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掌編。超短編。など、名前は様々。
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星歩き

JUGEMテーマ:ショート・ショート    僕らは迷える魂だった。  風は北西から強く吹き上げられていた。それは黒い海から吹き上がっていた。僕らを星の世界に吹き飛ばそうと企んでいるようだった。 「星座って、難しいよね」  誰が言ったのかはよく解らなかった。真夜中にあと数歩の公園には照明がなく、全てが闇に輪郭を滲ませている。山の上にあるこの公園は街からも遠く、街の明かりは海を闇に沈める役割しか担っていなかった。 「海が黒いと、獣みたいだね」  誰かが言う。誰かが笑う。 「見下...

pale asymmetry | 2022.09.19 Mon 21:07

pale blue dot

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「235億キロメートルって、イメージ出来る」  彼女が天井を斜めに見つめて言う。おそらく彼女自身にはイメージ出来ていないのだろう。 「遠いね。すごく遠い場所。何だかとても暗い空間をイメージしてしまうな」  僕の言葉に、彼女が大きく頷く。 「その場所から一番近い星は40兆キロメートル離れているんだって。多分暗い場所よね?」 「そうだね。それは宇宙空間で、そこに誰かがいるんだね?」 「うん。ボイジャーよ」 「ボイジャー? 宇宙探査機の?」 ...

pale asymmetry | 2022.09.11 Sun 21:16

magatama jewels

JUGEMテーマ:ショート・ショート    雨が降り出しそうだったから、傘を持ってバス停に行く。夜の空には星も月も見えなくて、風は淫らな感じのする湿り具合だった。空気に照明を滲ませながらバスが近づいてくる。降りてきたのは彼女だけだった。バスの内部に目を向けると、他に乗客は一人しかいなかった。何だか、生と死の境界を走るバスのように思えた。 「お帰り」  僕は彼女に傘を差し出す。 「ただいま」  彼女は傘を受け取るとすぐに開いた。 「まだ、降っていないよ」 「良いじゃない。傘は...

pale asymmetry | 2022.09.06 Tue 21:41

Rich distance with T

JUGEMテーマ:ショート・ショート    雨は、断続的に強まったり弱まったり。脈動を感じさせるリズム。意識の抑揚かもしれない。何か巨大な存在のフォーカスの尖り具合かも。僕たちを見つめる、その眼差しの尖り具合と言うこと。 「どうせなら、もっと大粒な方が良いのに」  真上に顔を向け、彼女が低く叫ぶ。その声を風が掠っていく。風もまた、断続的に強まったり弱まったり。何か巨大な存在の身震いを感じさせる。同じ姿勢で長くいると痛むので、ときたま姿勢を変化させて痛みを受け流しているようだ。 「...

pale asymmetry | 2022.09.03 Sat 21:02

needless shyness

JUGEMテーマ:ショート・ショート    少し頭痛がした。だから動く気になれない。友達と約束があったけれど、全く出かける気分にはなれなかった。さて、どうやってキャンセルしようかと思っていたら、その友達から電話がかかってきた。最近電話をかけることもかかってくることもあまりないから、少し緊張する。 「ごめん、今日行けない」  友達がいきなり言う。 「どうしたの?」 「やめろって言われた」 「誰に? 一人暮らしだよね?」 「AIに」 「AI」 「そう。私今AIと暮らしてるの」 ...

pale asymmetry | 2022.09.02 Fri 20:44

aerial geometric patterns

JUGEMテーマ:ショート・ショート    台風が近づいていたから、僕らはそわそわしていた。と言っても今夜は無風だ。空気は沈んでいく一方で、夏らしくない清涼さを纏っている。それとも、僕らが知らないうちにもう秋に変わっているのだろうか。そういう変化はいつも密かに行われている。そして僕らは決してそういう事象に関与出来ない。 「ランプを灯して」  彼女が声を潜めて囁く。 「いいよ」  僕はアルコールランプに火を灯す。オレンジの炎は揺らぐことなく、真っ直ぐに佇んでいる。その色が夜に滲ん...

pale asymmetry | 2022.08.29 Mon 21:21

current location

JUGEMテーマ:ショート・ショート    真夏には珍しい北寄りの風。西海岸から臨む海は淑女のように凪いでいる。でももちろん陽光は凶暴だ。シリアルキラーのようにクレバーな感じ。身を委ねて、見えない刃に切り裂かれる。痛みはないけれど、何故か喪失感。 「こういう海を眺めてると、ヴァイオリンが弾きたくなるね」  隣に寝そべる友人が長閑に言う。 「ヴァイオリンなんて弾けたっけ?」 「弾けるなんて言ってないよ。弾きたくなるって言っただけ」  友人は上半身を起こし、額の汗を拭う。 「凪...

pale asymmetry | 2022.08.28 Sun 20:41

plastic back equation

JUGEMテーマ:ショート・ショート    帰ってきた彼女がレジ袋からとしだしたのは二つのカップ。蓋を開けると緑と赤と橙のミックスされたジェラートだった。 「すごく暑かったから、コンビニに寄ってきた」  僕らは夕食の前に、取り敢えずソファーで並んでジェラードを食べる。お気に入りのアイス専用スプーンで。 「これを買ったときね、じつはマイバッグを持ってたの」  彼女がどこか申し訳なさそうな声で言う。 「ああ、君はいつも持っているからね」 「うん。でもね、レジにアイスを置いたら店...

pale asymmetry | 2022.08.27 Sat 21:38

9 medals

JUGEMテーマ:ショート・ショート    貴賓室という感じの部屋だ。少し狭かったけれど。テーブルを挟んで向かい合う人物も、この部屋に相応しい豪奢な衣装を纏っている。その眼差しは今、テーブルの上の円形の盤に向けられている。虹の七色のコインが二枚ずつ並ぶ盤に。 「おまえは手強いね」  白い顎髭を撫でながら、この部屋の仮の主がいう。どこからどう見ても男性だったけれど、なぜは周囲の誰もが彼を〈エンプレス〉と呼んでいた。だから私もそれに従う。 「エンプレスが、私ほど賢くはないだけでしょう...

pale asymmetry | 2022.08.26 Fri 20:30

scorching journey

JUGEMテーマ:ショート・ショート    道はどこまでも真っ直ぐに伸びていて、その両サイドは荒野だった。道の先端は地平線の向こうに沈んでいて、後ろを振り返ってもそれは同じだった。 「水がなくなったわ……」  水筒を逆さに振って見ても一雫も零れない。太陽はまだ中天にあって、その日差しは凶悪だ。いつ切り裂かれて出血してもおかしくないと思えるくらい凶悪だった。 「あなたは暑くないの?」  私は隣を歩く長身の何者かに尋ねてみる。その何者かは少なくとも人形をしていて、つまり...

pale asymmetry | 2022.08.25 Thu 21:57

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