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JUGEMテーマ:ショート・ショート 平日に休みだと、朝からアルコールが飲みたくなる。だから目覚めてすぐにワインを飲み始め、まだ正午前なのに1本空になっている。うつらうつらとフワフワした気分になり、開け放たれた窓から流れ込む熱い風が僕の眠気を加速させる。でもそれに完全に身を任せたりはしない。そういう眠りに半分だけ身を浸らせるのが気持ちいいのだ。 ゆるやかに眠ったり、浅く目覚めたり、墜ちるように羽ばたいたり、転がるように空想したり。 ふと気がつくと、僕が横たわるソファーの前...
pale asymmetry | 2022.06.29 Wed 21:46
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「良い感じじゃない?」 そう言って君がまだくらい空を指差したとき、僕はテレスコープで海王星を見つめていた。 「宇宙にいる感じがしない?」 ゆっくりと、空は青く目覚めていく。それでもまだ宇宙の光は掻き消されはしない。 「私たち、宇宙人だね」 君がはしゃいだ声を上げる。僕は頷きテレスコープを砂に投げ出して、ビーチに寝転んだ。南の高みから月、土星、木星、火星、金星、水星。テレスコープを外すと、海王星と天王星は見えない。雲は円形の風景の...
pale asymmetry | 2022.06.25 Sat 20:53
JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事帰りの街路、スマホが震えたのでポケットから取り出す。 『こんばんわ』 彼女からのメッセージ。こんばんわ? その意味を考えているうちにまた震える。 『後ろだよ』 振り向くと、目測約100mのところに彼女が立っていて、左腕をぴんと空へと伸ばしている。指先までぴんと伸ばしている。まるで選手宣誓を始めようとしているみたいだった。 『ダメだね』 彼女の左手の人差し指が、空を指差す。仄かに茜に染まった空を。僕はその空を見上げる。 『そ...
pale asymmetry | 2022.06.20 Mon 21:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「ねえ、戻ってきて」 声に呼ばれて僕は目を開けた。リビングのソファーでいつの間にか眠っていたらしい。スーツ姿の彼女が僕を覗き込んで笑っている。その指がそっと近づいてきて、僕の眉間を撫でる。 「厳しい皺が出来てたよ。良くない夢を見ていた?」 僕は上体を起こし、夢の印象を探る。彼女は隣に身体を沈め、僕に熱を注ぎ込む。少し身体が冷えていることにその熱で気づいた。 「炎だったと思う」 「燃えていたの?」 「うん、盛大に燃えていた。水面か...
pale asymmetry | 2022.06.09 Thu 21:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「何か違うわ」 僕を抱きしめて彼女が呟く。リビングの床に僕らは並んで寝転んでいる。テレヴィジョンには海外のミステリー映画が流れている。僕はそれを眺めていて、探偵はのんびりと調査している。彼女はその探偵を信用出来ないようで、さっきからしきりにダメ出しをしていた。それに飽きると、僕を抱きしめた。 「何が違うの?」 少し擽ったくてムズムズ身体を揺すりながら尋ねると、彼女はその鼻先を僕の鼻先にくっつけて囁く。 「上手く噛み合っていないわ、今...
pale asymmetry | 2022.05.23 Mon 21:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に帰ると、リビングにロボットが横たわっていた。等身大のロボット。いやフィギュアというべきか。でもそれを見てロボットだと思ってしまったのは、それの全身が金属製だったからだ。でも決してカクカクとしたフォルムではなく、流麗な人形をしている。男性でも女性でもないフォルム、あるいは男性でも女性でもあるフォルムだった。部屋の弱い照明を、そのボディは強く銀色に弾いていた。そしてその隣に、彼女が横たわっている。 「お帰り」 僕を見上げて彼女が微笑む。...
pale asymmetry | 2022.05.21 Sat 21:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 風は涼風だった。気品を感じる涼風だった。それは陽光に巻き付いて、逸る熱を落ち着かせているようだった。海辺の道は真っ直ぐだった。珍しいな、と思った。大抵の海辺を走る道は、曲がりくねっている印象だ。それは僕の勝手な印象かもしれないけれど、軽快にバイクを左右に振って走っている記憶が僕の海辺のライドの大半を占めている。 長い下り坂。下りきった道端にバイクを止める。そこには小さなビーチがあった。片側二車線の道路から歩道を越えてすぐのところ。何だか不...
pale asymmetry | 2022.05.18 Wed 20:54
JUGEMテーマ:ショート・ショート 強い雨。傘が役に立たない嵐。駅から家までの間にずぶ濡れになってしまった。家に帰ると浴室に直行してシャワーを浴びる。通過したリビングでは彼女が床に寝転がって、何か紙を何枚も広げている。全てが六角形の紙だった。シャワーを浴びながらその意味を考えたけれど、全く思いつかなかった。 「さっぱりした?」 浴室を出た僕に彼女が声をかけてくる。でも視線は床の紙に向けられたまま。彼女の傍らまで行き、その並べられた六角形を確認する。白紙のものもあれば、何か...
pale asymmetry | 2022.05.13 Fri 20:24
JUGEMテーマ:ショート・ショート GW中ずっと仕事をしていたから、GW明けの僕らは昼まで眠る。お腹が空きすぎてもう眠っていられなくなると、僕らは仕方なく互いを小突き合ってベッドから抜け出す。 「楽園を追われる賢者みたいに、目覚めなければいけない」 僕がふらつきながらそう言うと、君はもっとふらつく足取りで僕に寄りかかる。 「賢者はお腹が減らないのよ。私たちが空腹を感じるのは愚者だからよ」 君は僕に寄りかかったままキッチンの冷蔵庫へと向かう。僕はそれに付き合うしかない。寄...
pale asymmetry | 2022.05.09 Mon 21:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 雨だった。風はほぼ無風だったから、雨は機械仕掛けのように降っていた。雫は大きめで、新しいタイプの歯車みたいだった。それは歯車同士で噛み合うことがないのに、精密に連動している歯車だ。そいうことを口に出したかったけれど、シンにもサトルにも馬鹿にされそうで言い出せなかった。だから少しムズムズしながら、僕は海面に群で落ちる雨を眺めていた。 「このラムネ玉、エメラルドみたいじゃない?」 シンがラムネのボトルを翳す。ほとんど空になったボトルの中でラ...
pale asymmetry | 2022.05.04 Wed 21:17
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