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JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事から帰って来ると、リビングのソファーで彼女が毛布に包まって横たわっていた。 「どうしたの?」 やわらかく閉じていた目を開け、彼女は長く息を吐く。たった今まで呼吸を忘れていたかのように。 「熱があるように思えて」 「計ってみる?」 彼女は微笑み首を振る。 「熱はないの。さっき計ったら平熱だったから。でも熱があるように思えるの。そういう眠気がするの」 「熱があるような眠気?」 「そう」 僕はソファーの脇に腰を下ろし、自...
pale asymmetry | 2022.04.06 Wed 21:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「この世界は昨日私が創造したの」 彼女が澄まし顔で言う。 「そしてその世界は、今日すでに僕が破壊してしまった」 僕も澄まし顔で返す。 「あなたが破壊したのは、きっと私の世界に擬態した誰かの世界だわ」 彼女はスパークリングウォーターのグラスに口を付ける。勢いよく傾け喉が鳴る。心地良い響きだ。世界の片隅でセキュリティーボックスのロックが解除された音みたいだ。 「それは擬態した世界だけど、その完成度はこの上なく精密で、だから最早クロ...
pale asymmetry | 2022.04.01 Fri 21:06
JUGEMテーマ:ショート・ショート 右耳の奥が痛い。正確には痛痒い。頭を振るとざらざらと音がする。いつからだろう? ついさっきからか、今朝からか、生まれてからずっとか。どれも当てはまるような気がするし、どれでも良いような気もする。どれであったとしても現状は変わらないし、対処の方法も変わらない。 頭を右に傾け、耳の上を掌で叩く。耳の奥で何かが揺れるのが解る。蠢いているような感じもするし、舞い踊っているような感じもする。もっと強く叩く。耳から小さな何かが飛び出て床に落ちた。膝を...
pale asymmetry | 2022.03.31 Thu 21:12
JUGEMテーマ:ショート・ショート リビングのソファーでうつらうつらとしながら休日を過ごす。読みかけていた文庫本の続きを開いたけれど、それはすぐに胸の上に被さることになった。半覚醒の心地良い時間を漂う。朝なのか昼なのか、午前なのか午後なのか、よく解らなくなりどうでも良くなる。 「ねえ、起きて」 彼女が優しく僕の肩を揺する。 「エスプレッソをいれたよ」 上手く目が開かないまま上体を起こし、胸の文庫本が床に落ちる。その音が意外に大きく響き、この部屋は今平和が満ちているの...
pale asymmetry | 2022.03.25 Fri 21:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「ねえ、戻ってきて」 指先で頬をつつかれる感触で目が覚める。いつの間にかリビングのソファーで眠っていたらしい。休日を利用して古いサイファイムービーを見てる途中で。この映画は何度見ても途中で眠ってしまう。哲学的すぎるのだ。 「ねえ、見て」 横たわったままの僕の鼻先に、彼女が差し出したのは何本かの鉛筆だった。鉛筆を見るのは久しぶりだ。鉛筆が必要な機会がなかったからだ。僕の日常は鉛筆というものから距離があるスタイルなんだろう。 「これね、...
pale asymmetry | 2022.03.17 Thu 21:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート 玄関の扉を開けると、中は真っ暗だった。そういえば、彼は今朝ビジネストリップに出かけたのだった。一週間戻っては来ない。何だろう、とても空虚な感じがする。去年一年、互いにビジネストリップがなかったから、すっと同じ夜を過ごしていた。それが当たり前になっていたせいだろうか。 足りないような気がしてしまう。 急いで掻き集めないと、手遅れになってしまうような感じ。 取り敢えず家中の電気を付ける。音楽を流す。こういうときはケルトの音楽が良い。弾...
pale asymmetry | 2022.03.15 Tue 21:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 毎日早朝と夕刻に犬と散歩している。海沿いの道を小一時間ほど。天気の良い夕刻には綺麗なサンセットを眺めながら歩いている。早朝の方は、この季節にはまだ暗い時刻なので、瞬く星座を楽しんだりしている。海沿いの道には海側に防潮堤が造られている。私の腰から胸の間くらいの高さの壁が海に沿って続いている。その向こう側には砂浜があるので、何カ所か防潮扉が設置されていて、それは普段は開放されているので、そこからコンクリートの階段を下りて砂浜にアプローチ出来るよう...
pale asymmetry | 2022.03.07 Mon 20:35
JUGEMテーマ:ショート・ショート 仕事から帰ると、彼女がリビングのソファーに横たわってテレヴィジョンを見つめていた。仄かにハーブティーの香りがした。 「今日ね、映画を見たの」 彼女は今日休みだった。 「どんな映画を見たの?」 僕はソファーの前の床に腰を下ろす。テレヴィジョンには、ミサイルに破壊される電波塔が映し出されていた。海の向こうの戦争は激化する一方だ。何かが失われようとしている。とても大切な何かが。そう感じさせる映像だった。 「それはゴーストのお話だった」...
pale asymmetry | 2022.03.02 Wed 21:03
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「面白い本を見つけたの」 仕事から帰ってきた彼女が分厚い書籍を翳す。 「帰りに何となく古書店に寄ったら、すごく惹かれる本に出会っちゃった」 その本は瑠璃色のハードカバーで、どういう表面処理をしているのかはよく解らないけれど、ところどころきらきらと玄関の照明を細かく弾いていた。 「綺麗な本だね」 「でしょう」 彼女が差し出すので、僕はその書籍を受け取る。表側にも裏側にも、タイトルの記述がない。もちろん著者名も記載されていない。 ...
pale asymmetry | 2022.02.27 Sun 20:39
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「雨が降っているわ」 彼女からの電話。電話の声を久しぶりに聞く。電話はもうメッセージだけを行き来させるデバイスになっていたから、少し新鮮で、そしてぎこちなくなる。 「冷たい雨よ」 「傘を持ってる?」 「いいえ、傘はないの」 「どこにいるの? 傘を持っていくよ」 「傘はいらないわ」 「でも冷たい雨なんでしょう?」 「でも傘はいらない。ゆっくりと降る雨だから」 「ゆっくりと降る雨?」 「そう。だから冷たいけれど、これは私を傷つ...
pale asymmetry | 2022.02.23 Wed 21:31
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