[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「眠ってる?」 「うん? 半分ぐらい眠ってる」 「疲れてる?」 「うん、疲れてる、すごく」 「どうして?」 「どうしてかな…、よく解らないな…」 「夢を見れそう?」 「どうだろう、たぶん…」 「たぶん見れる? たぶん見れない?」 「うん? そうだね、たぶん…」 彼女の声は遠く離れた場所から聞こえているようだった。例えば僕はポイントネモにいて、彼女はインターナショナルスペースステーションにいるみたいな...
pale asymmetry | 2021.04.09 Fri 21:20
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「人間とロボットの違いってあるかしら?」 彼女が尖った月を見つめて呟く。未明の北風が、季節の足取りを弄んでいる。僕らは薔薇の庭園にいた。薔薇の生垣で構築された迷路庭園の真ん中にいた。細胞で言えば核の部分だ。そうであるのに相応しいインフォメーションを僕らが有しているかは怪しかったけど。少なくとも僕については。 「人間は生まれるもの、ロボットは生み出されるもの、じゃないかな。僕はそう思う」 簡素な椅子は座面と地面の距離が近く、その狭間を通...
pale asymmetry | 2021.04.07 Wed 20:25
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたの目の前にドアがあります」 朝食の途中で彼女が突然そう話し出す。平日だけど、二人とも仕事は休み。それでもリズムを崩したくなくて、僕らはいつもの時間に起床して食べている。開け放った窓から湿った風が転がり込んでいたけど、雨の匂いはしない。 「どんなドアですか?」 「普通のドアかな」 「普通じゃ解らないわ。詳細を描写せよ」 僕は目を閉じしばらく考える。目の前の扉について。でも眠ってしまいそうになって、慌てて目を開く。 「銀色の...
pale asymmetry | 2021.03.31 Wed 13:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート 箱庭の中には箱の全域を埋め尽くすような城が建っていた。佇んでいたのかも知れないし、蹲っていたのかも知れない。あるいはそれは、黄昏れていたのかも知れない。それが城であるというのも、私の勝手なイメージだ。これを作った女性はまだ言葉を発していない。箱の周りをゆっくりと回りながら、自分が作った、自分が箱を埋め尽くしたその作品の出来栄えを吟味している。何度か頷き、私を見つめ、席に座った。 「出来ました」 女性は背筋を張り詰めるように伸ばし、私を真...
pale asymmetry | 2021.03.27 Sat 21:20
JUGEMテーマ:ショート・ショート 近所に住んでいる甥っ子が、小さな箱を大事そうに抱き締めてやって来た。 「今日は学校じゃないの?」 甥っ子は来月から小学2年生のはずだ。 「春休みだよ。知らないの?」 何故か得意気に甥っ子は言う。学校に行くようになってから彼の知識は格段に増え、そのせいか僕にいろいろと教えようとする。彼は弟子を探していて、僕はその第一候補のようだ。自宅に籠って仕事をしている僕は、彼にはか弱い子羊に見えているのかもしれない。 「そうか、桜が咲いている...
pale asymmetry | 2021.03.24 Wed 21:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 夕食は茄子がたっぷり入ったミートスパだった。ミートソースも茄子も大好きだったので、幸せな気分になりながら食べる。隣の彼女に目を向けると、じっとミートスパを見つめていた。 「どうしたの?」 「今、突然思い出したことがあるの」 「どんなこと?」 「すごく昔のこと。お稲荷さんと会話した思い出」 「お稲荷さんと会話?」 「実家の庭にお稲荷さんの社があるのは知ってるよね?」 「うん。前に君から聞いたことがある。年に一回お祭りみたいなのをす...
pale asymmetry | 2021.03.17 Wed 21:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「はい、私は数を持っています」 彼が時計を指差して笑う。壁の時計のデジタル時計が、15時9分26秒を表示している。ネット配信の映画を見ながらビールを飲んでいた私たちは、思わずその缶をぶつけ合った。 「英語で言ってくれないと、文字数があわないわよ」 「確かにそうだ」 彼は頷き、缶を傾ける。 「じゃあ言い直そう。産医師異国に向かう」 「そうね、それなら良いわ。異国ってどこの国かしら?」 「さあどこだろう。何かこう、国境なき医師団が向か...
pale asymmetry | 2021.03.14 Sun 21:42
JUGEMテーマ:ショート・ショート 水に滲む色彩の奥底にあなたを探します。そこにあなたが確かに織り込まれていると感じることが出来るから。それはとても淡い色。この世のものとは思えないほどに澄んだ色。甘味を感じられて、抱きしめたくなる色。 光が溢れています。世界はハレーションで構築されているみたい。鋭い多角形が組み合わされた光なのに、とても温かい。人肌よりも少しだけ温かい。微熱のあなたのよう。微睡みから目覚めたばかりのあなたの踝の熱。 どこまでもどこまでも、私は追いかけてい...
pale asymmetry | 2021.03.11 Thu 21:47
JUGEMテーマ:ショート・ショート 我が家が近づいたとき、サンデーが激しく尻尾を振って走り出そうとしたので、これは姪っ子が来ているのだなと思った。だから角を曲がって玄関が見えたとき、その扉の前に姪っ子を見つけても驚かなかった。彼女は扉に無防備に背を預け、スマホを覗き込んでいる。この世界では、敵はそのスマホの中からしか現れず。そこにさえ警戒していれば良いのだ、というような表情をしている。君が背中をくっつけている扉から腕が生え出て君のうなじを狙うかも知れないのにな、とか思ったりしな...
pale asymmetry | 2021.03.07 Sun 21:13
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「明日海に行こう」 あなたが突然言い出す。もちろん明日は休日ではない。お互いに。でもあなたは笑っている。全て承知の上で。 「クーラーボックスに、ビールを詰めていこう」 あなたは立ち上がり、ありったけの保冷剤を冷凍庫に放り込む。冷えていないビールは、疑似科学と同じくらいにあなたは嫌いなのだ。私はそれが綺麗ならば疑似でも許してしまうけれど、あなたはそんな私に困った眼差しを向けたりする。 「日の出と共に出かけよう。そして日没まで海辺にいよ...
pale asymmetry | 2021.03.03 Wed 21:50
全1000件中 271 - 280 件表示 (28/100 ページ)