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JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事から家に帰ると、彼女がリビングのソファーに倒れ込んでいた。朝仕事に出かけて行ったときの服装。ソファーの脇にはそのとき持って行った鞄も投げ出されていた。 「ただいま」 「お帰り」 ソファーに顔を伏せたままで、くぐもった声が返ってきた。 「疲れてる感じ?」 「溶けてる感じ」 顔を僕に向け、彼女は微妙な感じで笑う。 「溶けてる感じ?」 「そう。雪が溶ける感じ。雪のまま舞い落ちては来ず、溶けて雨として落下してくる感じ」 よ...
pale asymmetry | 2023.02.19 Sun 21:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「南風って、こましゃくれているわね」 彼女が芝生に寝転がりながら小さく叫ぶ。 「僕は結構癒されるけどね」 彼女の隣に僕も寝転んでみる。陽光が強すぎるので、芝生は電気カーペットくらい暖かい。それに乾いていて、メタバースチックだった。 「じゃあ、あなたには母性の強い存在なの?」 「南風が?」 「ええ」 「母性は感じないな。親しい友達みたいな感じかな」 僕は上半身を起こし、風景を見下ろす。僕らは山の中腹の公園にいて、そこからは斜...
pale asymmetry | 2023.02.17 Fri 18:43
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「今日はダーウインの日なんだって」 彼女は額の汗を拭う。 「ダーウインって、進化論のダーウイン?」 僕は後ろから彼女の肩に手を回す。 「そう。彼の誕生日なんだって」 「そうなんだ」 僕らは浴室にいて、浴槽に熱めのお湯を半分ほど溜め、前後に並んで収まっている。そして浴槽の脇にはアルミのテーブル。そこにはワインのボトルとグラスが二つ。 「人間は進化したから、こんな時間を過ごすようになったのかしら?」 彼女がグラスに手を伸ばし...
pale asymmetry | 2023.02.12 Sun 20:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「僕は天使だったみたいなんだ」 遅い朝、エスプレッソを飲んで覚醒を引き寄せているところに、甥っ子が訪ねてきた。 「おはよう、火曜日の朝だね。学校は?」 「それは訊かないで」 「うん解った。もう訊かない」 僕らは笑い合う。共犯者の笑顔を重ねる。 「で、どうして君が天使だと判明したの?」 僕が尋ねると、甥っ子は驚いた表情を見せて一瞬フリーズした。 「えーっと、理由が必要な感じ?」 少し再起動に戸惑っているような口調だった。...
pale asymmetry | 2023.02.07 Tue 20:54
JUGEMテーマ:ショート・ショート 僕らは傘を持て余していた。家を出るときには弱いけれど大粒の雨が降っていたのに、歩き出して数分でその雨は止んでしまった。空はまだどんよりと曇っていたから僕らは閉じた傘を手に歩いた。そこからさらに数分、いつもの散歩コースでビーチに着いた頃には雲はかなり薄まり、淡いブルーが見え隠れしていた。 「春は嘘つきだね」 彼女が砂に足跡を押しつける。砂は僅かに湿っていて、そのへこみぐわいが巨大な生物の背中のように思えた。モンスターの背中を彼女は進む。 ...
pale asymmetry | 2023.02.04 Sat 19:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「すごく深い塔なんだ」 甥っ子がスケッチブックを広げる。 「深い塔? 高い塔じゃなくて?」 「そう、深い塔」 甥っ子は色鉛筆のグレーで輪郭を書き始める。 「もちろん造られたときは高い塔だったんだけど、今は地中に埋まっているんだ」 「なるほど、だから深い塔か」 甥っ子は赤と茶と黄色と緑で、地中の塔を描いてゆく。彼は実に絵が上手い。 「それでね塔の下層には水が溜まって円柱型の池になっているんだ」 甥っ子は塔の底の方に薄い青...
pale asymmetry | 2023.01.31 Tue 17:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート 北からの風は冷たかったけれど、陽光はなかなかに鋭かった。海は南側に広がっていたから、背中に風を受けることになる。陽光は真上から。水面は細かく波打ち、キラキラの衣を纏っていた。 「何を狙っているの?」 恋人は忙しなく竿とリールを操っている。防波堤の上に立ち、動作とは裏腹に水面を優しく見つめている。僕は防波堤の上に腰を下ろし、というか半ば寝そべるような姿勢で、ラインの先端がキラキラを切り裂くのを眺めていた。 「とくに何って言うのはないよ」...
pale asymmetry | 2023.01.29 Sun 20:59
JUGEMテーマ:ショート・ショート 私たちは、手を繋いで歩いた。夕暮れ時、風はとても冷たい。青空が広がっているのに、どこからか微細な雨粒が風に運ばれてくる。 「誰かが泣いているのかもしれない……」 あなたが囁く。声が風に流される。だから上手く聞き取れなかったけれど、私は聞き返すことはしなかった。声がよく聞こえなくても、あなたの想いは私の内側に響いていたから。 「日が長くなったから」 私がそう言うと、あなたは首を傾げる。空を見つめ、私を見つめ、微かに頷く。...
pale asymmetry | 2023.01.28 Sat 19:22
JUGEMテーマ:ショート・ショート ベランダに降り積もった雪で、彼女は小さな雪だるまを作った。僕らはそれを挟むように椅子を並べ、アイスクリームを食べた。雪はもう降ってはいなかったけれど、もちろん空気は凍てついている。だからモコモコに着込んで、ホットワインを飲みながらカップからアイスを掬う。こういうことをして、僕らは魂をアイスクリームに救われたりするのだ。なんて大げさに、不謹慎に考えたりしながら、のんびりとアイスを食べる。 「良いこと思いついた」 彼女はそう言って、アイスの...
pale asymmetry | 2023.01.25 Wed 21:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「失われた大陸だわ」 唐突に彼女が言う。僕らはそのとき寝転んでこたつに埋没して、互いに自分のタブレットを眺めていた。夕食のあと、シャワーも済ませ、歯磨きもして、このままここで眠ってしまおうと企んでいた。 「失われた大陸?」 僕が尋ねると、彼女はこたつを指差す。 「この状況よ」 僕は首を回してこたつを見つめる。どこにも大陸は見当たらない。いや、大陸はもう失われているのか。 「巨大な双頭のカメが、大洋を回遊しているの」 彼女が...
pale asymmetry | 2023.01.19 Thu 21:24
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