[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ショート・ショート 貴賓室という感じの部屋だ。少し狭かったけれど。テーブルを挟んで向かい合う人物も、この部屋に相応しい豪奢な衣装を纏っている。その眼差しは今、テーブルの上の円形の盤に向けられている。虹の七色のコインが二枚ずつ並ぶ盤に。 「おまえは手強いね」 白い顎髭を撫でながら、この部屋の仮の主がいう。どこからどう見ても男性だったけれど、なぜは周囲の誰もが彼を〈エンプレス〉と呼んでいた。だから私もそれに従う。 「エンプレスが、私ほど賢くはないだけでしょう...
pale asymmetry | 2022.08.26 Fri 20:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 道はどこまでも真っ直ぐに伸びていて、その両サイドは荒野だった。道の先端は地平線の向こうに沈んでいて、後ろを振り返ってもそれは同じだった。 「水がなくなったわ……」 水筒を逆さに振って見ても一雫も零れない。太陽はまだ中天にあって、その日差しは凶悪だ。いつ切り裂かれて出血してもおかしくないと思えるくらい凶悪だった。 「あなたは暑くないの?」 私は隣を歩く長身の何者かに尋ねてみる。その何者かは少なくとも人形をしていて、つまり...
pale asymmetry | 2022.08.25 Thu 21:57
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「何だかアリスの気分だわ」 タールのように陰った海を見つめて彼女が呟いた。 「じゃあ、僕はウサギかな」 そう言うと、彼女はくしゃりと笑った。いや嘘だ。まだ薄暗くて彼女の横顔はよく見えなかった。でもそのくしゃりが空気を震わせた感じが伝わってきて、そう思ったのだ。 「この熱が心地良いわね」 南西から吹いてくる微風が、彼女の髪を微かに弄ぶ。その湿度が生物的で不可思議だった。熱帯夜ならぬ熱帯朝に僕たちは随分と早く目覚めてしまい、どうせな...
pale asymmetry | 2022.08.24 Wed 21:12
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に戻ると、彼女がちょうどバスルームから出てきたところだった。濡れた髪をタオルで掻き回しながら、右手の甲を僕の頬にくっつける。ヒンヤリしていた。 「冷水を浴びたの?」 彼女は笑う。悪戯が成功した子供のように。 「お水のお風呂に浸かったの。冷たいお風呂始めました」 不思議な抑揚で彼女が言う。 「今日も暑かったからね」 「それもあるけど、人が沢山集まる場所に行ってきたから、人に酔ってしまって、人に酔うと全身が火照るじゃない?」 ...
pale asymmetry | 2022.08.19 Fri 21:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 濡れた風が海から吹いてくる。少しこんがらがった風のような気がした。水面のキラキラが、風を縺れさせているように思えたのかもしれない。本当は逆で、風が水面を浮き足立たせているはずなのに。でもこういう逆回転の現象は、世界にはありふれているようにも思えた。そう思った方が世界を読み解きやすいような気がした。 「天使をね、よく見るの、最近」 久しぶりに会った友達が独り言のように零した。眼差しは海に向けられている。私たちは海辺のレストランのテラス席で...
pale asymmetry | 2022.08.14 Sun 21:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 午後の風は熱くざらつていて、午睡から目覚めた僕らは慌てて窓を閉め、カーテンを閉ざし、エアーコンディショナーをフル稼働させた。薄暗い部屋はカーテンのブルーに仄かに染まっている。空気が濾過されて、まろやかになったよう泣き出した。 「蛾の夢を見たわ」 ソファーに並んで腰を下ろし、僕らはアイスティーを飲む。レモンの酸味が喉に心地良かった。 「綺麗な蛾だったわ」 彼女の声は湿っていて、何だかこの部屋が水中に没しているような気分になる。 「...
pale asymmetry | 2022.08.12 Fri 20:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に帰ると、どの部屋も薄暗かった。玄関も、リビングも、ダイニングキッチンも。彼女はリビングのソファーで丸まっていて、テレヴィジョンには極彩色の幾何学紋様が蠢いていた。テルミンの音が響いている。そのメロディーに合わせて、幾何学紋様が蠢いている。僕は部屋の照明をつける。その瞬間に夜を感じた。なぜだろう。部屋は明るくなったのに、世界は夜を纏った。 「調子はどんな感じ?」 僕が尋ねると、彼女は目を開いて僕を真っ直ぐに見つめる。 「世界を見失っ...
pale asymmetry | 2022.08.09 Tue 21:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「鹿が、伸び上がっていたの」 ケータイの目覚ましアラームを止めると、彼女が僕の肩を揺すって言う。 「すごく、伸び上がっていたの」 僕は自分の夢を思い返そうとして、それが全て失われていることに気づき少しがっかりする。何か甘い感覚だけが残っていたけれど、それはもう無意味な感覚になっている。 「鹿って、どんな鹿?」 僕が訊くと、彼女は少し不機嫌な顔をした。 「鹿は鹿よ。奈良にいるような鹿」 「そうか。それで、その鹿が伸び上がったの...
pale asymmetry | 2022.08.02 Tue 21:47
JUGEMテーマ:ショート・ショート 溺れる夢を見て目が覚めた。 ラグマットの上で横たわる僕の傍らにはドイツシェパードが四肢を投げ出して眠っている。ゆるやかに収縮する胸が、なんだか優雅に見えた。そういえば心地良く溺れる夢だった。いつまでも溺れ続けて、でも死ぬことはない。不可思議だけど、臨死でありながら決して境界を越えることはないという夢だった。何かを暗示しているだろうか。暗示していたとしても、それは些末な事象であるような気がした。 「何か飲む?」 ソファーに腰掛けていた...
pale asymmetry | 2022.07.28 Thu 21:25
JUGEMテーマ:ショート・ショート 魔法のiランドで クロスオーバー小説企画 をしていました! 1ページからOKとのこと。 こいつわ、こいつわ、 『if〜もしも〜 『夏の花火、天才談義イン YouTube』(完)』娯らっく - 魔法のiらんど (maho.jp) というわけで、 書き下ろしたよ!!! ぜひ、読んでね!^^
娯らっくのサイト速報 | 2022.07.27 Wed 13:48
全1000件中 181 - 190 件表示 (19/100 ページ)