 2022.08.02 Tue 21:47
JUGEMテーマ:ショート・ショート 溺れる夢を見て目が覚めた。 ラグマットの上で横たわる僕の傍らにはドイツシェパードが四肢を投げ出して眠っている。ゆるやかに収縮する胸が、なんだか優雅に見えた。そういえば心地良く溺れる夢だった。いつまでも溺れ続けて、でも死ぬことはない。不可思議だけど、臨死でありながら決して境界を越えることはないという夢だった。何かを暗示しているだろうか。暗示していたとしても、それは些末な事象であるような気がした。 「何か飲む?」 ソファーに腰掛けていた...
pale asymmetry | 2022.07.28 Thu 21:25
JUGEMテーマ:ショート・ショート 魔法のiランドで クロスオーバー小説企画 をしていました! 1ページからOKとのこと。 こいつわ、こいつわ、 『if〜もしも〜 『夏の花火、天才談義イン YouTube』(完)』娯らっく - 魔法のiらんど (maho.jp) というわけで、 書き下ろしたよ!!! ぜひ、読んでね!^^
娯らっくのサイト速報 | 2022.07.27 Wed 13:48
JUGEMテーマ:ショート・ショート エアーコンディショナーが騒々しく稼働する部屋で、下着姿でぐうたら過ごす。窓は閉め切って、カーテンも固く閉ざして。テレヴィジョンからはMVが流れ続けている。それは地上波ではなく、動画サイトの映像。喉が渇けば炭酸水を飲み、お腹が空けばアイスクリームを食べる。冷蔵庫にはその二つしか入っていない。まあ、その二つがあれば私は気持ちを楽園に出来る。そうやって時間を浪費する。休日の贅沢だった。 水色の人が、私の隣に腰掛けている。ソファーは広いのに、私に密...
pale asymmetry | 2022.07.24 Sun 21:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私たちはスピンが足りないと思うの」 突然彼女がそう宣言する。声は確かに宣言という感じで勢いがあったけれど、身体の方は床にだらしなく寝そべっている。 「だからどうしようというわけでもないけどね」 寝返るように転がり、彼女はゼリーに手を伸ばす。それは床に何かの目印のように置かれていた桃のゼリー。手に取るとスプーンで一口食べ、幸せそうに笑う。 「私たちをスピンさせてくれる風景は、どこかにあるかしら」 桃のゼリーを食べる手は止めずに、...
pale asymmetry | 2022.07.19 Tue 21:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート 波打ち際のすぐそこは、エメラルドグリーンの流体。そこから少し遠くはラピスラズリの獣。さらにその先はブラックホールとプラズマ。パーラーの店先のテーブルで、頬杖をつきながら僕はそんな風景をイメージしていた。実際に目の前にあるのは海。リーフの境界を挟んで閉じられた海と放たれた海。午後の日差しが二つを分け隔てなく突き刺し、風は十分に弱いのにざわついているように感じられた。海が、風景が、世界が、僕も。 「暑いかもね」 彼女が呟く。溶けそうな声で。...
pale asymmetry | 2022.07.13 Wed 22:01
JUGEMテーマ:ショート・ショート 扉の前には彼女が立っていた。かなり朽ちたグレーの扉と対照的な水色のワンピースが、強い陽光に煌めいて見えた。所々アスファルトが割れたパーキングスペースに、僕は車を滑り込ませる。あの頃、いつも止めていた場所に。あの頃はバイクだったけれど。彼女が僕を見つけて軽く手を振った。僕はじっと彼女を見つめ、笑った。自分では笑ったつもりだったけれど、たぶん情けない表情になっていただろう。車を降りて階段を上る。登り切って振り返ると、煌めく海が一望出来る。その...
pale asymmetry | 2022.07.09 Sat 21:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 私は卵だった。水中を漂う卵だった。その形は小星形十二面体だった。私の大好きな形だったから、嬉しかった。卵の私は、首長竜に弄ばれていた。その鼻先で小突かれて、水中で踊らされていたのだ。擽ったくて、気持ちよかった。首長竜は全身が瑠璃色できらきらしていた。鋭角的な形で、全身尖った鱗で覆われていた。顔には眼が三つあったから、正確には首長竜ではないのかもしれない。でも私にはそれは首長竜に思えた。 水は青くはなく、銀色に近い緑色だった。海なのか、湖な...
pale asymmetry | 2022.07.02 Sat 20:24
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