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JUGEMテーマ:ショート・ショート 水に滲む色彩の奥底にあなたを探します。そこにあなたが確かに織り込まれていると感じることが出来るから。それはとても淡い色。この世のものとは思えないほどに澄んだ色。甘味を感じられて、抱きしめたくなる色。 光が溢れています。世界はハレーションで構築されているみたい。鋭い多角形が組み合わされた光なのに、とても温かい。人肌よりも少しだけ温かい。微熱のあなたのよう。微睡みから目覚めたばかりのあなたの踝の熱。 どこまでもどこまでも、私は追いかけてい...
pale asymmetry | 2021.03.11 Thu 21:47
JUGEMテーマ:ショート・ショート 我が家が近づいたとき、サンデーが激しく尻尾を振って走り出そうとしたので、これは姪っ子が来ているのだなと思った。だから角を曲がって玄関が見えたとき、その扉の前に姪っ子を見つけても驚かなかった。彼女は扉に無防備に背を預け、スマホを覗き込んでいる。この世界では、敵はそのスマホの中からしか現れず。そこにさえ警戒していれば良いのだ、というような表情をしている。君が背中をくっつけている扉から腕が生え出て君のうなじを狙うかも知れないのにな、とか思ったりしな...
pale asymmetry | 2021.03.07 Sun 21:13
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「明日海に行こう」 あなたが突然言い出す。もちろん明日は休日ではない。お互いに。でもあなたは笑っている。全て承知の上で。 「クーラーボックスに、ビールを詰めていこう」 あなたは立ち上がり、ありったけの保冷剤を冷凍庫に放り込む。冷えていないビールは、疑似科学と同じくらいにあなたは嫌いなのだ。私はそれが綺麗ならば疑似でも許してしまうけれど、あなたはそんな私に困った眼差しを向けたりする。 「日の出と共に出かけよう。そして日没まで海辺にいよ...
pale asymmetry | 2021.03.03 Wed 21:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 君は今頃マッハで移動中だろう。でもたぶんゴージャスな機内で抹茶のアイスを食べたりしているだろう。そんなセルフィーを送ってくれても良いはずなのに、君は音沙汰なしだね。もっとも僕の方も君に何を送信することもなく、休日をノンベンダラリンと過ごしているんだけどね。冷蔵庫には昨日のうちに買っておいたプリン。僕の大好物の焦がしカラメルプリンだよ。昨日の夜に急に思い立ってコンビニに走ったんだ。夜空は満天の星、それを打ち消す満月の満開。それを見て僕は思ったん...
pale asymmetry | 2021.02.25 Thu 21:40
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「エンケラドスは水族館だったの」 「エンケラドスが水族館?」 「ええ、とても広大な水族館だった。私はそこにいたの」 「エンケラドスにある水族館に?」 「違う違う。エンケラドスという水族館に」 「エンケラドスって星だよね?」 「そう、土星の衛星」 「その衛星が水族館?」 「ええ、その水族館が衛星だったの。何故だか解らないけどそうなっていて、私はそれで納得していたの。夢ってそういうものでしょう?」 「まあ、そういうものだね。それで...
pale asymmetry | 2021.02.24 Wed 21:34
JUGEMテーマ:ショート・ショート 痛みが私を覚醒させる。冷たい床で、私は目を覚ます。硬い床に、私は横たわっている。私の部屋、私のリビング、地平に近い目線。窓からの陽光はまだ幼い。埃が舞っている。大学時代、原子物理の講義でボードを埋め尽くした数式のように埃が舞っている。世界の本性はそこにはない。世界の抜け殻ならあるかもしれないな。 痛みは私の右手の甲。そこにクロエが爪を立てている。お腹が空いているのかも知れない。それとも、私の安否を確認したかったのだろうか。たぶん帰宅して、...
pale asymmetry | 2021.02.22 Mon 21:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「森のなかを歩いているの」 「それはどこにある森?」 「私の実家のすぐ近く。子供の頃何度も遊んだ森」 「一人で歩いてるの?」 「そう。とてもカラフルな森だった」 「カラフル?」 「木の幹も、枝葉も、すごくカラフルなの。千色以上あるように思えるくらい。もちろん実際の森はそうじゃないわ。紅葉もしない木々ばかりなのに、そのときはとてもカラフルだったの」 「でも、そこはいつも遊んだ森なんだね?」 「そう、それは確か。何というか、空気の感...
pale asymmetry | 2021.02.17 Wed 21:11
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「写真集を拝見致しました。どの写真もとても綺麗で感動しました」 「ありがとうございます」 「それで、インタビューの最初にお訊きしたいのは、どうしてあのような写真集を企画されたのでしょう?」 「あのようなとは、死骸だけの写真集をという意味でしょうか?」 「はい。動物写真家の方々は、やっぱり動物の死骸にもよく出会うものなのでしょうか?」 「さあどうでしょう。人によると思います。僕はよく出会う方だと思います。だからこそ、この写真集を企画しま...
pale asymmetry | 2021.02.10 Wed 21:40
JUGEMテーマ:ショート・ショート 橋は水中にある。巨大なアーチ橋だ。アーチは鋼鉄のような見た目だけど、全く錆びてはいない。触ってみると、それは陶器のような感触だ。あるいは、骨のような感触だ。つるつるとざらざらの間くらいの感触と言えば良いだろうか。でもたぶん私の頭蓋骨よりはさらさらしているように思う。これはさわり心地のことではなく、存在の感じが。 アーチ橋の曲線の天辺に腰掛ける。そうすれば私の存在感もさらさらするかもとか思ったけれど、まあそうはならない。私はどろどろした...
pale asymmetry | 2021.02.05 Fri 21:42
JUGEMテーマ:ショート・ショート 綺麗な月だった。満月から少し痩せた月。上品な黄金色に輝いていて、見つめているとやわらかな心持ちになる。僕と彼女はベランダにテーブルと椅子を出して、月を眺めることにした。たっぷりと着込んで、ワインを片手に。 「月は寂しくないかしら」 少し頬を赤らめた彼女が呟く。 「寂しい?」 僕は彼女を見つめる。彼女は月を見つめたまま。その横顔は何か悪戯を企んでいるように見えた。 「だって、地球の衛星は月一つじゃない。土星だと、衛星は八十二個なん...
pale asymmetry | 2021.02.01 Mon 21:32
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