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JUGEMテーマ:ショート・ショート エアーコンディショナーが騒々しく稼働する部屋で、下着姿でぐうたら過ごす。窓は閉め切って、カーテンも固く閉ざして。テレヴィジョンからはMVが流れ続けている。それは地上波ではなく、動画サイトの映像。喉が渇けば炭酸水を飲み、お腹が空けばアイスクリームを食べる。冷蔵庫にはその二つしか入っていない。まあ、その二つがあれば私は気持ちを楽園に出来る。そうやって時間を浪費する。休日の贅沢だった。 水色の人が、私の隣に腰掛けている。ソファーは広いのに、私に密...
pale asymmetry | 2022.07.24 Sun 21:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私たちはスピンが足りないと思うの」 突然彼女がそう宣言する。声は確かに宣言という感じで勢いがあったけれど、身体の方は床にだらしなく寝そべっている。 「だからどうしようというわけでもないけどね」 寝返るように転がり、彼女はゼリーに手を伸ばす。それは床に何かの目印のように置かれていた桃のゼリー。手に取るとスプーンで一口食べ、幸せそうに笑う。 「私たちをスピンさせてくれる風景は、どこかにあるかしら」 桃のゼリーを食べる手は止めずに、...
pale asymmetry | 2022.07.19 Tue 21:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート 波打ち際のすぐそこは、エメラルドグリーンの流体。そこから少し遠くはラピスラズリの獣。さらにその先はブラックホールとプラズマ。パーラーの店先のテーブルで、頬杖をつきながら僕はそんな風景をイメージしていた。実際に目の前にあるのは海。リーフの境界を挟んで閉じられた海と放たれた海。午後の日差しが二つを分け隔てなく突き刺し、風は十分に弱いのにざわついているように感じられた。海が、風景が、世界が、僕も。 「暑いかもね」 彼女が呟く。溶けそうな声で。...
pale asymmetry | 2022.07.13 Wed 22:01
JUGEMテーマ:ショート・ショート 扉の前には彼女が立っていた。かなり朽ちたグレーの扉と対照的な水色のワンピースが、強い陽光に煌めいて見えた。所々アスファルトが割れたパーキングスペースに、僕は車を滑り込ませる。あの頃、いつも止めていた場所に。あの頃はバイクだったけれど。彼女が僕を見つけて軽く手を振った。僕はじっと彼女を見つめ、笑った。自分では笑ったつもりだったけれど、たぶん情けない表情になっていただろう。車を降りて階段を上る。登り切って振り返ると、煌めく海が一望出来る。その...
pale asymmetry | 2022.07.09 Sat 21:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 私は卵だった。水中を漂う卵だった。その形は小星形十二面体だった。私の大好きな形だったから、嬉しかった。卵の私は、首長竜に弄ばれていた。その鼻先で小突かれて、水中で踊らされていたのだ。擽ったくて、気持ちよかった。首長竜は全身が瑠璃色できらきらしていた。鋭角的な形で、全身尖った鱗で覆われていた。顔には眼が三つあったから、正確には首長竜ではないのかもしれない。でも私にはそれは首長竜に思えた。 水は青くはなく、銀色に近い緑色だった。海なのか、湖な...
pale asymmetry | 2022.07.02 Sat 20:24
JUGEMテーマ:ショート・ショート 平日に休みだと、朝からアルコールが飲みたくなる。だから目覚めてすぐにワインを飲み始め、まだ正午前なのに1本空になっている。うつらうつらとフワフワした気分になり、開け放たれた窓から流れ込む熱い風が僕の眠気を加速させる。でもそれに完全に身を任せたりはしない。そういう眠りに半分だけ身を浸らせるのが気持ちいいのだ。 ゆるやかに眠ったり、浅く目覚めたり、墜ちるように羽ばたいたり、転がるように空想したり。 ふと気がつくと、僕が横たわるソファーの前...
pale asymmetry | 2022.06.29 Wed 21:46
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「良い感じじゃない?」 そう言って君がまだくらい空を指差したとき、僕はテレスコープで海王星を見つめていた。 「宇宙にいる感じがしない?」 ゆっくりと、空は青く目覚めていく。それでもまだ宇宙の光は掻き消されはしない。 「私たち、宇宙人だね」 君がはしゃいだ声を上げる。僕は頷きテレスコープを砂に投げ出して、ビーチに寝転んだ。南の高みから月、土星、木星、火星、金星、水星。テレスコープを外すと、海王星と天王星は見えない。雲は円形の風景の...
pale asymmetry | 2022.06.25 Sat 20:53
JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事帰りの街路、スマホが震えたのでポケットから取り出す。 『こんばんわ』 彼女からのメッセージ。こんばんわ? その意味を考えているうちにまた震える。 『後ろだよ』 振り向くと、目測約100mのところに彼女が立っていて、左腕をぴんと空へと伸ばしている。指先までぴんと伸ばしている。まるで選手宣誓を始めようとしているみたいだった。 『ダメだね』 彼女の左手の人差し指が、空を指差す。仄かに茜に染まった空を。僕はその空を見上げる。 『そ...
pale asymmetry | 2022.06.20 Mon 21:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「ねえ、戻ってきて」 声に呼ばれて僕は目を開けた。リビングのソファーでいつの間にか眠っていたらしい。スーツ姿の彼女が僕を覗き込んで笑っている。その指がそっと近づいてきて、僕の眉間を撫でる。 「厳しい皺が出来てたよ。良くない夢を見ていた?」 僕は上体を起こし、夢の印象を探る。彼女は隣に身体を沈め、僕に熱を注ぎ込む。少し身体が冷えていることにその熱で気づいた。 「炎だったと思う」 「燃えていたの?」 「うん、盛大に燃えていた。水面か...
pale asymmetry | 2022.06.09 Thu 21:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「何か違うわ」 僕を抱きしめて彼女が呟く。リビングの床に僕らは並んで寝転んでいる。テレヴィジョンには海外のミステリー映画が流れている。僕はそれを眺めていて、探偵はのんびりと調査している。彼女はその探偵を信用出来ないようで、さっきからしきりにダメ出しをしていた。それに飽きると、僕を抱きしめた。 「何が違うの?」 少し擽ったくてムズムズ身体を揺すりながら尋ねると、彼女はその鼻先を僕の鼻先にくっつけて囁く。 「上手く噛み合っていないわ、今...
pale asymmetry | 2022.05.23 Mon 21:18
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