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JUGEMテーマ:ショート・ショート 深夜、私たちは小さなベランダで、パンプキンプリンを食べている。北風は荒々しく吹いているけれど、ベランダは南に面しているから、巻き込む僅かな枝葉だけがベランダを攪拌している。私たちは小さな椅子を並べて腰掛けている。それだけでもうベランダにはスペースがない。とても小さな宇宙。だから私たちはこのベランダを気に入っている。 「寒いね」 彼が白い言葉を吐き出し、私に肩を寄せる。モコモコのパーカーを羽織っているので、そのフードが私の頬を撫で心地良い...
pale asymmetry | 2022.12.22 Thu 20:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート あの人の夢を見た。私たちは裸で抱き合っていた。今より少し若かった。実際に抱き合っていたあの頃の私たちよりも少し若い二人だった。見知らぬ部屋の見知らぬソファーに、私たちは横たわっていた。部屋は快適な温度だったけれど、エアコンディショナーの稼働音はひどくうるさかった。レースのカーテンの向こうから午後の強い日差しと共に、微かな風が微かな海の香りを運んでいた。 「ねえ」 あなたが私の耳元で囁いた。 「あなたになら……」 あなた...
pale asymmetry | 2022.12.21 Wed 20:51
JUGEMテーマ:ショート・ショート 日曜日の午後、僕たちは窓のない部屋で話し合う。外は冷気が渦を巻いている。その渦が猛威を振るい、世界の色を滲ませているらしい。僕らはエアーコンディショナーが完璧に制御する部屋の、少し銀色がかった照明の下で、のんびりと紅茶を飲んだりしながら、4℃の可能性について話し合ったりしている。 君は安楽椅子にだらしなく身体を沈ませ、「少し暑いような気がしない?」と何度も問いながら、4℃は決して洗練されたフェノメノンではないと主張する。僕はビーズクッションに...
pale asymmetry | 2022.12.18 Sun 20:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「木を隠すなら森の中、って言うでしょう」 よく解らない例えを持ち出す彼女と一緒に、僕は閑静な住宅街を歩いている。日没時刻から三十分くらい、家々の窓には明かりが灯っている。その明かりが北風の冷たさを和らげてくれた。 「そこを曲がったところよ」 言っている途中で彼女の姿が角の向こうに消える。僕は慌てて追いかける。角を曲がると行き止まりで、そこに店はあった。カラフルな電飾の看板には、カタカナでフラワーサースデイと書かれている。その文字の隣で...
pale asymmetry | 2022.12.15 Thu 19:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「昨日の夢に怪物が出てきたんだ」 早朝にやってきた甥っ子が言う。真っ直ぐな眼差しで僕を突き刺す。眠気が一瞬で吹き飛んだ。 「怪物? 怪獣じゃなくて?」 「うん怪物。モンスター、というかファントムだね」 甥っ子は最近英語教室に通い始めていた。 「ああ、人の形をしていたんだね」 「というか、人みたいな形ね」 その違いにこだわる気持ちは、僕にも何となく解った。人の形は人を超えていないけれど、人みたいな形は人を超えていると言いたいの...
pale asymmetry | 2022.12.08 Thu 20:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 家に帰るとクリスマスツリーのようなものが飾られていた。ようなものと感じたのは、ツリーの飾り付けが全て歯車だったからだ。大小の銀色の歯車が雪の結晶のようにツリーに纏わされていた。 「お帰り」 ソファーに寝転んでいた彼女が微笑む。 「ただいま。これは?」 ツリーに近づき、僕は歯車を観察する。金属のような質感に見えたけれど触れてみると樹脂製のようだった。 「クリスマスツリーだよ、もちろん」 「これが?」 彼女が手招くので、僕はソ...
pale asymmetry | 2022.12.07 Wed 21:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 早朝から雨が降り出して、風も強まった。休日だったけれど、僕も彼女もどこかに出かけようかという気分にはなれなかった。二人とも朝早くに目覚めてしまい、窓の外の世界に少しだけがっかりして、時間と思考を空回りさせたりした。一日は長いから、僕らは取り敢えずモフモフした部屋着に着替え、リビングのソファーのまえにモフモフのラグを敷き、アウトドア用の小さなアルミテーブル出してそこにカップを二つ並べ、ホットワインを注いだ。そして身体を寄せ合って横たわる。 「...
pale asymmetry | 2022.12.05 Mon 21:53
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「少し寒いね」 彼女が僕に肩を寄せる。 「北風だからね」 僕も彼女に肩を寄せる。行き来する熱は、僕らの間で留まることなく、やがては空気に拡散していく。そして北風に煽られ、鼠色の空に入力される。空を覆い尽くす鼠色は僕らみたいに肩を寄せあっている人たちの熱で出来上がっているのかもしれない。 「傷ついている気分になりそう」 彼女が微かに笑う。 「空の色のせいで?」 彼女は頷き、そして首を振る。 「風が空を撫でているせいかな」 ...
pale asymmetry | 2022.11.30 Wed 17:56
JUGEMテーマ:ショート・ショート 小さな青い気球は、風のない灰色の空に真っ直ぐに上昇していった。小さな青い気球は小さな石版を乗せていた。その石版には文字のようなものが刻まれていたけれど、それは僕が今までに目にしたことのあるどんな言語の文字でもなかった。まあそれは当然で、その文字は僕の甥っ子が考え出したオリジナル言語の文字だった。 「あの石版には、なんて書いてあったの」 並んで空を見上げながら、僕は甥っ子に尋ねた。灰色の空はそれなりに明るく、でも目を細めるほどでもないから...
pale asymmetry | 2022.11.25 Fri 21:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「ねえ、賢者の声が聞こえない?」 公園の前で立ち止まり、彼女が囁く。僕も立ち止まり、耳を傾ける。「ホー、ホー」と微かな鳴き声が聞こえた。 「確かに、フクロウの声だ」 新月の夜、公園の周りは住宅街で、真夜中の今はか弱い街灯の光以外は分厚い闇に塗りつぶされている。芳醇な夜に支配されていた。 「私たちを呼んでいるのかも」 「あるいは、月の不在を嘆いているのかもね」 僕らは公園の闇に目を向け、見えないフクロウの動向を探る。でも、アイス...
pale asymmetry | 2022.11.22 Tue 21:04
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