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JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に帰ると、キッチンの大きなダイニングテーブルの真ん中にキャンバスが横たわっていた。周りには色とりどりの絵の具のチューブが散乱し、残りのスペースで彼女が正座してキャンバスと向かい合っていた。衣服や腕には絵の具が飛び散っている。何度も首を傾げ、彼女はチューブから直接キャンバスに絵の具を付け筆を操る。 「ただいま」 「おかえり」 キャンバスから目を離さずに彼女は答える。僕はテーブルの脇に立ち、キャンバスを覗く。虹色の翼が描かれていた。 ...
pale asymmetry | 2023.01.13 Fri 20:58
JUGEMテーマ:ショート・ショート モニタのなかで、奇妙な獣が歩いている。それは黒い獣だ。四肢は長く、尾は竹箒のような形。頭はない。本来頭のあるところには、真紅の目玉が三つあるだけだった。黒い奇妙な獣は、揺らぐように歩く。ときどき立ち止まり、来た道を振り返る。そしてまた歩き出す。眼球だけで空を見上げたり、地面を睨んだりしながら、ゆっくりと歩く。一定のリズムで揺らぎながら。 「これは、何だい?」 僕は思わず尋ねる。 「生物だよ。オリジナルの」 甥っ子は得意げに答える。...
pale asymmetry | 2023.01.08 Sun 20:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート 私たちはモコモコに着込んで歩いている。都市から遠く離れた海辺の町で、街灯の少ない国道沿いの歩道を彷徨うように歩いている。北風はゆるやかだけどとても冷たい。それは鋭い冷たさではなく、重く鈍い冷たさだった。 「今日は満月なんだよね?」 私が尋ねると、彼は微かに頷く。今、何かこの場所とはかけ離れたことを考えていたのだろう。私に顔を向けるまでのタイムラグが長かった。 「何時頃満ちるの?」 彼ははにかむ。そして少し寂しそうに私を見つめる。 ...
pale asymmetry | 2023.01.07 Sat 21:11
JUGEMテーマ:ショート・ショート 小さなベランダで、僕らはバケツを挟んで向かい合い腰掛けている。片手にはホットワイン、もう片方の手には火花を持っている。夕刻まで強く吹いていた北風は日没と共に弱まり、真夜中が近い今は空気がただ重く沈んでいる。僕たちの吐く息の白色も、流れることなく拡散する。 「可愛いね」 彼女が火花を見つめて呟く。 「うん、綺麗だ」 僕も火花を見つめて呟く。僕らは真冬の夜に線香花火を楽しんでいた。年をまたぐ瞬間に何をしていたいか、ということを二人で考...
pale asymmetry | 2022.12.31 Sat 21:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 目を覚ましたのは正午過ぎだ。分厚いカーテンがしっかりと閉じられていたから、部屋は薄闇に沈んでいた。でも窓の一つが全開で、吹き込む風が部屋に光の斑を描いたりしていた。そして寒かった。それで目が覚めたのだ。身体はひどく重かったけれど、寒さには耐えられず、僕は起き上がって窓を閉めた。陽光はそれなりに強く、庭に薄く積もった雪は所々溶けていた。それは意味のある模様のように見えて、この家の上空を通過する誰かに向けたメッセージのようにも見えた。たぶんその意...
pale asymmetry | 2022.12.25 Sun 17:43
JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事は正午で切り上げた。雪のせいにして僕らは家に籠もる。食材とアルコールを両手に抱えて、世界が閉ざされることに歓喜したりしてる。不謹慎なのは重々承知している。でも僕らは心を偽れない。本当は世界なんていらないと思っていたりするんだ。世界が失われれば、僕らも失われてしまうのにね。そのことをよくよく知っているのに、そう思ってしまうのは何故だろう。 理由なんてない。理由なんていらないんだ。 君はキッチンで踊り出す。リビングのモニタからオルタナ...
pale asymmetry | 2022.12.24 Sat 20:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 深夜、私たちは小さなベランダで、パンプキンプリンを食べている。北風は荒々しく吹いているけれど、ベランダは南に面しているから、巻き込む僅かな枝葉だけがベランダを攪拌している。私たちは小さな椅子を並べて腰掛けている。それだけでもうベランダにはスペースがない。とても小さな宇宙。だから私たちはこのベランダを気に入っている。 「寒いね」 彼が白い言葉を吐き出し、私に肩を寄せる。モコモコのパーカーを羽織っているので、そのフードが私の頬を撫で心地良い...
pale asymmetry | 2022.12.22 Thu 20:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート あの人の夢を見た。私たちは裸で抱き合っていた。今より少し若かった。実際に抱き合っていたあの頃の私たちよりも少し若い二人だった。見知らぬ部屋の見知らぬソファーに、私たちは横たわっていた。部屋は快適な温度だったけれど、エアコンディショナーの稼働音はひどくうるさかった。レースのカーテンの向こうから午後の強い日差しと共に、微かな風が微かな海の香りを運んでいた。 「ねえ」 あなたが私の耳元で囁いた。 「あなたになら……」 あなた...
pale asymmetry | 2022.12.21 Wed 20:51
JUGEMテーマ:ショート・ショート 日曜日の午後、僕たちは窓のない部屋で話し合う。外は冷気が渦を巻いている。その渦が猛威を振るい、世界の色を滲ませているらしい。僕らはエアーコンディショナーが完璧に制御する部屋の、少し銀色がかった照明の下で、のんびりと紅茶を飲んだりしながら、4℃の可能性について話し合ったりしている。 君は安楽椅子にだらしなく身体を沈ませ、「少し暑いような気がしない?」と何度も問いながら、4℃は決して洗練されたフェノメノンではないと主張する。僕はビーズクッションに...
pale asymmetry | 2022.12.18 Sun 20:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「木を隠すなら森の中、って言うでしょう」 よく解らない例えを持ち出す彼女と一緒に、僕は閑静な住宅街を歩いている。日没時刻から三十分くらい、家々の窓には明かりが灯っている。その明かりが北風の冷たさを和らげてくれた。 「そこを曲がったところよ」 言っている途中で彼女の姿が角の向こうに消える。僕は慌てて追いかける。角を曲がると行き止まりで、そこに店はあった。カラフルな電飾の看板には、カタカナでフラワーサースデイと書かれている。その文字の隣で...
pale asymmetry | 2022.12.15 Thu 19:33
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